野蕗の佃煮風

 野蕗というものを説明するために写真を拝借しました。
 上の写真をクリックするとそのサイトに飛びますから
 ぜひ行ってみてください。
 役に立つことが書いてあります。

 野蕗は山野に自生する蕗のことです。
 スーパーで売っている長い蕗とは品種が違います。
 アクが強いです。ああ春だなあと思います。

さて、春の八百屋で野蕗を見かけて買う。
その季節だけの一瞬ものなので、うれしくて買い込んでしまう。
野蕗は細くて短い。ここに罠がある。

蕗というからには皮を剥くのだ。
直径5~6ミリの細い蕗…一束に何十本あるのか…
一束にしとけばよかった。
二束ならまだしも、なぜ三束も四束も買ったのか。

しかし、ここでめげてはいられない。
買ったからにはなんとかせねばならない。
蕗を切らずに茹でることができる大きな鍋に湯を沸かし
塩を入れて蕗を茹でていく。
そんなに柔らかくしなくていい。色が変わる程度でいい。
茹でた方が皮が剥きやすいから茹でるだけだ。
さらにアクも少しは抜けるからだ。
そして、なぜ大鍋にこだわるかというと、
蕗をふたつに切ると皮を剥く本数が倍になるからだ。
三つに切ると三倍だ。ああ…

幸運にも葉つきの蕗ならば「蕗の葉の佃煮風」もできる。
葉を切り落とし、蕗を茹でたお湯で葉も茹でて水にさらしておく。
葉っぱは茎よりもアクが強いので忘れるくらい水に浸けても大丈夫。
ときどき水を取り替えてやるくらいの世話はする。

ああ、そうそう。蕗の長さを揃えたいときは葉つきの部分から切っていく。
蕗は葉っぱに近い部分がうまいのでそこを捨てないようにするのだ。
根元から揃えていくと葉っぱに近いところを捨てることになって勿体ない。
まあ、何にしろあまり捨てない方がいい。
私は1センチくらいの短いのでも一緒に煮て、途中で味見をするときに食べてしまう。
いや、その前にとにかく蕗を茹でなくちゃ。

蕗(茎の部分)はグラグラ沸いたお湯に放り込んで
緑が鮮やかになったくらいで鍋から出して水に取り
その水の中で皮を剥く。
縦にすーいすーいと剥けるのだが、なにしろ敵は数が多い。
いい加減いやになってくるが、ここは辛抱のしどころなので
我慢して剥いてしまう。
全部剥き終わってもしばらく水に浸けておく。
この「しばらく」が問題なのだが
休日のお昼ご飯をつくるついでに蕗を茹でて皮を剥いて水に浸け、
ご飯を食べて後片付けしてから、でもいいし
片付けてコーヒーを飲んでからでもいいし、
ちょっと駅前のスーパーに行って帰ってきてからでもいい。
どっちにしろ佃煮風は「しばらく」時間がかかるので
コンロの火が空いているときでないとできないのだから
あまり堅苦しく考えずに自分の都合に合わせてやった方がいい。
だいたいこういうものは
休日の昼下がりの空いた時間にコトコト煮るのに向いている、

さて、煮るときは3センチくらいに切って鍋に入れ、
昆布もハサミでちょんちょんと切って入れる。
私は台所に立つときはいつも出汁がそばにあるので出汁を使うけれど
昆布が入るので水でいいかもしれない。
出汁、または水に酒を入れて煮始める。
昆布が柔らかくなったら醤油を入れる。
山椒の実があればぜひ入れたい。
醤油はどのくらいかときかれても困る。計ったことがない。
仕上がりの辛さを想像して、それより薄くするのは言うまでもない。
最初は、いいのかこんなもんでというくらい薄く。
途中で味をみて足していけばいいと思う。
煮汁は蕗がかぶるくらい、減ったら出汁または水を足して1時間以上煮る。
煮汁が減ったら味をみていただきたい。
佃煮風だから辛くていいのだが、
煮ている最中に「よし、この辛さだ!」とOKが出てしまうと
仕上がりはたいへん辛いものになる。
辛くてもうまいけどね、山椒の利いた蕗の佃煮は。
でもまあ、ちょっと控えめにしときましょう。

さて、そろそろ煮上げてしまおうという段になったら
出汁を足すのをやめて、鍋をゆすったり箸でまぜたりしながら
濃くなっていく煮汁を全体にまぶしてやる。
鍋底に煮汁は見えないようだけれど、
箸でまぜるとしみだしてくるというあたりが仕上がり。
佃煮(キャラブキ)のように乾いた仕上がりにしない。
これが私好み。

ところで葉っぱはどうする?
蕗を茹でたお湯で葉っぱも茹でて水にさらしておいたはずだが
この葉っぱを縦横に刻む。
刻んだら蕗と同じように出汁に酒と醤油を入れて煮る。
なんだ、さっきの佃煮風と同じじゃないかって、同じだよ。
こいつは鍋底にほんの少し煮汁が見えるくらいで煮上げる。
さっきの蕗よりちょっとびしょびしょするくらい。
これはこれでうまいんですよ(なかやま)

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