上島史朗の『僕の見たカンヌ』⑤

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⑤ そしてまた、今年もカンヌがやってくる。

2014年、2度目のカンヌは、
参加じゃなくて参戦するカンヌだった。
だから、発表の日が近づくにつれて徐々に緊張していった。
一方で、フワフワと浮足立った気分にもなった。
もう、やれることは何もないのだけれど、落ち着かなかった。

3月のアドフェストで受賞したからだろう、
クライアントも期待してくれていた。
まだアワードも始まらないカンヌ前半に
日本から「今日はどうでしたか」と記者さんが連日電話をしてくれた。
(その対応で僕は、楽しみにしていたイノベーションライオンの
見学時間を間違えるという痛恨のミスを犯す。)

その日、結果は意外なタイミングで知らされた。
朝、会場に向かう道中、日本から電話がかかってきた。
同僚がカンヌの公式サイトをひたすらチェックしていたらしく、
WEBに情報が掲載されたと同時に僕に電話してくれたのだ。
カンヌに来ている僕よりも速い、日本のウェブチェック体制・・。

会場が見えてくる海岸沿いの道路。
横断歩道を渡りながら、日本の同僚から結果を聞く僕。

結果は、サイバー部門ファイナリスト。
しかし、そこまでだった。
その夜のセレモニーでも、ライオンには届かなかった。
日本全体で見ても厳しい結果の年だったとか、
いい訳しようと思えばできるのだろうけれど
結果は結果。その事実をそのまま受け止めた。
その晩は、鼻血が出るぐらい悔しかったけれど、
でも、それがいまの僕らのチームの現在地だ。
1回目のカンヌは、まだ戦えてさえいなかった。
2回目のカンヌは、すこしは戦えたのだろうか。

・・・・・・・・・・・・・・

こうして、僕のカンヌ2014は幕を閉じた。

初めて行った時も、今回も、カンヌで心がけたことが1つある。
それは、同僚と行ったとしても、カンヌ滞在中は
できるだけ1人で行動して、できるだけ色々な場所に首を突っ込むこと。
せっかく世界中の仲間とライバルが集まる場所なのだから、
会社として行動するよりも、個人として行動したほうがいいと僕は思う。
カンヌの空気がそうさせるのか、1人ぼっちに、カンヌはやさしい。
僕はパーティなんて全然得意じゃないけれど、
こちらから1歩踏み出せば、みんなそれは熱く話してくれる。
ビーチサッカーで対戦したブラジル人CWは、僕のカタコトな英語を
熱心に聞きながら、ブラジルの広告事情を丁寧に話してくれた。
Closing Galaでたまたま話したカナダ人はクライアント側の人だった。
彼が気になっていてまだ観ていないカナダ映画を、
僕がたまたま日本で観ていたので、結末を言わないようにお勧めしておいた。
もちろん日本人ともひたすら話した。みんな熱い。
みんな、この仕事が大好きな人たちばかりだった。

なんで広告業界にはこんなお祭りがあるのだろうと思うこともある。
自分たちで作った広告を、大金払って評価してもらうためにエントリーする。
高い旅費と参加費を払って、リッチな熱海みたいな町に集まる。
他の業界から見たら何やってるのだろうと思われる気もちょっとする。
でも、このお祭りがあるから、世界中の思考がここでシャッフルされる。
嫉妬が生まれ、アドレナリンが分泌されて、新しいエネルギーが湧いてくる。
そんなに強くない僕らの、すぐ日常に流されそうになる心に活が入る。
世界中の仲間たちも、クライアントのビジネス課題に頭を悩ませながら、
試行錯誤を続けていることに勇気をもらう。
ヤングカンヌや、AKQAのFUTURE LIONを見て、
若者たちの才能に拍手を送りながら、
いつの間にか若手ではなくなってきた自分たちも負けるもんかと思う。
実際に実施さえしていない、いわゆるスキャム広告を見つけては、
いっそ来年から「SCAM LION」って部門でも作ればいいのに!と憤る。
心から参ったと感じるアイデアに、惜しみない拍手を送りながら、
どうやって考え、どうプレゼンテーションしたのだろうと思いを巡らせる。
日頃、時間に追われる世界中の仲間が、
10日間だけ、純粋にアイデアについて考える。
アワード特有のドロドロした政治が裏では渦巻いているかもしれないことを
百も承知の上で、それでも、ここ集まった純粋な熱量の中に身を置くことは、
決して無駄じゃないと思う。

