2014 年 9 月 14 日 のアーカイブ

飯國なつき 14年9月14日放送

140914-01
ESO
夜空を見る人①渡部潤一

南米チリ、標高5000メートルの砂漠に作られた、アルマ天文台。
高性能アンテナが並ぶその施設は、
「宇宙に一番近い天体観測施設」と言われている。

多くの天文学者が、夜空を見上げ、研究を続けている。
広大な宇宙の謎を解き明かしたい、その一心で。

アルマ天文台の設立にも関わった、国立天文台の副台長、
渡部潤一はこう語る。

 一千億の星の集まりの中心から、28,000光年という距離にある
 片田舎に、我々は住んでいるんです。

ずっと遠くの星では、誰かが夜空を見上げて、
我々と同じように想いを馳せているのかもしれない。

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飯國なつき 14年9月14日放送

140914-02
Morio
夜空を見る人②恩田陸

「夜のピクニック」という小説がある。
舞台となるのは“歩行祭”。作者の恩田陸が実際に体験した、
夜通し80キロ歩き続けるという学校行事だ。

歩き続けるうちにまわりはだんだん暗くなる。
隣を歩く友だちの顔が見えなくなるにつれて、
絡み合った人間関係が徐々に浮かび上がってくる。

 みんなで、夜歩く。たったそれだけのことなのにね。

 どうして、それだけのことが、こんなに特別なんだろう。

登場人物の一人が、ぽつりと、そう漏らす。

話せなかったことが話せるようになる。
そんな不思議な空間を、夜空は演出してくれるのだ。

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飯國なつき 14年9月14日放送

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夜空を見る人③西山浩一、椛島冨士夫

アマチュア天文家の天才コンビと言われる二人組が、佐賀県にいる。
名前は、西山浩一さんと、椛島冨士夫さん。

新星を次々に発見し、世界の注目を浴びている彼ら。
新星を見つけ出すペースがあまりに速く、
天体観測の仲間からは「夜空の暴走族」と呼ばれているほどだ。

何より驚かされるのは、76才と74才のコンビだということ。

新星を見つけ出すのはとても地道な作業。
夏は8時間、冬は12時間、毎日観測し続ける二人の目標は、
「年齢を超える数まで、新星を発見すること」だという。

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森由里佳 14年9月14日放送

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夜空を見る人④夜空に恋したゴッホ「ローヌ川の星月夜」

夜を好んで描く画家は少ない。
しかし、ひとりの男が、夜空の魅力に心をうばわれた。

オランダ人画家、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ。
火を灯したロウソクを何本も帽子にくくり付け、明け方まで絵筆を握った。

彼の作品、「ローヌ川の星月夜」は、
ガス灯のあかりや星ぼしの光が、
ローヌ川のみなもにゆらめく様子を描いた、
あざやかな夜の絵だ。

ゴッホは言う。

夜は、昼よりもずっと色彩豊かなのだよ。

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森由里佳 14年9月14日放送

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夜空を見る人⑤星を選んだゴッホ「星月夜」

夜空に魅せられた画家、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの作品、
「星月夜」。

夜空にうずをまくように描かれた大きな星ぼしと、
それを突き刺すかのようにそびえる糸杉の大樹。
ゴッホ晩年の傑作である。

とある手記の中でゴッホはこう述べている。

 夜空の星は、町や村を表す、地図の上の点のようだ。
 地図の上の点にはたどりつけるのに、
 なぜ、夜空に輝く点には、たどりつけないのだろう。
 僕らが星へと到達できるのは、死によってだけなのだ。

「星月夜」を描いた約1年後、ゴッホは自らの命を断つ。
彼は死を選んだのだろうか。
いや、星へ行くことを選んだにちがいない。

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森由里佳 14年9月14日放送

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夜空を見る人⑥星を想うゴッホ「夜のカフェテラス」

夜空に魅せられた画家、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの作品、
「夜のカフェテラス」。

黒を極力使わず、深みのある青で描かれた夜空に、
星ぼしがまるで花のように大きく咲いている。

星を大きく描いた心情を、ゴッホはこう説明する。

 いつのまにかあんなに大きな星を描いていたんだ。
 どこか遠くの星にもカフェテラスがあって、
 その灯りがここまで届いている。
 何かの理由でこのカフェに来られなくなったら、
 その星のカフェに行こうと思っていたのかもしれない。

ゴッホは今、どの星のカフェテラスにいるのだろう。

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蛭田瑞穂 14年9月14日放送

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夜空を見る人⑦ライカ犬

史上初めて宇宙を旅することになった飛行士は
ライカという名の小さな雌の犬だった。

1957年、ライカを乗せたソ連の宇宙船
スプートニク2号は地球を周回し、
生物を宇宙に送るという史上初のミッションを成功させた。

だが、スプートニク2号は片道飛行の宇宙船だった。
機体はやがて大気圏に再突入し、瞬く間に燃え尽きた。

現在、ロシアにあるライカの記念碑には
こんな言葉が刻まれている。

 ライカは知らない。その命の功績を。
 彼女は地球を出て、永遠の星となった。

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蛭田瑞穂 14年9月14日放送

140914-08

夜空を見る人⑧フリーマン・ダイソン

夜空を見上げると、そこには無数の星が存在する。
無数の星が存在しながら、ひとつとして同じ星はない。
宇宙はなぜこれほど多様なのか。
いったい誰がこの多様さをつくりだしたのか。

この世界の多様性について、
理論物理学者フリーマン・ダイソン教授はこう話す。

 多様性は生命が我々にもたらした大きな贈り物です。
 地球が美しいのも多様性のおかげであり、
 多様性を守り育てることは宇宙の大きな目標なのです。

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