武田義史のカンヌの誘惑-⑦

2014カンヌ、勝手に受賞予想

2013年のカンヌレポートと言いつつも、既に2014年5月下旬。
今年のカンヌが間近に迫った中、
第3回目のコラムで
“カンヌに渡航する前に予習をした方が何かと便利”と申し上げた手前、
紹介した方法で今年のカンヌで受賞しそうなエントリーを
いくつかピックアップしてみました。

本来であれば、
カテゴリー毎にめぼしいものをいくつか紹介する方が
実際のカンヌの進行に沿っていて理解しやすいと思われますが、
私自身、明るいがインタラクティブ、プロモ、ダイレクトであること、
近年のカンヌアワードはカテゴリー間の重複が甚だしいことから、
以下の3つの焦点でまとめたいと思います。

ユーティリティー:生活者にとって便利機能となり
かつ企業にとってはブランド体験となる、
いわゆる“使える広告”なのですが、
その範囲は個人に何か便益をもたらすツールだけでなく、
世の中の課題を解決する仕組みも含む。

コンテンツ:フォーマットとしては、映像、グラフィック、
音楽、ゲーム、リアルイベント、Webサイト、
デジタルインスタレーション、
最近では”Snackable”といわれるSNSの投稿画像にいたるまで、
広告と変わらないですが、
広告であることを忘れさせてしまうエモーショナル体験を生活者にもたらし、
それらを消費する行為そのものが楽しめる制作物。

コミュニティ:リアルやオンライン問わず、
コミュニティを新たに創造する活動はもちろん、
既に興味・関心・嗜好などで繋がっているオープンな集合体(いわゆるトライブ)に
働きかけるニュースを提供することも含む。

なぜ、この区分けなのか?
ご存知のとおり、カンヌの冠からAdvertisingが外れて、
Creativityが加わりました。Creativityって何?と考えたときに、
生活者と企業や団体の関係構築に新たな創造性を発揮するものかなと。
そこで、去年のサイバー、プロモーション、ダイレクトの
ショートリスト以上の全エントリーを生活者の立場から眺めたところ、
「ユーティリティー」「コンテンツ」「コミュニティ」のいずれか、
もしくはその組み合わせに当てはまることに気づき、
人に説明する際に用いると分かりやすいと評判を得たので、
これらで整理した次第です。

ユーティリティー
ブランド:Milka タイトル:Last Square

Milkaというフランスの板チョコのプロモーション。
板チョコの一片(=Square)が欠けた商品を販売し、
その一片を親しい人に
自分の気持ちを伝えるために届けてくれるという仕組み。
“お裾分けすることは親しい関係を築くきっかけとなる”という
インサイトを捉えて、
上手く商品特性と掛け合わせて試したくなるユーティリティーしたのは見事です。

ブランド:UTEC タイトル:Air purifying billboard

UTECは昨年のカンヌで“空気中の水蒸気を濾過して、
水にするビルボード”で受賞したペルー工科大学。今年もやってくれました。
今度は、空気中の大気汚染物質をフィルタリングして、
キレイな空気に浄化してくれるビルボードです。
水を濾過するビルボードも、
社会課題を解決するということでは価値あることですが、
今年の空気清浄ビルボードは
大気汚染に悩む世界中の国からのニーズが高いのではないでしょうか。
個人的には、エアコンメーカーがこれをやったら面白いと思いました。

ブランド:Burberry タイトル:Kisses

これはあのGoogle Art &Code Projectとバーバリーのコラボで、
ちょうど昨年のカンヌの会場で発表されたものです。
唇を画像キャプチャーすることで
自分のキスマークでメールの封筒に封緘できる、オリジナルMailer。
文字だけの無味乾燥なメールに
このようなエモーショナルな機能を付加することで感情を伝え、
しかもバーバリーの口紅のプロモーションにもなっているという
機能的かつ素敵な体験をもたらすツールですよね。

コンテンツ
ブランド:Volvo Truck  タイトル:The Epic Split

もうこれは言わずもがな、ONE SHOWでBest of Show、
D&ADでもBlack Pencilを獲得し、
個人的にも近年観たCMの中で最も好きな
ジャン・クロード・ヴァンダムの“股割り”動画。
映像としての素晴らしさはもちろんのこと、
いわゆるタレント広告は賞を獲りにくいという常識を覆し、
タレント文脈と商品文脈を見事に融合したクリエイティビティ、
グローバルB to B広告として、メディアではなく、
制作に費用をかけてバイラルさせるという戦略に脱帽です。
これは、今年のカンヌで注目されるもう一つのエントリー、
セナの“Sound of HONDA”でも言えることなのですが、
ネット時代、タレントの文脈が世界中で共有しやすくなった現れなのかなと思います。
今年のカンヌはヴァンダム祭り、セナ祭りの予感です。