そして、今週末からはカンヌ2015。
17部門に増えたカンヌは、いったいどうなるのか。
考えただけでもクラクラしてきます。

最後になりましたが、僕の見たカンヌ2014を
1枚にまとめて、この連載を終わりにします。
今年、カンヌに行く人が、笑いながら目を通していただければ。
不定期すぎる連載に1年間お付き合いいただき、
ありがとうございました。

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上島史朗
フロンテッジ プロジェクトクリエイティブディレクター/コピーライター

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上島史朗の『僕の見たカンヌ』④

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④ iPhone 5を飲み込むカンヌの椅子。

今回のカンヌ行きが決まってから、
東京で事前に2つのセミナーに参加した。

一つは、広告批評の元編集長、河尻亨一さんが
毎年開催されているセミナー。
もう一つは、BILCOMの小川さんが開いてくれた情報共有会。

前者は、2011年に初めてカンヌに行った時にも参加させていただいたが、
とにかく事前予想の精度がすごい。
キラメキの石井義樹さんを招いての2時間。
ここで取り上げたものは、カンヌの壇上で何度も見ることになる。
それだけ、お二人がカンヌのコンテクストを掴んでいるのだろう。
カンヌを構成する3つの要素、
「セミナー」「スクリーニング」「ネットワーキング」について
丁寧に紐解いてゆく。
初めてカンヌに行く人に役立つ実践的な情報を
惜しみなく伝えてくれるのが魅力だ。
大雨の中、京橋の会議室は人でぎっしり埋まっていた。

後者は、会社のクリエイティブ秘書に誘われて参加。
小川さんは熱心かつ深い洞察で昨年のカンヌをまとめていた。
参加者は小川さんも含めて初対面の方、旧知の方、あわせて10人ほど。
こうして、会社の垣根を超えて話し合えるのが僕は好きだ。
カンヌのネットワーキングは、カンヌに行く前から始まっている。

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カンヌの会場、パレには2つの大きなホールがある。
エントランスに入って左がグランド・オーディトリウム。
右がドビュッシー。
日中は話題のセミナーが次々と開催され、
多くの参加者がこの2つを行き来する。

この2会場の椅子、セミナーが終わるとなぜかiPhoneが消える。

ポケットに入れていたはずのiPhoneが、
セミナー後、ポケットから無くなっている。
床に落としたのだろうと、椅子の下を探してみるがどこにもない。
前の人の座席の下に落ちたんだなと思って探しても、
念のため後ろの座席まで探しても、見つからない。
座面は上に跳ね上がる構造なので、座面の隙間に手を入れるが、
やはりない。
次のセミナーは5分後に始まったりするので、焦ってくる。

そんな人が、会場を見渡すと常時3〜5組ぐらいいる。
みんな、四つん這いになったり、途方にくれたりしている。
東京でやった前述のカンヌセミナーでご一緒した方も、
目の前で四つん這いになっていた。

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消えたiPhone。真相はシンプルだ。
この椅子、座面を動かす金具がコの字型をしており、
座面の隙間にiPhoneが入った場合、運が悪いと、
「コ」の字の金具にピッタリとはまってしまうのだ。
そのはまり具合が、まるでiPhone5のために設計された
ドックじゃないかと思うほどの一体感。
(iPhone5の周りの金属も、この金具との一体感に一役買っている。)
だから、座面の隙間を何度も確認した人でも、
その金具の一部にPhone5が隠れているとは思わないのだった。

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ところがこの椅子、なんと今年リニューアルしたそうです。
ピンク色だった椅子は、赤と黒のツートンカラーに。
さらにフカフカで、リクライニングもするみたいです。
(と、カンヌ公式サイトには書いてありますが、
 工事が間に合わなかったら今までどおりの椅子かもしれません。)
なので、紛失の心配はないかと思いますが、念のため。
そもそも、iPhone6の方は心配ないですけどね。

カンヌの作品じゃなくて、椅子のこと書いてるの
たぶん世界でここだけだと思うのですが、
会期中、僕らはたぶんこの椅子に40~50時間座ることになるので
このフカフカした椅子について書いてみた次第です。

気づけばもう2015年のカンヌ!汗
僕の更新が滞りすぎて恐縮ですが、
次回、早めにお届けします!

