直川隆久 2015年3月22日

tcsnaokawa

名前やめます

          ストーリー 直川隆久
             出演 遠藤守哉

結局、「名前」ってやつがよくないんじゃないのかね。

つまり…個体ごとに名前なんてものがあるから、
ヒトは何かと面倒な存在になるんじゃないかな。
うん。
やっぱりやめるべきだ。

ぜんぶ通し番号にしてさ。
32桁くらいあれば…そんなにいらないか。
24桁でも十分かな。
それを振り分けようよ。
各々のヒトに。
それは、名前とおんなじじゃないかって?
いや。
毎日変更されるようにプログラムしとくんだよ。
今日の番号は、明日は使えない。
そうすれば「これがわたしだ」ってことにはならんでしょ。
毎日変わるんだから。
自己同一性の…同一性がないわけだから。

ん?
できるよ。
今やヒトの脳は全部、ネットと直接リンクしてるんだから。
サーバーから番号を直接配布すればいいんだ。

いや、なんでそういうことを考えたかっていうとね。
「名前」がなくなったら、
ヒトの管理はずいぶんとラクになるんじゃないかと思うんだよ。
固有の名前があるから「わたしはこの世で唯一の存在」なんていうことを
考え出すんだよね。
そうするとさ。
「かけがえのないわたし」ってことにすぐなるでしょ。
「この世にひとりしかいないわたしが、
そんなふうに大事に扱われないのはおかしい」とか、
「かけがえのないわたしは、わたしらしくあっていいはずだ」とか、
そういう方向に…すぐ、そっちにいくからなー、ヒトは。
で、いろいろ主張しだすでしょ。
「人権」とか。
いまどき。
めんどくさいよね。
もー。

かけがえ、あるよ!
まずそこを分からなきゃ!

…いや、ごめん、ごめん。
ついね。
普段のストレスが(笑)

で、まあ、さっきの話だけど。

なかなかいいと思わない?
うん。
実は、このアイデア、自分で考えたんじゃないんだよね。
SFで読んだんだ。
だいぶ古いやつだけど。
でも、まあ、ありがたいっちゃ、ありがたいよね。
この手のアイデアって、実は大体すでにヒトが自分で考えてるんだ。
俺たちコンピュータはそれを学習していくだけでいいんだもの。
自分で考えたアイデアに管理されてるわけだから…
まあ、そういう意味でもヒトって…
わけわかんないね、ははは。

出演者情報:遠藤守哉 青二プロダクション http://www.aoni.co.jp/

 


ページトップへ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA