2023年09月23日

執筆者道山智之

Photo by Tomoyuki Michiyama

ことばとまち 「5月のパリ」

毎年5月にパリで行われる
ポエトリースラム・ワールドカップ。
20の国と地域を代表する詩人たちが集まり、
観客の中から選ばれた審査員によって採点され、
勝者が決まる。

会場は歌手エディット・ピアフのふるさと、
ベルヴィルの街。
日頃から国際色豊かな下町の通りには横断幕が張られ、
世界中から詩人が集まり、
街全体がポエトリー一色になる。

2023年09月23日

執筆者道山智之

Photo by nmatiny

ことばとまち 「パリの街角」

パリの人たちはおしゃべり好き。
四ッ角には必ずと言っていいほどカフェがあり、
舗道に出されたイスにすわって
わいわいと会話に興じる。

街の中に公衆トイレは少ないけれど、
カフェでコーヒーの一杯でも飲んで、借りればいい。

「ようこそ、パリへ。たのしんでってね」

見知らぬ店主との何気ない会話が
やさしい記憶をずっとのこしてくれる。
芸術の都は、ことばのまちでもある。

2023年09月23日

執筆者道山智之

Photo by Charlyfoxtrott4

ことばとまち 「ことばのルール」

朗読で対戦する試合「ポエトリースラム」の世界共通ルールは、
自作の詩を3分で読むこと。
それを観客から選ばれた5人の審査員が採点する。

自国の言葉で読むこともルールのひとつ。
事前に提出する英訳とともにフランス語などに訳されて、
ブロックごとにうしろのスクリーンに投影される。

言葉は、意味だけじゃない。
音とイメージで魂を揺さぶれるか。
そんな実験のためのルールかもしれない。

2023年09月23日

執筆者道山智之

Photo by Andrea Leopardi on Unsplash

ことばとまち 「リオ・デ・ジャネイロ」

2023年は、
5月のパリにつづいて、
10月にリオ・デ・ジャネイロでもポエトリースラムの世界大会が行われる。

ワールド・ポエトリースラム・チャンピオンシップ。
40カ国からそれぞれの国を代表する詩人たちが集まり、
詩の朗読をきそう。

カーニバルとボサ・ノヴァの地でひらかれる、
ことばの祭典だ。

人を信じ、ゆるしあうことが詩の原点なら、
どんなパワーが地球に生まれるだろうか。
ことばのムーヴメントに期待したい。

2023年09月23日

執筆者道山智之

Photo by U.S. Embassy Tokyo

ことばとまち 「日本へ」

詩の朗読の世界最大規模の大会、
ワールド・ポエトリースラム・チャンピオンシップ。

毎年各都市の持ち回りで行われる。

去年はベルギー、
今年はブラジル、
来年はアフリカのトーゴ。

そして2027年には、日本で初開催される予定。

スポーツの世界大会のように、
日本でもポエトリー、つまりことばの競技が
メジャーでポピュラーになる日は近いかもしれない。

2023年09月23日

執筆者道山智之

Photo by Atari Yamada

ことばとまち 「初めての気持ち」

朗読のための詩は、
声に出すことで、書いた詩人本人にも、言葉の意味や
登場人物の気持ちが初めてわかってくることがあるのだと言う。

2022年、日本の国内大会158名の中から優勝し
今年パリのポエトリースラム・ワールドカップに出場した
詩人・道山れいん。
彼は10月、リオのまちで、ことばをどう声に乗せるのだろう。

