Team MOMENT

2023年09月23日

執筆者道山智之

Photo by Atari Yamada

ことばとまち 「初めての気持ち」

朗読のための詩は、
声に出すことで、書いた詩人本人にも、言葉の意味や
登場人物の気持ちが初めてわかってくることがあるのだと言う。

2022年、日本の国内大会158名の中から優勝し
今年パリのポエトリースラム・ワールドカップに出場した
詩人・道山れいん。
彼は10月、リオのまちで、ことばをどう声に乗せるのだろう。

青い実

幼稚園の頃いちばん遊んだのは
となりにすんでいた
ともこちゃんだった

ともこちゃんは
やさしくて
頭がよくて
大好きな友達だった

裏に雑草が生えた空き地があった
ある日
葡萄をすごく小さくしたような
青い実を見つけた
つぶすとぬるぬるしていて
青い血が出たように見えた

ともこちゃんには
のぶこちゃんというおねえさんがいた
6年生で
たまにしか顔を見ることがなく
いつも部屋にいて
ピアノをひいたりしていた

ぼくたちはいたずらを思いついた
「のぶこちゃんに、けがした、って言おう!」

青い実をつぶして
指先にぬって
泣き顔をつくりながら
ぼくたちはのぶこちゃんの部屋に入っていった


「どうしたの?」
「おねえちゃん、けがした~」

ぼくはだまっててのひらをみせた
「あらー」

ぼくはドキドキした
青い血だと
信じてもらえるだろうか

バカ言うなと
追い出されないだろうか

のぶこちゃんは
「いたかったね
 ちょっと待っててね」
といって

机の引き出しから
瓶を出した

のぶこちゃんは白い塗り薬を
自分用に持っていた
「ゆびだして」

のぶこちゃんは
薬を自分のゆびさきにとった
まだ秋だったが
冬のようなにおいがした

ながいひとさしゆびの白い薬と
ぼくの中指の青い血が
ほんの2秒だけ
宇宙から見た
地球の雲と海のようにまじりあった


部屋を出て
ともこちゃんは
ぼくに笑いかけた
「作戦成功!」

ぼくは自分のゆびさきを
何度もかいだ

それからのぶこちゃんと会うことはなかった
ともこちゃんちはいつかお別れもせぬままひっこしていったから


オゾン層は薄くなり
海水温の上がった
息も絶えだえの星の上にぼくはいる

あの日たしかに中指のうえに生まれたあの星は 

人を信じ
ゆるすことから生まれたあの星は
今 どこにあるのだろう

執筆 道山智之

* 全て必須項目です

CAPTCHA


戻る