Team MOMENT

2023年11月04日

執筆者大友美有紀

Photo by つ

近代建築の巨匠・前川國男 「国立国会図書館新館」

国立国会図書館新館は、
前川國男の最晩年の建築のひとつだ。
正確には、前川建築事務所が設計を請け負っている。

前川は、
建物に向かうアプローチを重要視していた。
アプローチが決まれば、設計の80%は決まったようなものだ、
と語ったという。
国立国家図書館新館でも、本とどう向き合うかを考えた。
地下鉄の駅から本に出会うまでを意識している。
本館にそって整備したアプローチに桜を植え、
大きな石垣で足を止めさせ、新館へと導く。
入り口はあえて空間を狭くしている。
天井の低いエントランスを抜けると、
4層の閲覧室を見渡す、
自然光に包まれた吹き抜けホールがあらわれる。
本との出会いの高揚感が味わえる。

1986年6月3日、
国立国会図書館新館の竣工引き渡し式に
前川は出席した。
秘書に体を支えられ、館内を見て回った。
吹き抜けのホールでは、
体を逸らせひっくり返りそうになりながら、
「ウンウン」と言っていた。

この新館の地下には増え続ける蔵書を想定し、
8層の書庫が備えられている。
書庫で働く職員のために、
地下8階にまで自然光が届くように掘り下げた、
光の庭がある。
前川は、地下4階の全体を見渡せる場所で、
上部からの光に照らされる壁を見つめ、
「うーん」とうなったまま、しばらく黙ってしまった。
そして、ぽつりと「アイーダの第4幕だ」と
つぶやいた。
ヴェルディのオペラ「アイーダ」の4幕、
地下牢のシーンは舞台美術の見せどころでもある。
前川はパリのル・コルビュジエのアトリエで学んでいた時代、
クラシック音楽にも親しんでいた。

それから、3週間あまりのち、前川國男はこの世をさった。
享年81歳だった。

明治に生まれ、大震災と2度の大戦を超え、
近代建築の実現を牽引してきた前川國男。
彼がいなくなっても、
日本各地の建築で、彼の美学に触れることができる。

執筆 大友美有紀

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