光る塩辛

光る塩辛

       ストーリー 沢辺香(さわべかおり)
          出演 平間美貴

近所のスーパーに
めっぽう美味しいイカの塩辛がありまして、
見かけるたびに買っていました。

小さめのビンに「いかの塩辛 無添加」という
名前と材料をそっけなく記しただけのラベルが巻いてあり、
プラスチックの蓋をぽん、と開けると
口一杯までワタの肌色です。
新鮮な半透明の身が甘苦いワタにからんで
くたりとしているところをつまみ出しては、
冷酒のあてやお茶漬けにして
いつも幸せな気持ちで食べました。

東日本有数の、三陸の漁港には、
トロール漁法で揚がったスルメイカがあふれ、
太った胴体が朝日でぴかぴか光るそうです。
売り場にいつもあるわけではないのは、
「いいイカが獲れた時に百本だけ作るから」
とのことでした。

その塩辛を、あの日から見なくなりました。

ですが先日、
台所の奥からあのビンが出てきて、
以前は見過ごしていた文字が目に入ったのです。
「石巻漁港 謹製」。
そうです、あの塩辛は
石巻の心意気から生まれた塩辛でした。

石巻はいま、
地元のひとの努力で、港にも活気が戻りつつあるとききます。
私は久しぶりにぴかぴかの塩辛が食べたくなりました。

だから近く、石巻へ行ってこようと思うのです。

東北へ行こう。


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