一倉宏 2008年1月4日



私はおもちゃ
              

ストーリー 一倉宏
出演  皆口裕子

 
私は おもちゃです

そういったら あなたはどんな私を想像しますか
愛らしさをいっぱいにつめた ぬいぐるみ
おしゃれの大好きな 着せ替え人形
それとも… どんな私を想像しますか
 
私は おもちゃです
ぬいぐるみでも 着せ替え人形でもいい
ゼンマイで走る自動車でも
あるいは 命令通りに動くロボットでもいい
私はほんとうに おもちゃなんだから

私は おもちゃです
思い出してくれましたか あなたはいつも
近くの公園や 友だちの家にも連れていってくれたし
いっぱい ハグもキスも してくれた
私は 私のすべては あなたのものだった
寝ても覚めても あなたのものだった

私は あなたのおもちゃです
そういったら あなたはどんな顔をするのでしょう
こっちを向いてください おねがいです
あなたの友だちは 友だちだと 笑っていえる
あなたの恋人なら 恋人だと 誇らしそうにいうでしょう
でも なぜ… 私は あなたのおもちゃなのに

私は おもちゃです
おもちゃだから おもちゃでいいんです
おもちゃであることに 喜びも幸せも感じてきたのだから
私とあなたの関係は いつだって祝福されて
すれちがうおとなたちは 誰だって目を細めた
ああ 私は なんて幸せなおもちゃだったでしょう

けれど あるとき 私は気づいてしまった
おもちゃ ということばの もうひとつの意味に
それは あなたのママが
あなたとウインナソーセージとの戯れを とがめたとき
「たべものを おもちゃにするんじゃありません」と
びっくりするほど つよく 叱ったとき
私は 一瞬 ウインナソーセージにも勝ったと感じ
やがて もうひとつの別の意味に 気づいた…

私は おもちゃです
私は あなたのおもちゃ なんですよね

思い出してしまいます あのときのことを
私とあなたとの出逢いは 稲妻が走るようでした 
あなたは突然 私の前にあらわれて
あなたの瞳は うるむように輝き 私をみつめた
そして 顔も赤くなるほど ストレートなことばで 
私を 望んだ… 
私を 欲しい と
そのまま 運命のように 結ばれた私たち

それから 夢のような 数年の後
遠い旅先のホテルの部屋に 置き忘れられた 私
私は おもちゃです

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出演者情報:皆口裕子 青二プロダクション


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