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上島史朗の『僕の見たカンヌ』 ②

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①カンヌ前夜の過ごしかた

6月14日(土)午後7時。
成田からチューリッヒを経由してカンヌへ。
前日徹夜で乗ったので、14時間のフライトはほとんど睡眠に充てた。
(あ、でも、スパイク・ジョーンズの『her』だけ観たな。
 ホアキン・フェニックス、どんどんいい役者になっていくな…。)
昼だか夜だか忘れたけれど機内食を食べ損ねた。

ニースに着くとまさかの小雨だった。
6月の降水量が東京と比べたらおよそ4分の1。
ザ・地中海性気候のど真ん中の、カラッと温暖なはずのこの地域で、雨。
ちょっと肌寒い。明日も天気が悪いという情報がどこからか聞こえてくる。

ニースからカンヌまではバスか電車。どちらも30~40分ぐらい。
今回は旅行会社が用意したバスで向かった。
ところで、海外のバスって、なんでエアコンが強烈なのだろう。
アジアだけかと思っていたけれど、フランスも寒かった。
海外旅行には欠かせないナイロン製の薄手のパーカーを羽織る。

カンヌ市街が見えてきた。
路面は濡れているけれど、雨はほとんど感じないぐらいになった。

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今回泊まるホテルは駅前のこじんまりとした★★(二つ星)のホテル。
チェックインをして、強烈な狭さの二人乗りエレベーターが来るのを待っていたら
外国人女性に話かけられた。

「あなたたち日本人?」
「うん。」
「やっぱり!そうだと思ったんだよねー!」
「きみはどこから来たの?」
「コスタリカよ!」
「おおー、コスタリカ!W杯にも出てるね。」
「そうなの!そして私はヤングカンヌにエントリーしてるの。」
「それはすごい。明日から頑張って!」
「ありがとう!!頑張るわ!!」

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明日から始まるカンヌが楽しみでたまらない彼女の
全身から発散されるポジティブなオーラに、こっちまでテンションが上がってくる。
サッカーW杯のコスタリカ代表はその後、大躍進を遂げた。
彼女はどうだったのだろう。

会社から一緒に参加したSさんが初カンヌだったので、
案内も兼ねて会場まで散歩に出かける。
午後8時。この時期のカンヌの日の入りは午後9時過ぎだから、まだまだ明るい。
会場の近くまできたところで、ひとつ先の信号に日本人審査委員のTさんを見かけた。
遠かったので声をかけられなかったけれど、グッタリとやつれて見えた。
そうか、審査はもう始まっているんだもんな。

会場のパレ(正式名称:パレ・デ・フェスティバル)はホテルから歩いて5分だった。
ものすごく巨大なこの会場は、
改修工事をやるとかやらないとか煮え切らない感じで数年経っている。
完成予想図は会場内に張り出されていて、どうやらこんな感じになるらしい。

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外観は、会場左手のガラスで覆われた部分がもっと大きくなるらしい。
バリアフリー化も進むらしい。ググったら、完成予想図の拡大図が出てきた。

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※ホントにちゃんと工事やるのー?と疑ってしまったので、日本に帰ってきてから調べたら、 
    工事が始まっているみたいで、既にガラスのエリアが取り壊されていました。
    来年カンヌに行く人は、まずは会場の外観からチェック!

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会場周辺を歩いていたら、さすがにお腹が空いてきた。
カンヌで最初に困るのは、到着した日の食事だと思う。
明日からはじまるフェスティバルに心躍りすぎて、初日のご飯のことまで意識が回らない。
(翌日からは様々な人との出会いや各種パーティがあるから、正直、ご飯には困らなくなる。)
3年前、初めて一人で行った時は、一度は駅前のレストランへ向かったけれど、
酔っぱらう外国人が溢れる店内に一人で入っていくことができず
(なんて内気な日本人だったのだろう!)
夜中に開いているコンビニもある訳がなく、結局、ビーチに沿って点在するKIOSKで、
パニーニとビールを買って、カンヌの海を眺めながら食べた。
(パニーニが大きすぎて半分しか食べられず、残りは部屋に持ち帰って食べた。)

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今回のカンヌは、海を眺めながらのパニーニではなく、
同僚のSさん、そして前回カンヌで出会い、行きの飛行機が一緒だったKさんとイタリアンへ行った。
3年前はビーチでパニーニだったのに、いま3人でイタリアン。こんなささやかなことが僕は嬉しい。
これから初めてカンヌに行かれる方で、3年前の僕のように
カンヌ到着初日の晩ご飯難民になってしまった方は、
飛行機で同じ便だった人に思いきって話かけてみることをお勧めします。
みんな、すました顔してカンヌ入りしているように見えますが、
僕も含めて内心、ドキドキしている人が多い気がするのです。
初日にご飯をご一緒できると、期間中の人のつながりも広がりますよ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

このレポート、ぜんぜん、フェスティバルが始まりませんが
次回からはしっかりレポートいたします!

