東北に行こう

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蔦温泉

蔦温泉

       ストーリー 堀内有為子(ほりうちゆいこ)
          出演 内田慈

青森駅から十和田湖へ走るバスを奥入瀬で途中下車して
蔦温泉に立ち寄った。
次のバスは2時間後だが急ぐ旅でもない。

蔦温泉は
十和田樹海とよばれる樹齢数百年のブナ林にひっそりと佇む。

およそ千年前に開かれたという源泉かけ流しのお湯は、
無色透明でやわらかく
からだ中のコリがほぐれて、溶けだしていくように思えた。

湯から上がり、宿の前のベンチで
風にあたりながら心地よさを反芻していると、
手持無沙汰に見えたのか、
宿のご主人が自慢の散歩道を教えてくれた。

それは宿を囲む森を
いくつもの沼をめぐりながら歩く散歩道で
キラキラと木漏れ日が降りそそぎ
まるでモネの絵の中にいるようだった。

奥入瀬に来るたびに新しい散歩道が増える。
来てよかった!と感動をくれる場所は、
案外目指していた場所ではなく、
出かけた先で迷い込んだり、教えられたりした場所が多い。
奥入瀬という、地図の中の小さなスペースが、
いま私の中でグングン大きくなっていく。


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十五の夏

十五の夏

     文:伊藤健一郎
     声:地曵豪

はじめて一人で旅に出たのは、十五の夏だった。
高校一年の夏。

中学まで部活一筋だった僕は、入学早々、肩を壊した。
過度なトレーニングのせいで。

情熱のやり場がわからなくて、
時間だけが途方もなく広がっていて、
どうしようもなく怖かった。

放課後、部活に向かう仲間たちを見ると、
何もせずに帰るのが悔しくて、夜になるまで寄り道をした。

もうすぐ夏休みのある日、
本屋で時間を潰していると、一枚の写真に目がとまった。

石割桜。
盛岡に植わるその桜は、巨大な花崗岩を割って咲く。
いつかの小説の舞台が、そこにあった。

すぐに準備をしたのを覚えている。
荷物はシンプル。着替えを詰めたザックがひとつ。
18きっぷを購入した。

夏休みに入るや否や、盛岡へ。
実家のある浜松からは、鈍行で丸二日かかった。

ようやく辿り着いた場所。
真夏の桜に、花が咲いてるはずはなかった。
桜の前に腰を下ろし、持ってきた小説を開く。
浅田次郎「壬生義士伝」にはこんな文章がある。

盛岡の桜は、石ば割って咲ぐ。盛岡の辛夷は、北さ向いて咲ぐ。
んだば、おぬしらもぬくぬくと春ば来るのを待ってるではねえぞ。
春に先駆け、世にも人にも先駆けで、あっぱれな花こば咲かせてみよ。

はじめて一人で旅に出たのは、十五の夏だった。

あれから、いろんな土地を訪ねたけれど。
「旅」という言葉で思い出すのは、
青々とした葉を揺らす、あの日の石割桜だ。

東北へ行こう。


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盛岡タウン情報http://www.morioka.ne.jp/index.htm

盛岡観光情報http://www.odette.or.jp/

壬生義士伝:http://www.odette.or.jp/?page_id=1866

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三陸鉄道 歴史その2

         制作:三鉄復興支援ネットワーク
          声:地曵豪

三陸鉄道は、
昭和59年の開業以来市民の足だった。

2011年3月、あの震災のとき
道路は流され、
車を失った人が線路を歩く姿を見た。

そうだ、線路は町と町をつないでいる。
そう思ったとき
たとえわずかな区間でも列車を走らせる決心をした。
   
やがてファンからの声援が届くようになった。
いいぞ三鉄、がんばれ三鉄。
 
赤字続きの鉄道でも
復興をあきらめてはいけないと思った。 

走り出す列車の音

2014年4月、三陸鉄道は全線復旧。
応援、ありがとうございます。

三鉄復興支援ネットワーク

三陸鉄道株式会社http://www.sanrikutetsudou.com/

三陸鉄道ブログhttp://tetsulog.jp/


写真提供:三陸鉄道株式会社

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三陸鉄道 歴史その1

      
         制作:三鉄復興支援ネットワーク
          声:地曵豪

三陸鉄道の開業は1984年。
しかしその起源は、
明治にまでさかのぼることができる。

明治29年6月15日。
釜石沖で地震が発生し、巨大な津波が三陸を襲ったとき
復興対策のひとつが
三陸を縦断する鉄道の建設だったのだ。

町や村を孤立させないために。
大量の物資を運ぶために。
それが三陸鉄道の役目だった。

そして2011年3月。
三陸鉄道は壊滅的な打撃を受けながらも
列車を走らせた。

2014年4月、三陸鉄道全線復旧。
人と人、町と町をつないで
がんばれ、三鉄。
   
三鉄復興支援ネットワーク

三陸鉄道株式会社http://www.sanrikutetsudou.com/

三陸鉄道ブログhttp://tetsulog.jp/


*写真提供:三陸鉄道株式会社

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歩いて 食べて 眠って 見つめる

歩いて 食べて 眠って 見つめる

      ストーリー 小泉遥果(東北芸術工科大学)
         出演 井上加奈子

明日晴れたら、月山を登ろう。
山道を彩る木や草。すれ違う人との会話。
近くから、遠くから聞こえる鳥の声。
山頂から見える空の高さ、町の暮らし。

雨が降ったら、
露天温泉に入ろう。
冷たい雨を受け止めて、ぽかぽかの温泉に浸かるなんて、
そうめったにできない。

雪が降ったら、手打ち蕎麦を食べよう。
ふうふうしながら、温かいそばを食べる。
どのお店に行っても、一番さいしょの“お通し”では、
自慢のツケモノがきっとでてくる。

晴れでも、雨でも、雪でも、
人気のナイ夜道を鼻歌まじりで帰ろう。
どの道にも川が流れているから、さみしくなんてない。

山のカタチをなぞるようにして、
歩いて 食べて 眠って 見つめる。
大きな自然を、体中で感じよう。

山形へ、東北へ行こう。

旅*東北http://www.tohokukanko.jp/

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ふるさと

ふるさと

        ストーリー 佐藤寛人(東北芸術工科大学)
           出演 井上加奈子

ふと故郷を思い出した。
東北を出てもう何年経ったのだろう、
私は新幹線に乗って北をめざした。
窓から眺めた景色は何色だったろう。
途中で灰色だった世界が
徐々に色味を帯びて色鮮やかな世界になったとき、
「そうか、帰ってきたんだ」と思った。

東北へ行こう

東北風景写真家協会http://www.tohoku-fukei.com/

旅*東北http://www.tohokukanko.jp/

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