中山佐知子 2018年12月23日「松茸が生えない」

松茸が生えない

    ストーリー 中山佐知子
       出演 遠藤守哉

えっ、赤松の林があるのに松茸が生えない?
そりゃあねえ、赤松があれば生えるってもんでもないからねえ。
松茸はむづかしいんだよ。
何かほかの相談はないの?
あ、そう。どうしても松茸を生やしたい。
わがままな人だねえ、あんたも。

まず松茸がはえる赤松の年齢というのがあってね。
ハタチからぼちぼち生えはじめてね、
30代40代がいちばんよく生えるのよ。働き盛りだね。
70歳や80歳になるともうダメ、おしまい。
ああ、なんか人間に似てるなあ。
生えない事情ってもんを大事にしてあげようよ。
ダメ?
どうしても松茸を生やしたい?

なら言うけどね、みんな勘違いしてるんだけど、
まさか肥料とかやってないよね。
松茸は養分のない貧弱な土が好きなのよ。
なぜかというとね、松茸って弱い子だからね、
養分のあるいい土だと
他のキノコがどっと生えちゃってね、
松茸は追い払われてしまうんだよね。
ははあ、うなづいてるね。
思い当たるフシがあるんだね。
あっそう、アミタケとかシメジが生えている。
よかったじゃない。おいしいじゃない。
え、ヒラタケも?酒の肴には十分でしょ。
それで一杯やって、松茸のことは忘れなさい。じゃあね。

えええええ、しつこい人だね、あんたも。
どうしても松茸を生やしたい?
めんどくさいよ、いいの?
じゃあまずね、他のキノコが生えている養分豊かな土をね、
ごそっと取ってしまう。
え、無理?無理だよね、そうだよね〜。
じゃあ、せめてね、
昔話のおじいさんみたいに柴刈りをしましょう。
桃太郎とか、こぶ取りり爺さんとか読むと
おじいさんが柴刈りに行くでしょう。
あれが大事なの。
うん、地面の落ち葉とか枯れ枝をキレイに集めて持ち帰る。
落ちた葉っぱや枝が栄養になるんだから、
それを取り除くわけだよね。
あああ、面倒だってその場で燃やしちゃいけないよ。
灰も肥料になっちゃうからね。
毎日毎日柴刈りをして、赤松林に落ち葉や枯れ枝がない状態にする。
箒で掃いたみたいに地面をキレイにしておくの。
それをまあ、5~6年も続ければね、
運が良ければ松茸が生えてくるかもしれないなあ。

どう、できる?



出演者情報:遠藤守哉(フリー)


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One Response to 中山佐知子 2018年12月23日「松茸が生えない」

  1. ナオ says:

    面白い(笑)
    守哉さんの語り口調も好きです。

    守哉さぁん、私も相談があるんです。
    なんかどんどん守哉さんのことが好きで好きでたまらなくなるんです。
    どうしたらいいですか?

    メリークリスマス!

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