最後に、3年前に初めて参加した時の様子をまとめた「僕の見たカンヌ2011」を載せておきます。
カンヌに旅立つ二人の同僚の役に立てばと描いたものです。
このコラムが終わる頃までには「僕の見たカンヌ2014」が出来上がる予定。
あくまでも予定です!汗

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武田義史のカンヌの誘惑-⑥

半日でもコートダジュールを満喫できるお城巡りのご案内

久しぶりにカンヌのWebサイトを覗いてみたら、
アワードへのエントリーが締め切られ、セミナーの詳細も発表されていました。

目立ったところでは、恒例となったセレブリティゲストですが、
今年はサラ・ジェシカ・パーカーが6/16に登壇するようです。
個人的には6/18に開催される、あのボルボのジャン・クロード・ヴァンダムの
股割りCMを制作したエージェンシー、
Forsman & Bodenforsの『THE EPIC LECTURE』に興味があります。
1か月後に迫った今年のカンヌ、今から楽しみですね。

早くも今年の受賞予想をされている方もいらっしゃいます。
http://www.pinterest.com/mrcreativerebel/cannes-lions-2014-prediction/

今回のコラムですが、
今まではカンヌライオンズを有意義に過ごすためのTIPSを紹介しましたが、
とある方から「せっかく南仏に行ったのに観光しないんですか?」
という鋭い?質問があったのでお答えしようと思います。

カンヌをものにしようと会場に籠ってしまうと、
展示鑑賞やスクリーニング、セミナーの予定が矢継ぎ早に入ってきて、
観光に時間を割くことが難しいのですが、
会期半ばくらいにはさすがに集中力が持たなくなります。
そんな時に、一日をかけて人気の観光地であるモナコ、鷹の巣村のエズ、
マティスのロザリオ礼拝堂があるヴァンスなどに行かなくとも、
”半日”でコートダジュールを満喫できる場所がありますので、ご紹介いたします。

海を満喫したい方へは、アンティーブ(Antibes)

カンヌ駅から各駅停車に乗り、4つ目の駅、約10分で到着するのがアンティーブ。
昨年の勝浦さんのコラムでも紹介されていたピカソのアトリエがあった
グリマルディ城(現ピカソ美術館)がある街です。
駅から南西へ徒歩15分くらいで海岸沿いの旧市街に到着できます。
おすすめはやはりピカソ美術館で、ここのテラスから眼下に広がる海は、正に”紺碧”。
お城の北に広がる白砂の砂浜から豪華なヨットが停泊する港を散策すれば、
ちょっとしたモナコ気分を味わうことができて、心地良いです。

旧市街に目を向けるとプロバンス市場という、いかにも地元っぽいマルシェ、
迷路のような小道沿いに並ぶお土産物屋、
街の中心となる広場にはオープンテラスがあるレストランが立ち並んでいます。
小さな街なので、散策してランチを食べても
カンヌには午後早めに戻ることができるでしょう。

エズに行かなくても鷹の巣村を満喫できる、カーニュ・シュル・メー
(Cagnes-sur-Mer)

コートダジュール名物、
山頂に点在する城郭に囲まれた中世の街”鷹の巣村”といえば、エズ村が有名ですが、
タクシーをチャーターする以外でエズに辿り着くには、ニースまで国鉄で行き、
さらに駅から遠いバスターミナルから1時間に1本しかない路線バスで30分という
一日がかりの観光となってしまいます。
そこでお勧めなのがアンティーブからニース方面へ約5分、3つ目の駅、
カーニュ・シュル・メール。
ここには南仏のモンマルトルといわれる鷹の巣村オー・ド・カーニュという
グリマルディ城を中心とした中世の村が存在します。
殺風景な駅前から大通りを北東方面に歩くと急坂に出合うので、
その坂を20分程上るとお城直下の頂上広場に辿り着きます。
広場には3軒のレストランがあるのでランチができます。