青い実

幼稚園の頃いちばん遊んだのは
となりにすんでいた
ともこちゃんだった

ともこちゃんは
やさしくて
頭がよくて
大好きな友達だった

裏に雑草が生えた空き地があった
ある日
葡萄をすごく小さくしたような
青い実を見つけた
つぶすとぬるぬるしていて
青い血が出たように見えた

ともこちゃんには
のぶこちゃんというおねえさんがいた
6年生で
たまにしか顔を見ることがなく
いつも部屋にいて
ピアノをひいたりしていた

ぼくたちはいたずらを思いついた
「のぶこちゃんに、けがした、って言おう!」

青い実をつぶして
指先にぬって
泣き顔をつくりながら
ぼくたちはのぶこちゃんの部屋に入っていった


「どうしたの?」
「おねえちゃん、けがした~」

ぼくはだまっててのひらをみせた
「あらー」

ぼくはドキドキした
青い血だと
信じてもらえるだろうか

バカ言うなと
追い出されないだろうか

のぶこちゃんは
「いたかったね
 ちょっと待っててね」
といって

机の引き出しから
瓶を出した

のぶこちゃんは白い塗り薬を
自分用に持っていた
「ゆびだして」

のぶこちゃんは
薬を自分のゆびさきにとった
まだ秋だったが
冬のようなにおいがした

ながいひとさしゆびの白い薬と
ぼくの中指の青い血が
ほんの2秒だけ
宇宙から見た
地球の雲と海のようにまじりあった


部屋を出て
ともこちゃんは
ぼくに笑いかけた
「作戦成功!」

ぼくは自分のゆびさきを
何度もかいだ

それからのぶこちゃんと会うことはなかった
ともこちゃんちはいつかお別れもせぬままひっこしていったから


オゾン層は薄くなり
海水温の上がった
息も絶えだえの星の上にぼくはいる

あの日たしかに中指のうえに生まれたあの星は 

人を信じ
ゆるすことから生まれたあの星は
今 どこにあるのだろう

2023年09月17日

執筆者小野麻利江

Photo by toshinori baba

電車のはなし 「空を走る電車」

浜松町から出発するその電車は
車体を大きく傾けて、蛇行を繰り返す。
湾岸のビルのあいだを通り抜け、
首都高速と並走し、
悠々と運河をまたぎ、
トンネルを潜り、
また地上に浮かびあがれば、
まもなく、羽田空港。

空を飛ぶ前に乗れる、
空を走る電車。

今日、9月17日は
東京モノレールが開通した日。

2023年09月17日

執筆者小野麻利江

電車のはなし 「上野に浮かぶ夢」

1964年の今日、東京モノレール開通。
だが日本初のモノレール路線は
その7年前、上野動物園で開業していた。

パンダに先駆けて生まれた
動物園の名物は、
子どもたちの胸をはずませた。

しかし車両の経年劣化により、2019年に運休。
部品の確保が難しく、来年7月、廃止となる。

現在、よりコンパクトなモノレールが
計画されているという。

上野に浮かぶ、小さな夢。
復活が、待ち遠しい。

2023年09月17日

執筆者黒松理穂

Photo by Colton Jones on Unsplash

電車のはなし 「車掌の声」

電車で聞こえてくる、車掌のアナウンス。
鼻にかかった独特な声については
いくつか説がある。

一つは、乗客のため。
普通の話し声は、走行中の騒音と音の成分が似ているので、
あえて高い声にすることで、
聞き取りやすくしたそうだ。

もう一つは、車掌自身のため。
停車駅が多い電車では、アナウンスの頻度も増える。
あの独特な発声は、
喉の負担を減らす目的もあると言われている。

毎日アナウンスする中で、
試行錯誤して生まれた声だったのだ。

しかし、近年はマイクの性能も上がったことで、
「かえって聞き取りにくい」との苦情もあるそうだ。
現在のマニュアルには
「独特な抑揚や、話し癖を出さない」と書かれているとか。

私たちが知る、車掌の声は、
懐かしい音風景に変わっていくのかもしれない。

2023年09月17日

執筆者黒松理穂

Photo by hans-johnson

電車のはなし 「トレインソング」

列車にまつわる歌を
「トレインソング」と呼ぶ。

有名な歌詞は、
「汽車を待つ君の横でぼくは」
「僕は旅立つ 東へと向かう列車で」
「トレイン トレイン 走ってゆけ」
など
たくさんの名曲が生まれている。

列車は、単なる移動手段ではない。
恋人と離れる寂しさも、
夢を追いかける喜びも、
同じ車両に乗って運ばれていく。