一倉宏 2017年1月1日

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 ことばとつばさ

    ストーリー 一倉宏
    出演 地曳豪・石橋けい

*
ことばは つばさに 憧れていた
わたしに足りない なにか
失われた 奪われた からだの一部のように 
取り返しのつかない 忘れもの
ことばは ときどき 空を見上げる  
それとも かなわぬ恋 なのだろうか

**
つばさは ことばに 嫉妬していた
ぼくはただ 飛ぶだけさ
それを自由と呼ぶのも ただの比喩だ
高く低く 東へ西へ 飛べない空はない
山脈(やまなみ)を越えて 海も渡ってみせよう
それだけが ぼくにできることだから

*
ことばは ときどき 自分を恥じる
一方的に しゃべった後で
突然気づく その虚しさに
道に迷った ドライバーのように
ことばは 孤独を 思い知ることになる
ことばなのに と 自分を恥じる

つばさよ
あなたはきっと ないでしょう
目的地を間違えたり
そんな自分を 恥じることなど

**
A地点とB地点には 最短距離がある
ぼくは その数学を証明する 
それは 間違いなく 
それを 間違えることはできない
それが 数学だから 
飛ぶことだから

ことばよ
なりたいですか 数学に
間違えない 正しさに

ぼくは あなたの不確かさと
曖昧さに 嫉妬するのです
むしろ

*
わたしは ことばは
どうしてこんなに 情けないのだろう
すれ違う 
届かない 
たどり着けない
そればかりか 傷つける 
遠ざかる

**
ぼくら つばさは 
傷つくこと 傷つけることは
すなわち 死 を意味するのですよ
空を飛べない つばさは
わかりますか
ぼくとあなたは 
それほどまでに違う
ぼくはあなたに あなたはぼくに
……なれない  

*
いつか 年老いた占い師は言った
昔 ひとつのものだった同士は
どうしようもなく 惹かれあう 
永遠に

昔 神様が選ばせたのだから
遠い昔 神様の前で選んだのだから
あなたは つばさを
わたしは ことばを

**
それが 本当のことだとしても
もう 思い出せない 
遙かな昔 だ

*
永遠の 生き別れ

**
他人の 空耳

*
ねえ 本当に
わたしたちは 一緒になることが
できないのですか
たとえば どこか 

無人島で

**
そんなことが
できると思うのか 本当に

捨て去れるのか 
A地点から どこへゆくとも知れぬ
止めどのない 会話を
昼下がりの表参道 にぎやかなカフェの
他愛のない おしゃべりを

恋?
それがひとつになることを意味するなら
ぼくたちが

それを願うのですか
ありうるのですか
比喩ではなく

地上のひとよ

気まぐれな 
ことばよ

出演者情報:地曵豪 http://www.gojibiki.jp/profile.html
      石橋けい 03-5827-0632 吉住モータース


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