Team MOMENT

2022年05月29日

執筆者藤本宗将

Photo by Ewan Munro

国境の話・クラリッジズホテル212号室

この世界には、国境のせいで
「飛び地」となってしまった場所がいくつかある。

なかでも変わった飛び地といえば、
ロンドンにあるクラリッジズホテルの212号室だろう。
ここはかつて、ユーゴスラビアの領地だったことがあるのだ。

それは第二次世界大戦中のこと。
戦火を避けてイギリスに亡命していた
旧ユーゴスラビアのペータル2世夫妻に、
皇太子が生まれることになった。
しかしここで問題になったのがユーゴスラビアの王位継承。
当時のユーゴスラビア王国の規定では、
国内で生まれた者にしか王位継承権は認められなかった。

そこで考えられた苦肉の策が、
皇太子が生まれる場所をユーゴスラビア領にしてしまうこと。
かくして時のイギリス首相チャーチルは、
「クラリッジズホテル212号室をユーゴスラビアへ割譲する」と宣言した。

もっとも、皇太子が生まれてしまえば
その部屋をいつまでもユーゴスラビア領にしておく理由はない。
212号室は、翌日にはイギリス領に戻されたという。

執筆 藤本宗将

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