ブランド:British Airways タイトル:Magic of Fly

これも広告クリエイティブ系のサイトをチェックしている方なら
ご存知だと思いますが、
飛行機の運行時間のデータを活用し、
空を飛んでいる飛行機と屋外サイネージの映像をシンクロさせて、
一つの表現に仕立てた試み。このようなデータ×サイネージや、
有名なスウェーデンの“地下鉄ホームの
突風で髪の毛がなびくサイネージ”にみられる、
センサー×サイネージといった、テクノロジーを活用して、
リアルタイムクリエイティブを具現化したエントリーが今年は旬だと思われます。

ブランド:Coca Cola タイトル:Happy Beep

スーパーのレジで店員さんが
バーコードを読み取ると鳴るピッという音(Beep)が
コカコーラのCMでおなじみのサウンドロゴになるというもの。
一見するとシンプルな小ネタですが、
ハッピーな気分をもたらすことがコカコーラらしさを表し、
かつ口コミで聞いたら実際にお店に行って確かめたいという
気持ちを駆り立てるのではないでしょうか。
エージェンシーは、あのOgilvy Brazilです。

コミュニティ
ブランド:Toyota Prius タイトル:Try my Hybrid

既にプリウスを所有しているオーナーの方々に呼びかけて、
所有しているプリウスを試乗車として提供してもらい、
オーナー自身が検討客にプリウスの素晴らしさをプロモートしてもらう仕組み。
まだ普及途上の商品の場合、
オーナーはこだわりを持ったアーリーアダプターであることから、
①オーナー間のコミュニティが形成され、
情報伝播されやすい②希少品は他人に自慢したい、
というインサイトが想像できるのではないかと思います。
それらインサイトを巧みに突いて、
オーナーをブランド普及のアンバサダーにしたアイデアが素晴らしいですね。
スウェーデンという国土面積の割に販売網が薄いという
チャネル課題をも解決しているのも見事です。

ブランド:HORNBACH タイトル:The Hornbach Hammer

HORNBACHというドイツのDIYストアが仕掛けた顧客拡大と
WEBストアのトラフィック増を狙ったプロモーション。
ロシアの戦車を買い取り、
その戦車を溶かしてリサイクルした鉄で作ったハンマーを
WEBストア限定で販売したというもの。
ターゲットは、DIYファンはもちろんのこと、
濃いミリタリーマニア、第2次世界大戦の敵国の戦車ということでは
愛国者までも含まれるのではないでしょうか。
特定のコミュニティにその中で“確実に共感されるニュース”を投下し、
共感からバイラルを誘発し、
自社商品とのエンゲージメントする顧客を広げるという、
まさにソーシャルメディア時代のお手本のキャンペーンですね。

ブランド:ABTO タイトル:Bentley Burial

ブラジルの臓器移植支援団体が仕掛けたPR。
エキセントリックで有名なブラジルの億万長者が、
ある日「エジプトの歴代のファラオが宝物を埋葬するように、
自分も4000万円する高級外車ベントレーを自宅の庭に埋葬する」
という記事を自分のFacebookに投稿。
国中のメディアが報道し、“なんて馬鹿げたこと”という世論が形成。
“埋葬”の当日、メディア集めて埋葬しようとした時に、
突如、記者会見を行い
「自分のことをなんて馬鹿げたことをするのだろうと思っているだろうが、
 みなさんは自分以上に馬鹿げたことをしている。
 このベントレー以上に価値ある臓器をなんのためらいもなく、
 埋葬している。このことは世界で最ももったいないことだ」
と宣言し、臓器提供PRだったことを告白した。
どの国にもゴシップ好きの“トライブ”というのは、
マスボリュームで存在するもので、臓器提供をゴシップ文脈に変換し、
ニュースとして世の中ごと化を狙ったという戦略が見えます。
“臓器提供しないのは、もったいない”というパーセプションチェンジを行うために、
巧みなストーリーテリングで
国中のメディアを巻き込んだ壮大なドッキリ仕掛け、
鮮やかな課題解決ですね。

以上のケースは、前哨戦となるアワードの受賞状況、
海外の広告系サイトの評判、Youtube上のケースビデオの再生回数を元に、
私自身が「これは面白い。評価されるべき」と思ったものをセレクトしました。
全てのケースで共通するのは「ターゲット設定」「インサイト発見」
「ストーリー構築」「表現」「仕掛け」といった企画制作を構成する要素に、
従来の発想を超えた“クリエイティビティ”があり、
課題解決の原動力になっているというところです。
なので、ここでの“面白い”とはそれら要素に、
理性としての“なるほど”と感性としての“Wow”があり、
加えて、カンヌ60年の歴史を語る上で業界の進化を前進させたもの、
と言い表せるのではないでしょうか。

今年のカンヌに参加する人はもちろん、
現地に行かない人であっても、
“もし自分が審査員であったら”という視点で事前に様々なケースを見て評価し、
会期に“答え合わせ”することは、
世界の人に普遍的に受け入れられるクリエイティビティを養う
トレーニングとなります。

年に1度のこの機会に皆さんもゲーム感覚で
トライしてはいかがでしょうか?

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