北上線に乗って

北上線に乗って

              中山佐知子

東北の夏は一面の緑です。
その緑のなかに一本の線路が通り
ポツンポツンと小さな駅があります。

山がそこまで迫っている駅、
少しひらけた田んぼのなかの駅、
丈の高い草に埋もれそうになっている駅
高校生が乗ってくる駅、森のなかの駅
駅の向いに小さな宿のある駅
山の駅の向かいに小さな農家があって
ホームからその家に行くには踏切を越えるのですが
どうやらその家だけのために踏切があるんじゃないかな、と
思った駅もありました。
東北の在来線はひとつひとつの駅が個性的です。

列車は2両編成のワンマン列車です。
運転席近くの席に座り
ドアが開くたびに写真を撮っていたら
シャッターの音がするまで
運転手さんがドアを閉めるのを待ってくれることに気づきました。

横手から終点の北上までおよそ60分
東京では10分乗るときでも本を開いてしまうのに
東北の列車では
本はとうとうカバンから出すこともありませんでした。

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