勝浦雅彦のリメンバーカンヌ ⑧ それが、カンヌの答えだ!


みなさんこんにちは。
あれ、何だかお久しぶりな気がしますが、
気のせい、気のせい。
気がつけば、時は2013年6月。
そう、もうすぐあのカンヌライオンズがやってきます。
地中海よりも深く、セーヌ川よりも話せば長くなる事情がありまして、
ストップしていたこのコラムですが帳尻をあわせるように、
あと3回最後まで走り抜かせていただきます。
去年のおさらいのような気持ちで、
読んでいただければ幸いです。

今回はカンヌライオンズの華、フィルム部門のお話。
そもそも、このカンヌはフィルムの祭典であり、
スタート当初から存在するこの部門は、
コミニケーションのありかたが変わっても
いまだにメインイベントとして存在しています。
やはり、他の部門が応募作を見るのに、
いちいち会場に置いてあるPCやモバイルからアクセスしたり、
長々と「仕組みビデオ」を見なければならないものであることに比べて、
大シアターでドカッと腰をおろして見られるフィルムはやっぱり、
気楽で楽しいんでしょうね。
もちろん、つまらない長尺シリーズが、
何本もあった日には指笛(ブーイングの意)の嵐ですが。

今回、なるほどーと思ったのは、やはりGPは別格である、ということ。
カンヌを何年かに渡って見ると、
何となく「カンヌ文法」みたいなものがあることに気づきます。
その一つが「不可思議なシチュエーションを描いて、タグラインで落とす」
お作法です。
2012年で言えば、
ゴールドを穫った、CANAL+「BEAR」



なぜか映画監督をしている熊。しかも、何かペラペラしてる。
→実はかつてリビングの置物で、映画を観まくってハマってそうなった。

ブロンズの「ガンジーブックストア」



シリアスなシチュエーションに急に、日常的な邪魔が入る。
→本を読むってこういうことですよね。読み続けましょう。

あるいは、とにかくひとつのタグラインに向かって
スケール感と徹底的なつくりこみで圧倒的な作品をつくる。
ゴールドの「P&G」



The hardest job in the world,
is the best job in the world.
(世界でいちばん大変な仕事は、世界でいちばんステキな仕事です)

ゴールドの「THE GUARDIAN」



THE WHOLE PICTURE.
(全貌)
こういったものが、CM上のカンヌ文法と言われ、
あとは表現にすさまじいお金と時間を注入し、
圧倒的なスケールで、
文化の違いがあろうがなかろうが首根っこ引っ掴んで、感動させる、
というのが欧米的なカンヌフィルムの真骨頂であると思います。
文化の違い、ということでいうと、
「ノンバーバル」という要素も見逃せません。
あまり、セリフやナレーションでくどくど説明するものは、
賞の上位にいかない、というのはもはや定説です。
日本向けは1億2000万人、
しかし、グローバル対象のフィルムならば10億、20億人向けが当たり前、
自ずとかける予算・パワーが違うというのが正直なところでしょう。
で、2012年のグランプリですが、これでした。
chipotle「Back to the start」



最初にこれを授賞式で見た時は、「ポカーン」でした。
恥ずかしながら、
「あ、インタラクティブフィルムにもGPがあるんだな」
とか、勝手に解釈してしまったくらいです。
このアメリカの外食チェーンが、
自分たちが使う食材の生産方法に対して、
「最初に戻ろう」とメッセージしたCMは、直前のCLIOでもGPを獲得しており、
前評判は高かったわけですが、きわめて真面目なアプローチ、
映像にもあまり驚きはありませんでした。
ただ、このCM楽曲をダウンロードすると、
そのお金が食材を育てる施設に「投資」されるなど、
安全で美味しいものをみんなでつくっていく、
という文脈も含めて評価されたとのこと。

GPの決選投票は「真面目、ジャーナリスティック系」のchipotleと、
「エンタメ系」のCANAL+の争いだったようです。
最終的には審査委員長の、
「世の中をいい方向へ導いたのはどちらか」という判断基準で、GPは決定。
ここらへんは、毎年の審査の軸を決定する審査委員長の哲学が、
かなり影響することになります。
他の広告賞とは違う、「カンヌの答え」というものをどう出すのか。
それが明確になるのが、GP。
審査員もかなりのプレッシャーの中で、
何千ものフィルムを審査していくわけですから、
想像以上に、ハードなんだそうです。
いつかやってみたいものです。

さて、今年のカンヌは、アドフェスト2013を制した、
オーストラリアの「Dumb Ways To Die」が圧倒的な下馬評のようです。



どちらかといえば、メッセージは「良識・真面目」系ですが、
表現はエンタメ系がまぶしてあって、バイラルしやすい、
パクリムービーがつくられやすい構成になっています。
分析すればするほど、GPをとりやすいフィルムですが、
そこはへそ曲がりなカンヌ審査員。
あまりに前評判が高くなると、
「それは、カンヌの答えではない」とバッサリ、
ニューカマーに軍配をあげることも。
繰り返しますが、やはりカンヌのフィルムは楽しいですね。


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