小野田隆雄さんは
9月のTokyo Copywriters’ Street に詩を引用している。
それは立原道造の「夏の死」だった。
ここに全文を載せられるくらい短い。
 夏は慌しく立ち去つた
 また新しい旅に
 私らはのこりすくない日数をかぞへ
 火の山にかかる雲・霧を眺め
 うすら寒い宿の部屋にゐた それも多くは
 何気ない草花の物語や町の人たちの噂に時をすごして
 或る霧雨の日に私は停車場にその人を見送つた
 村の入口では つめたい風に細かい落葉松が落葉してゐた 
 しきりなしに
 ……部屋数のあまつた宿に 
 私ひとりが所在ないあかりの下に 
 その夜から いつも便りを書いてゐた
夏が死ぬのかと思った。
それが9月なのか、とも思った。
夏と秋の間には、夏の死があり
それは9月のどこかなんだなとぼんやり思った。
言葉を発見するのはこんなときだ。
正しくは、小野田さんが発見したのだが。
*9月12日のTokyo Copywriters’ Street は
 小野田隆雄「九月のありがとう」
 25時50分からTFMで
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