Team MOMENT

2023年09月30日

執筆者中山佐知子

ロビンソン・クルーソー 「長いタイトル」

ダニエル・デフォーの小説
「ロビンソン・クルーソー」の初版の正式タイトルと称されるものは
恐ろしく長い。

The Life and Strange Surprizing Adventures of Robinson Crusoe, of York, Mariner:Who lived Eight and Twenty Years, all alone in an un‐inhabited Island on the Coast of America, near the Mouth of the Great River of Oroonoque;Having been cast on Shore by Shipwreck, wherein all the Men perished but himself. With An Account how he was at last as strangely deliver’d by Pyrates.

自分以外の全員が犠牲になった難破で岸辺に投げ出され、
アメリカの浜辺、オルーノクという大河の河口近くの無人島で
28年もたった一人で暮らし、
最後には奇跡的に海賊船に助けられた
ヨーク出身の船乗りロビンソン・クルーソーの生涯と
不思議で驚きに満ちた冒険についての記述。

これは本当にタイトルなのだろうか??

ちなみに1719年の初版本の写真を見ると
表紙のタイトルはこうだ。
「The Life and Strange Surprising Adventures of Robinson Crusoe」
ロビンソン・クルーソーの不思議な驚くべき冒険

これでもタイトルとしては十分長い。

ロビンソン・クルーソーの物語を読むと、
難破船から持ち込んだ食べ物や武器の種類から数まで
細かく書いてある。
オランダチーズ3個、干し肉5切れ。
猟銃二丁、錆びた剣二本….

無人島で麦を蒔いたときは
蒔いた麦の量と収穫した量をきっちり記録した。
野生のヤギを飼うようになると家畜の数も記録した。
これは、ある意味で無人島の帳簿だった。
財産と損益の記録はいまの簿記にあたる。

ダニエル・デフォーは大麦や稲をどれだけ地面に蒔くと
どれだけ収穫量が得られるかまで
なぜ知っていたのだろう。

ロビンソン・クルーソーは
無人島で木の家を建て、畑で穀物を育て
山羊を飼い、カゴを編み。土器を焼いて
ロウソクまでつくっていた。

そのサバイバルの用意周到さと綿密さは
細かく長い描写ほど面白い。
長いタイトルも面白ければ大歓迎。

ダニエル・デフォーが本のタイトルを考えたとき、
本当はもっともっと長くしたかったのかもしれない。

執筆 中山佐知子

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