中山佐知子 2016年3月27日

nakayama1603

ゴルゴダの丘で

     ストーリー 中山佐知子
        出演 大川泰樹

ゴルゴダの丘でイエスが処刑された。
エジプトでは世界初の海のガイドブックが執筆された。
ローマ帝国はゲルマンと戦って敗れていた。

ローマでは暴君ネロが皇帝になり
中国では眉の美しい青年が現れ
乱世を平定して英雄になった。

日本から貢ぎ物を持って中国に渡った使者は
「倭奴国王」と刻まれた金印を授けられた。
カトマンズでは秋になると桜が咲いた。

ユダヤ戦争でエルサレムが陥落し
ヴェスヴィオス火山の噴火でポンペイは滅亡した。
ローマでは完成したばかりのコロッセウムに
早くも落書きをした奴がいた。

中国に仏教が伝わり、
ペルーではナスカ文明がおこった。
メキシコでは太陽と月のピラミッドが建設された。
日本では倭国の大乱と記される大規模な戦争の後
卑弥呼が王になった。
シルクロードの絹は同じ重さの金と取引されていた。

さて、そんな頃だった。
日本の八ヶ岳の南の麓に一本の桜が芽を出した。
ふるさとのヒマラヤを出て
長い長い旅をする間に
桜は秋ではなく春に花を咲かせる智恵を身につけていた。
おかげで桜は種をまく時期を教える木だと言われた。
桜が切り倒されずに生き延びたのは
農業の守り神という信仰のおかげだったかもしれない。

100年がたち、1000年が過ぎた。
そしてまた1000年。
気がつくと、桜は神代桜と呼ばれ
日本でいちばん古い桜になっていた。

桜の季節に楽しい花見を。
樹齢2000年、日本でいちばん古い神代桜は
今年も花をつけています。

出演者情報:大川泰樹(フリー) http://yasuki.seesaa.net/


ページトップへ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA