収録記

ColumnA

岩崎俊一さんと亜矢さん(収録記2012.1.21−3)

この話は書いてしまうと色褪せてしまうような気がするのだが
それはたぶん私のせいだ。
血肉の部分を書くのが下手なのだろうと思う。
それでも書きたいような、書くのが惜しいような
曖昧な気持ちで書き始めている。

岩崎俊一さんと岩崎亜矢さんに原稿をお願いしたのは
師弟、家族、同僚などの縁ある組み合わせを試みてみたいと
余計なことを考えていたときだった。
父娘という関係で現役コピーライターといえば
私は岩崎俊一さんと亜矢さんしか存じ上げなかったので
さっそくにお話を持ちかけたところ、こころよく引き受けてくださった。
おふたりが家族であることを少し考えて
それらしいというか、ふさわしいテーマを決められる時期まで待って
満を持してお願いしたのだった。

そのテーマは「灯り」だった。今月分がそうだ。
おふたりの原稿を受け取ってびっくりした。
申し合わせたように主人公が同じ年頃の少年で
しかも家出がモチーフになっていた。

おふたりで相談なさったのかしら…

そのあたりのことは知ってしまうとつまらないような気がして
しばらくそっとしておいた。
やがて亜矢さんとキャスティングについてメールでやりとりするうちに
おふたりはまったく相談もしておらず
お互いに相手が何を書いたかまだ知らないということが判明した。

「灯り」という言葉に導かれるイメージを語ろうとするとき
おふたりとも「少年」が「家を出る」ストーリーになっていたのだ。
亜矢さんの少年は子供らしく外に向かおうとし
岩崎さんの少年は内に沈む。

亜矢さんのストーリーはすっきりと染め上げられた1枚の布で
岩崎さんのはさまざまな色の糸を使った織物だった。

岩崎さんの原稿を拝見したとき
子供のころに夕焼けの土手で鉄橋を渡る列車の音が聞こえたことや
世田谷の駅からあまりに遠い家に引っ越したとき
思いがけず始発電車の音が聞こえたこと、
列車のみならず本当にさまざまなことを思い出して
私も主人公の少年と一緒にしばらく沈んでしまった。

それと同時に….と書いて、いま気づいたのだが
この2本の原稿は今週末の2月11日と12日に連続でアップする予定なので
あまり書き募るといわゆるネタバレになってしまう。

ただ私は、岩崎俊一さんと亜矢さんが
灯りを描くために「少年」と「家出」のモチーフを選んだことに
血のつながりというよりは同じ家で長いこと一緒に暮らした重みを感じる。
仲の良い家族もいがみ合う家族も
餃子を食べるときに皿に醤油から入れるかお酢からかというような部分は
同じになのだろうと思うのだが
どんな家族にも同じものを食べ同じ夜を眠った蓄積があって
醤油かお酢かという些細な部分が実はとても重いのではないか、
腕に止まった蚊を追い払うのか叩くのか
人がわざわざ意識しない無邪気な行為が実はいちばん重いのではないかと
そんなことを考えながら
亜矢さんのことを少しうらやましがったりしている(なかやま)

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瀬川亮くんは次男らしい(収録記2012.1.21−2)

水下きよしさんが読んでいる最中になんとなく気配がしたので
終わるやいなやドアを開けたら瀬川亮くんがいた。
録音の最中にドアを開けるとノイズでNGになるので
待っていてくれたのだ。
この気づかいの「待機」方式を最初にはじめたのは大川泰樹くんだが
いまではほぼ全員が待機してくれるようになっている。
ドアチャイムもあるが、いまでは誰も鳴らさない。

さて、瀬川くんが読んだのは岩崎亜矢さんの原稿だ。
主人公は小学生の男の子。
実は岩崎俊一さんの原稿も同じ年頃の男の子が主人公だったので
私は父娘が申し合わせて原稿を書いてくださったのかと思っていた。
そうではないと知ったのは収録後のことだった。
申し合わせて書いてくださったと思ったときも驚いたが
そうでないことを知ったときはもっとびっくりした。
どうしてこんなことが起こるのだろう…

岩崎亜矢さんの原稿は若々しくて谷を流れる水のように
かろやかで新鮮だった。
岩崎俊一さんの原稿は熟成した酒のように重厚で情感が溢れていた。

瀬川くんは亜矢さんの原稿をとても静かに読んで
「僕は次男坊なんでこういうのわかるんですよ」と
ぼそっと言った(なかやま)

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水下さんは演出中で(収録記2012.01.21-1)

Tokyo Copywriters’ Street 2月分の収録は1月21日だった。
朝はまた雪が降っていたが
14時からですが12時過ぎに新富町の会社に着いたときは
さすがに中央区のせいか雨になっていた。

暖房をつけ、お茶とコーヒーの用意をし、パンを並べ
デパ地下の弁当を食べていたらミキサーの森田が登場。
13時15分、この寒いのにいつもより早い。
少しは部屋が暖まっていたからよかった。

さて、それからだった。
14時スタートのはずでしたが、トップバッターの水下きよしさんが来ない。
んんんん〜〜〜、どうしちゃったのかな〜〜〜
しばらくぼ〜っと待っていて、そうだ電話をしてみようと気づいた。
こういうところは我ながら実にアホだ。
電話電話…ダメだ、出ない。
14時40分、あきらめかけていたら到着。大荷物
稽古場運ぶスピーカーを肩に担ぎ、その上にカバンがふたつ。

水下さんはいま劇団ハイリンドの「春を待つ草」という芝居の稽古中なのだ。
出演ではなく演出で、チラシも何枚かいただいた。
劇場は下北沢の「劇」小劇場で、私は行ったことないけれど
行ってみようかな。
芝居の詳細はこちらでどうぞ。
http://www.hylind.net/play20120203.html

水下さんが読んだのは阿部光史さんのストーリー「トンネル」
2月5日の掲載予定だ。
収録の最中にふと気配を感じてドアを開けたら
二番バッター瀬川亮くんがいた。
読んでいる最中にドアを開けるとノイズが入るので
外で待機していてくれたのだ。
寒いのにごめんね、瀬川くん。
(またしても写真を撮り忘れてファンのかたもごめんなさい)

そして、今日パソコンのメールを見たら
水下さんから「10分遅れます」という知らせが入っていたのだった(なかやま)

下の写真はセッティングをはじめたばかりの弊社。

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福里真一くんと大川泰樹くん(収録記2011.11.23の6)

福里真一くんにはライブも含めていままで6本の原稿を書いてもらった。
最初のは「駅前のラーメン屋の息子」というもので
これは駅前のラーメン屋の息子が漁師になったりホストになったり
坊さんになったりのややこしい人生をおくる話で、
これを読んでもらうために私は沼津で鍼灸師になっていた和久田理人くんを
わざわざ呼び寄せた。

これが福里くんの変な原稿と私の最初の出会いだった。

そうこうしているうちに「五月の空」という原稿が登場した。
これには「五月らしいさわやかさを心がけてみました」という
福里くんのメッセージが添えられていたが
内容は発狂マンという渾名のついたキレやすい男の話だった。
ちっとも爽やかではなかった。私は笑い転げた。
が、この原稿は熱狂して読むとたいへんまずいことになる。
内容の面白怖さに気づかないフリをして読んでもらいたい。
そこでキャスティングしたのが大川泰樹くんだった。

大川くんのナレーションは基本繊細でキレイだ。
アルファ波のでる「1/f ゆらぎ」の存在する声だ。
しかし、やろうとするととぼけた味も出せる。
いかにもとぼけています、というとぼけかたではないのがいい。
あくまでも「1/f ゆらぎ」のおとぼけなのがいい。

今回の福里真一くんの原稿のタイトルは「人類、やる気をなくす」
私はそれを読んでまたしても笑い転げ、
笑いがおさまった後に大川くんに電話をして
「これ読んで」と言ったのだった(なかやま)

人類、やる気をなくすhttp://www.01-radio.com/tcs/archives/20473
2012年1月5日以降、上記のリンクで表示されます

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地曵豪くんのレギュラー化(収録記2011.11.23の5)

地曵豪くんはとても清潔感のある人でしかも正直だ。
若松孝二監督に怒られまくった話も平気でしてくれる。
地曵豪くんはおおむねナイスガイで落ち着いている人柄で
もっとも驚いたときの言葉が「マジっすか」だけれども
「マジッすか」のキャパの限界ラインあたりのゆらぎで
ときに異常な表情を見せるときがある。
その異常の説明に困るのだが
人の顔つきからフレンドリーな部分を取り去ったというか、
要するに朝起きて電車に乗って通勤する会社員にはない表情だ。
そんなときを垣間見ると、
ああもしかして常人ではないのかもと思うし
若松監督が地曳くんを呼ぶのもそういう部分を持つからだと
妙に納得もする。

上の話とは何の関係もないが
地曵くんは若いし武道派なのでよく食べる。
地曵くんは癖のない声で何でも読めそうな印象を与えるので
(実は苦手なものもあるようだが)
Tokyo Copywriters’ Street のレギュラーとなりつつあり
2011年最後の収録日の忘年会にも参加したのだが
一次会が終わり、二次会が下の写真状態になったとき
地曵くんはすでに順調に満腹して寝ていた(なかやま)

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小野田隆雄さんと坂東工(収録記2011.12.23の4)

坂東工くんは今更「くん」もつけたくないほど
酒の回数を重ねている。
もはや「バンド〜」と呼び捨てであり、漢字ですらない。

小野田隆雄さんは紳士であられるが
それでも「坂東さん」とはお呼びになっていないと思う。
「坂東くん」だったような気がする。
ちなみに一倉宏さんは「坂東」とお呼びになる。
一応は漢字になっている。

さて、そのバンド〜が(あくまでもバンド〜)読んだのは
小野田隆雄さんのストーリーで「銀座の柳」
銀座の街路樹の変遷の物語だった。
銀座といえば柳と思っていた私にとって
思いがけない話がいっぱい出てきて面白かった。

そういえば小野田亜さんがお書きになったとおり
銀座通りの8丁目あたりは樅の木になってしまった。
「山だと40メートルにもなる木を狭い間隔で植えて
街路樹にするのは少々無謀ではありませんか、お役人さま」と
言いたい気持ちは私も同じだ(なかやま)

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