直川隆久 2021年7月18日「お天気」

お天気
    
    ストーリー 直川隆久
      出演  清水理沙

わたしの夢  2年C組  大崎沙耶

わたしは将来、気象調整士の資格をとって、気象省で働きたいと思っています。
社会見学でお邪魔した気象省で、お話をうかがって、
とても感激したからです。
みんなが幸せになるように、天気を操作できるというのは、
とても素晴らしい仕事だと思います。

わたしのおとうさんは
「気象省からなら、将来は文字どおり天下りだなあ」などと
嫌なことを言うのですが、
わたしは、気象省の人たちは、そんなことはしないと思います。
「天気というのは、公共財なんです」とお話を伺った方はおっしゃっていました。
ですから、一部の人たちだけの有利になるような操作はできないのです。
ビール業界は、晴の日が多いほうが嬉しい。
傘をつくる会社は、雨が多いほうが嬉しい。
テーマパークは、晴のほうが嬉しい。
農業や林業は、雨がなければ困る。
このように、多種多様な利益のバランスをとるのが、気象調整の仕事で、
それはとてもやりがいのあることだと思うのです。

ちょうど先週、来年の天気の年間予定が発表されました。
晴の日が300日、雨の日が20日しかありません。
わたしは晴が好きなので嬉しいのですが、
おとうさんは「いまの気象大臣が、観光業界と癒着してるからだ」
などと怒っています。
わたしは、そんなふうには思いません。
気象大臣も、気象省の人も、そんな単純なことで天気を決めるとは
考えられないからです。もっと深い考えがあるはずです。
でも、わたしが気象省のお仕事でいちばんあこがれて、やってみたいなと思うのは、
虹を作る仕事です。

特に、C-ウイルス治療の最前線で戦われているみなさんを励ますために、
空に大きな虹をかける「レインボーオブホープ」は、とても感動的で、
ほんとうに憧れます。
あの仕事に関われるのは気象省の中でも一部の方だけ、
ということなので、難しいかもしれませんが、
がんばって一流の気象調整士になりたいです。

空にかかる大きな虹をみんなで見上げると、一体感がうまれて、
わたしは、こんな素敵なことができる国に生まれてよかったなあと思います。
例によっておとうさんは「政権の人気とりだ」などと言いますが、
おとうさんもきっとわかってくれると思います。
先日、公安省の方にメールを送ったので、
おとうさんを再教育施設に入れていただけそうです。
再教育はほんの1週間で済むので、「リフレッシュ」みたいなものだそうです。

おとうさんが再教育施設から帰ってきたら、いっしょに虹を見たいと思います。
わたしの将来の夢への懸け橋であるあの虹を。



出演者情報:清水理沙 アクセント所属:http://aksent.co.jp/blog/

 


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