お城の中は地中海近現代美術館に改装されて一般公開されているのですが、
お勧めポイントは階段を上りつめた先にある最上階の展望台。
眼下に広がる旧市街の先に広がる地中海は間近で
眺める海とは異なる表情で空と海の境界が融けるほどのターコイズブルー。
また、美術館の展示の方は近くにルノアール終焉の家があることから、
ルノアールの晩年の作品やアトリエが再現されていました。
エズと比べると観光地化されていない分、
静かで日本人観光客もほとんどいないので個人的にはこちらの方が好みですね。

灯台下暗し?カンヌの穴場的展望スポット“カンヌ城”

カンヌ城とは通称で、正式にはノートル・ダム・ド・レスペランス教会と
ラ・カストル博物館。中世の修道士から作った城塞で、
カンヌライオンズ会場から西方面、
カンヌ旧港から旧市街シュケの丘の坂道をそれとなく登っていくと
5分くらいで到着する、カンヌ市街や地中海を一望できる展望スポットです。
会場から目立つ場所にあるので、誰もが目にするはずですが、
実際に登って行った人は少なく、観光客も欧米人が多かったです。

会期中、集中力がなくなった時やエアコンで身体が冷えた時には、
幾度となくここを訪れて遠くの青い海を見ることで鋭気を養い会場に戻ったものです。朝、昼、夕方と異なる表情をみせてくれるところがいいですね。
ラ・カストル博物館の開館時間内であれば、塔に登ることができて、
そこからは地中海を間近に感じられる360°ビューを満喫できるでしょう。
なお、朝夕の人通りが少ないときは、怪しい雰囲気が漂っているので、
強盗にはくれぐれも気をつけてください。

その他としては、私は行ったことがないのですが、
カンヌから電車で35分くらい内陸に入ったところにある香水の都グラースで、
香水博物館やフラゴナールの工場を見学するのも南仏らしいのではないでしょうか。
詳しくはこちらからどうぞ。http://www.mycotedazurtours.com/?p=1540

私自身が初めてカンヌに行ったときに、ネットやガイドブックを見ながら、
“観光する時間くらいあるでしょ”と高をくくっていたのですが、
いざ現地に行ってフェスティバルのスケジュールに沿って日々を過ごしてしまうと
周りの空気に飲み込まれて、
観光に一日を割くというのは結構大きな決断を要しました。
カンヌを吸収しようと意気込んで自費でやってきた場合なら、
”もったいない“と思われるかもしれません。
しかし、せっかくのコートダジュール、
半日ではあれば、目玉セミナーが開催される昼過ぎまでには戻れるので、
ランチを口実に少し足を延ばすことをおススメします。

尚、電車を利用する際は、お国柄ストが多いので
事前にネットや駅で確認するなど気をつけください!


カンヌ公式サイトhttp://www.canneslions.com/home/
日本語の案内サイト:http://www.canneslionsjapan.com/about/

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武田義史のカンヌの誘惑-⑤

Shortlistはアイデアの宝庫!朝イチ観賞のすすめ

2014年第一弾のコラムは、会場でしか観ることのできないShortlistの魅力と、
その中から実際に企画する際の参考となる“お気入り”を見つけ出すための
エキシビション観賞のTIPSをご紹介したいと思います。

念のため、Shortlsitを説明しますと、
金銀銅グランプリを決定する一歩手前の最終候補リストであり、
その数は全エントリーのおおよそ10%くらいです。
選ばれると認定証がもらえたり、
エージェンシー・オブ・ザイヤーのポイントが加点されることから
「入賞」扱いされることがあります。

エキシビションとはグラフィック系とキャンペーン系の
Shortlistのプレゼンボードの展示や
デジタル系のエントリーをPCで観賞する場です。
その数、プレゼンボードだけでも推定2,300枚!
時間とお金を費やしてカンヌを訪れる理由の一つは、
この膨大な数のアイデアにどっぷり浸かれるところだと思っています。

確かに年々、情報の充実度が半端なく増していくカンヌ公式Webサイトですが、
ボードやビデオを視聴できるのはブロンズ以上です。
その裏で惜しくもメダルには届かなかったShortlistでも、
実務上では大変勉強になるものが膨大に存在しています。
制約の多い日本では、むしろ実現性という意味では
Shortlistの方が実務の参考になるかもしれません。
まずは、実際に会場で見つけたキャンペーン系のShortlistの中から
いくつかご紹介したいと思います。

