2023年09月03日

執筆者佐藤延夫

Photo by Tyler Strause

ベッドの日 「夜明け前に」

まだマッチが発明される前の話だ。
夜明け前に起きると、
あたりは闇の中。
手探りで火打ち石と火口(ほくち)を探し、
灯りをともすのは手間がかかる。
16世紀に発明されたのは、
ろうそくに火をつけてくれる目覚まし時計だった。
さらには、仕掛けておいた火薬が、時間になると爆発。
火口に点火する仕組みの時計もあったそうだ。

起きるのも一大事だった時代もある。

9月3日はベッドの日。
good sleep。

2023年09月03日

執筆者佐藤延夫

ベッドの日 「ガブリエル・デストレ」

ブルボン朝初代のフランス国王、
アンリ四世。
市民の生活を顧みる君主として
絶大な人気を誇っていた。
その愛人、ガブリエル・デストレは
国王の恩恵を受け、寝具にも奢侈(しゃし)を極めた。
色の違う12台のベッドは、
どれも金銀の装飾付き。
絹織の生地に小鳥や獣などの模様が刺繍され、
ベッドカバーには真珠が縫い込まれていたそうだ。

彼女の毎日は、夢よりも豪華だったに違いない。

9月3日はベッドの日。

2023年09月03日

執筆者佐藤延夫

ベッドの日 「就寝の心得」

16世紀のイギリスの医師、
アンドリュー・ボード博士。
「健康のための食事」という本の中で、
就寝の心得について記している。

何歳でも、どんな体質でも
人間は夜にこそ自然な休息と睡眠をとるべきである。
ベッドに入ったら、
少しの間、左側を下にして横になり
それから右を下にして眠ること。
ウールのキルトを布のカバーで覆い、
羽毛の敷布団の上にかけることをお勧めする。

昔も今も、人は睡眠に貪欲だ。

9月3日はベッドの日。
good sleep。

2023年09月03日

執筆者佐藤延夫

ベッドの日 「迷信」

左の太ももにモグラの皮を巻いて寝ると
こむら返りが治るとされた。
コルク栓を、シーツとマットレスの間に入れると
リウマチが良くなると信じられた。

安らかな睡眠のために
遥か昔から、人は救いを求めてきた。
たとえ迷信だったとしても。

9月3日はベッドの日。
good sleep。

2023年09月02日

執筆者大友美有紀

アンリ・ルソー 「眠れるジプシー女 1897年」

カラフルなストライプの衣装に身を包んだ女性が、
砂漠に横たわっている。
その傍らには、ライオンがいる。
「眠れるジプシー女」。
素朴派の画家、アンリ・ルソーの代表作だ。

素朴派とは、正式な美術の教育を受けずに
創作する画家たちのこと。

貧しい家庭に生まれたルソーは、
ルーブル美術館で模写の許可を得て、
絵を学んだ。

独学だからこそ、誰にも似ていない個性が生まれた。

2023年09月02日

執筆者大友美有紀

アンリ・ルソー 「入市税関 1890年頃」

素朴派の画家、アンリ・ルソーには、
「税関吏(ぜいかんり)ルソー」という渾名があった。
40代まで、入市税徴収員だったからだ。
パリ市に出入りする商人から税金をとる仕事だ。

まる1日働いて、まる1日休む、という働き方。
パリ郊外の風景を1日中眺めて仕事をしたルソーは、
休みの日に絵を描いた。

それゆえ、
ルソーは「日曜画家」とも呼ばれていた。

2023年09月02日

執筆者大友美有紀

アンリ・ルソー 「熱帯嵐のなかの虎 1891年」

パリ万国博覧会で熱帯の植物を見たルソーは、
感銘を受け、「熱帯嵐のなかの虎」を描く。
ルソーが初めて描いたジャングルの絵だ。

その作品を、アンデパンダン展に応募した。
誰でも出品ができる無監査展だ。
すると人々に笑われ、落選してしまう。
遠近法を無視した無秩序な構図、稚拙なタッチ。
当時のヨーロッパ絵画の常識ではあり得ない絵。

それでも彼は絵を描き続けた。

2023年09月02日

執筆者大友美有紀

アンリ・ルソー 「女の肖像 1895年」

ルソーは49歳で税徴収員の仕事をやめ、
創作活動に専念する。
アンデパンダン展に何度も
出品するが、全く評価されない。
路上で絵を売り、音楽を教え、
生計を立てていた。

ある時、ピカソが古物商で
「女の肖像」という絵を見つけ、
その独創性に驚かされる。
それは、ルソーが、
亡くなった女友達をモデルに
描いた絵だった。

これがきっかけとなり
ピカソは「ルソーを讃える会」を開いた。
多くの画家や詩人が出席した。
ルソーを讃える詩が朗読された。
感激したルソーは
アポリネールとマリー・ローランサンを描いた絵を進呈した。
それは本人たちとは似ても似つかない容貌の男女の絵だったが、
見た人はすぐにこのふたりだと分かったという。

その絵のタイトルは「詩人に霊感を与えるミューズ」

2023年09月02日

執筆者大友美有紀

Photo by Yelkrokoyade

アンリ・ルソー 「風景の中の自画像 1890年」

素朴派の画家、アンリ・ルソーの
「風景の中の自画像」。
中央にパレットと絵筆を手にしたルソーが
大きく描かれている。
背景には万国旗で飾られた帆船、
エッフェル塔、気球。
ルソーはパリ万国博覧会で
見物したものを描いた。

ルソーは生涯この絵を手放さず、
勲章を貰えば描き込み、
最初の妻の名の横に、
2番目の妻の名を描き込んだ。
つまり好きなものを描き足していった。

2023年09月02日

執筆者大友美有紀

アンリ・ルソー 「戦争 1894年」

素朴派の画家、
アンリ・ルソーが描いた「戦争」。
舌を出した黒い馬に、
戦いの女神ベローナである、
白い服の女の子が乗っている。
笑っているようにも見える。
足元は死体とカラスが描かれている。

ルソーはこの絵に説明を加えている。

それは到る所に恐怖と絶望を残し、
そして涙と廃墟をあとに通り過ぎていく。

ルソーは平和を愛していた。
「もし王様が戦争をしたいというのなら、
 その母親がやめさせなければならない」と
主張したという。

後にルソーはこの絵の版画バージョンも制作した。