Team MOMENT

2022年09月04日

執筆者仲澤南

Photo by Yamanaka Tamaki

かき氷と文芸 永訣の朝

かき氷にふと浮かぶ宮沢賢治の詩がある。
妹・トシとの別れを別れを描いた『永訣の朝』。
その中で賢治が死にゆく妹のために取ってきたみぞれは、
史上最も哀しみを帯びたかき氷のひとつと言えるだろう。

若くして死の床に伏せるトシは、
高熱に苦しみながらも彼に頼むのだ。
雨雪、すなわち、みぞれを取ってきてほしい。

賢治は外に飛び出して、妹が口にする
最期の食べ物になるであろうみぞれを
お椀に取りながら願う。
どうか私のすべての幸いと引き換えても、
このみぞれが天上の食べ物に変わり
妹やすべての人々に
聖なる糧をもたらしてほしい。
それが、賢治とトシが永遠に別れた朝だった。

冷たい誘惑、かき氷
夏の名残りが歯にしみる。

執筆 仲澤南

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