Coca Cola 「The Gift Bottle」

コカ・コーラのPETボトルの帯ラベルを引っ張ると、
ラッピングリボンに変形し、
クリスマスギフトとしての体裁に早変わりという極めてシンプルでありながら、
まさに“Open Happiness”を体現した仕掛けです。
グアテマラのキャンペーンとして始まったものがその評判から、
その後、中南米、南米に広がり、ヨーロッパまで拡大したという、
グローバルな拡販に繋がった素晴らしいアイデア。

なのに、カンヌではPromo, Direct, Branded Content でのShortlist止まり。
精算する前にいきなりラベルを引っ張ったビデオが
やらせっぽく見えてしまったのか?
または、他のコカ・コーラのエントリー、
例えば、“Small World Machine”といったものと比べると
スケールが小さくみえてしまったのか?
メダリストにおいて、商品の実売に直接繋がったエントリーは意外に数少ないので、これはブロンズ以上を獲って欲しいと思っていました。

Norte「WIDE THUMB」

アルゼンチンのビールNorteが、飲み口の広い新ボトルのローンチとして、
ボトルを振って“ビールかけ”するときに綺麗な噴射を可能にする
『大きな親指サック』をベタ付けしたというもの。

実際にビールかけに使うかどうかは別にして、
店頭でのインパクトや“なぜ?”“試してみたい”といった認知/理解/行動を促す
素晴らしいアイデアですね。

Clouds 9「Frozen in the clouds」

オーストラリアの新フローズンヨーグルトブランド「Cloud9」が、
若者に向けたローンチとして
凍る前の状態のヨーグルトを気球で気温の低い高所まで飛ばして、
凍るかどうか?をライブ中継したという実験プロモーション。
無事に凍って地上に帰還した商品をブロガーに食べてもらい、
2次的なバズも広げたみたいです。
日本でも以前、SAMSUNG・GALAXYが宇宙にスマホを飛ばして、
ライブ中継しましたが、その事例に似てしまったのが
メダルに届かなかった理由でしょうか。
ヨーグルトを空で凍らせることでフローズンであること伝えるバカバカしさを
上手く商品へ興味のモチベーションとして変換しているアイデアはいいですね。

Shortlistはメダリストになったものと比べると、
全般的に商品の広告やプロモーションとしての側面が強いものが多く、
評価のプラスアルファとなる、社会的な意義、カンヌの歴史上の意義、
スケール感の面が弱いのかもしれません。
しかし、日頃のクライアントから求められる
課題解決“商品の購買につなげるアイデア”という意味では、
眼ウロコなアイデアの宝庫と言えるのではないでしょうか。

では、そのShortlistエキシビションを効率的に観賞するために
私が実践した方法を紹介します。

①MEDIA LIONやPROMO & ACTIVATION LIONからチェックする。
理由としては、カンヌのキャンペーン系部門はエントリー重複が多いので、
まずはリアルもデジタルも、マスメディアもアンビエントメディアも
何でもアリの異種格闘技戦の様相をみせ、
かつエントリー数が多い上記2部門のどちらかをチェックしてから、
他部門をチェックするとダブリを省けることとなり、
各段にスピードアップします。

②カンヌアプリを有効活用する。
一昨年から展示ボードの脇にQRコードのラベルがあります。

これはカンヌ公式アプリの機能“GOODY BAG”というもので、
アプリのQRコードスキャナーを起動させて読み取ると、
カンヌWebサイトの“MY CANNES”の中で、
ボードの画像をダウンロードできるというサービスです。
これを使って、お気に入りの作品はもちろん、
難解な作品はキープして後日ゆっくりと解読できるという意味で
大変便利なサービスです。
利用するにあたっては
・アプリ内の“My Settings”からMY CANNESのIDと紐づけしないと保存されない
・ボード画像をダウンロードできるのがカンヌ最終日から1週間後
・今日現在(2/3)、カンヌアプリの中にこの機能が搭載されていない
という点に注意してください。

③Youtube、Vimeoを活用する
カンヌのShortlistに残るくらいの作品は
動画共有サイトにプレゼンビデオをアップしているのがほとんどです。
会場にはWifiが飛んでいるので、スマホやタブレットを使って動画を探して、
その場で視聴すると理解の助けとなります。
最近は、画像の左下のようにボードにQRコードを印刷し、
動画視聴を促すものもあります。

④観賞時間は朝イチが狙い目
カンヌウィークは皆さん夜遅くまで交流するためなのか、
朝イチのエキシビション会場は人もまばらです。
私は混雑してくると想定している順序通りに観賞できないため、
毎朝9時を目安に会場に出向いていました。
また、前述のカンヌ公式アプリのGOODY BAG機能や動画サイトを使うためには
Wifiが必要なのですが、
会場で飛んでいるカンヌ公式Wifiは午前中の方が繋がりやすいです。
デジタル系の場合もキオスクPCの台数が限定されているので、
空いている確率が高いです。
余談ですが、朝イチはカンヌ公式サイトクルーの取材を受けたり、
ヤングカンヌに出場のオーストラリアコンビからは
“作品にエキストラとして出てくれ”と演技させられたりと面白い出会いもあります。

⑤解説ツアーに参加する
会場にいると集団で観賞している解説ツアーらしきグループに
遭遇することがあります。

指南役の人がiPadを片手にこれぞというボードの前で動画をみせつつ、
解説するというものです。
たまたまなのですが、某グローバルエージェンシーのとあるグループの傍らで
聴いていたら、「どうぞ」と誘われて、参加させていただきました。
内容は単なる解説だけでなく、
“何がアイデアで、どう評価されたのか”というところまで踏み込んで
話をされていたのが印象的でした。

以上、キャンペーン系のShortlistやエキシビション観賞の話が中心となりましたが、
グラフィック系も同様です。

ショーアップされたセミナーに比べるとエキシビション会場は静かなのですが、
自分のお気に入りを発見するワクワク感、
“これはやられた”というアイデアと出会った時の悔しさ、
清々しさ、想定外の国際交流?など、
感情が高ぶる時間を過ごせることができるのではないでしょうか。

皆さんも世界から選りすぐられたアイデアに囲まれた熱い空気の中で、
テンション高くなる出会いを味わい、
アイデア発想のスキルアップをしてください!

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武田義史のカンヌの誘惑-④

第4話 あなたはエキシビション派?スクリーニング派?セミナー派?
実務につなげるカンヌの過ごし方

2013年も年の瀬となり、残りわずかとなりました。
早いことにカンヌから半年が経ち、
日々の生活の中でカンヌのことを考える時間は減りつつありますが、
その時に出会った数多くの刺激的な作品の記憶は色褪せることなく、
思い出すたびに感動が胸に込み上げてきます。

そのような一生の糧となる作品や体験と出会い、
その経験を実践に活かすことを前提に会場での過ごし方について
お話したいと思います。

カンヌのフェスティバルプログラムを大別すると
「エキシビション」「スクリーンニング」「セミナー」
「ワークショップ」の4つに分けることができます。
そのうち「ワークショップ」は
最近のカンヌ運営が力を入れている“熱い”プログラムなのですが、
何せ英語の壁があるため、私は参加したことがないことから、
「エキシビション」「スクリーニング」「セミナー」に
フォーカスします。

「エキシビション」とは、
主にグラフィック系(Print, Print craft, Outdoor, Design)や
キャンペーン系(Promo, Direct, Media, PR)の
Shortlist以上のエントリーボードが
地下ホールに一堂に展示されることを指します。加えて、
複数台のPCが設置されたINTERACTIVE KIOSKコーナーでは
CyberやMobileといったデジタル系部門のエントリーを
チェックすることができます。

言葉にするとボリュームが伝わりにくいので、
カンヌサイトから今年のエントリー数のデータをお借りして
説明します。
Shortlistに選ばれる数は大凡、エントリー数の10%前後くらいで
あることから計算するとPromoで約300枚のボード、
Cyberなら約250のWebサイトや動画を観賞することになります。
しかも全て英語です。全てを網羅するとなると、
相当なエネルギーを消費することが想像できますよね。

「スクリーニング」とは、映像系(Film, Film Craft)及び
新ジャンル系(Titanium & Integrated, Branded content & Entertainment)のCMやエントリービデオの上映です。
会場の上層階に点在する“AUDI”と呼ばれる小シアターや
大シアター“DEBUSSY”で観賞することができます。
カンヌ運営が発行したプログラムのスキャン画像を
ご覧いただくと分かると思いますが、
全てのエントリー作品を観ることが可能ですが、
その数はFilmだけでも3,125本!
全部を朝の8時半から夜の8時まで観るとなると、
座っているだけで腰が痛くなりそうな数字ですね。
「そこまでは…」という方、安心してください、
フェスティバル後半の木、金曜日にはShortlistのみを上映しますので
こちらをおススメします。

上記2つはいわゆる“アワード”の範疇に入るものですが、
近年、カンヌ運営が最も力を入れているのが「セミナー」です。
セミナーとは、世界の名立たるエージェンシー、グローバル広告主、
最近目立つところではGoogle, facebook, Twitterといった
プラットフォーマー、MicrosoftやAdobeといったITサプライヤーが
主催するプレゼンテーションやトークセッションです。
今年は7日間合計で60コマが開催されました。
会場は主にパレ・デ・フェスティバルを代表する2つのシアター「GRAN AUDITORIUM」「DEBUSSY」。
人気のセミナーは開始時間の1時間前から行列ができるほどです。
こちらから2013年のハイライトが見ることができます↓
http://www.canneslions.com/attend/the_festival/programme_highlights/

ここからがポイントです。
これだけのプログラム満載のカンヌの全部を観ようとすると
身体がいくつあっても足りないことから、
「エキシビション」「スクリーニング」「セミナー」の
どれを軸足に据えるのか?が結構大切になってきます。
3つの全てを総花的に観て回って、カンヌ全体の雰囲気を味わい、
刺激を受けてモチベーションを高めることも有益ですが、
現業の企画やアイデアに活かすことを望むのであれば、
1つ軸を決めて徹底的に深堀りすることをおススメします。

「エキシビション」「スクリーニング」といったアワードに関して、
GP金銀銅、いわゆるメダリスト作品は
当然賞賛されるべき素晴らしい挑戦の痕跡であり、
今後の指針となるのは間違いないので、
それらを押さえるのは必須です。
しかし、自分の日常業務と照らし合わせると、フィルムなら
”表現が過激でクライアントや社会が受け入れてくれない”、
キャンペーン系であれば
”クライアントは商品の売りにつながる企画を求めているのに、
ゴールが売りではない”という作品が多く見受けられます。

そこで、一段下がってメダリストの数倍以上あるShortlistを見渡すと、
企画の”突き抜け度”はややメダリストには劣るものの、
自分の現業と同じような課題をもち、
見事なアイデアで結果を残した素晴らしい作品に
多く出会うことができます。
また、数多くの作品を観ることで、
万国共通の普遍的な”気持ちの動かすツボ””行動を促すツボ”が
いくつも見えてきます。Shortlistはまさに宝の山ですね。

では私の場合はどうだったのか?
時間配分で表すと、エキシビション6:スクリーニング2:セミナー2。
私の現業がデジタルキャンペーンや
プロモーションが中心ということもあり、
カンヌに渡航する前から「エキシビション」「スクリーニング」の
観賞に最も多くの時間を割くことを予定していたので
・会期中、毎日午前にPromo,Direct,Media,PR,Outodoorの
 全てのプレ ゼンボード=Shortlistと、MobileのShortlist全てを
 KIYOSK端末でチェック。
・木曜日、金曜日の終日、Titanium & Integrated,とBranded content &
 EntertainmentのShortlistを集中してスクリーニングし、 
 Filmは帰国後Webで確認するということで現地では断念。
・「セミナー」は1日2コマを目安にトークセッションではなく、
 スライドを使ったプレゼンテーションが中心のセミナーを選択し、
 残りはセミナーを中心に参加している英語堪能な友人から
 ヒアリング。

以上の作戦で、
自分が最も重視したいキャンペーン事例収集活動に注力しながらも、
セミナーから得られる業界の動向、潮流、予兆も掴むことも
友人の協力を得て概ねカバーすることができました。
(もちろん、私の得た事例情報もギブアンドテイクで仲間に共有しています。)

キャンペーン業務に従事している方や
ニュートラルなアイデアで課題解決を目指す方は
私と同じ道筋を辿っていただくのも良いですし、
CMを極めたい方は全エントリー作品を4,5日間、
試写室に終日籠って観るのも良いですし、
これからの広告ビジネスの新たな戦略やアイデアを練りたい方は
セミナー漬けになるのも良いでしょう。

現地に参加するからこそ可能な“大局から俯瞰すること”と”
トコトン深堀して本質を追究すること”のバランスを上手く図って、
カンヌを皆さんの血肉としていただければと思います。

次回は皆さんにぜひ紹介したいShortlist作品と
エキシビション観賞のコツをお話します!

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