星座をつくろう

「星座をつくろう」

     ストーリー 中里智史(さとし)
        出演 清水理沙

夜になると、私は星空を見に行く。

私の暮らす岩手県洋野(ひろの)町は、
本格的な天文台がある。
日本一の星空に選ばれたことをきっかけに
つくられた天文台だ。
「ひろのまきば天文台」という名前のとおり
牧場の高台にあって、まわりには牛がいる。
当然だが、まわりにはネオンがない。空気も澄んでいる。
星がよく見える。
美しい星空は、この町の数少ない自慢のひとつなのだ。

だけど私が星空を見に行くのは、
手を伸ばせば届くくらいに輝く星たちを
ただ眺めに行くわけではない。
私だけの星座をつくるためだ。

その昔インカの人々は、夜空に見える星が多すぎるため
ひとつ、ひとつ星を結んで星座をつくるのではなく、
星のない隙間の形を様々な動物に見立てて
星座をつくっていたらしい。

私もインカの人々にならい、星空の暗闇を見つけていく。
雲の形を何かに例えるように、
輝く星たちの隙間を私は何に例えよう。
さあ、今日はどんな星座が生まれるだろう。

東北へ行こう。


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村は消えても

「村は消えても」
 
           ストーリー 矢谷暁
              出演 遠藤守哉

その日、村長は一夜にして市長になった。

岩手県 岩手郡 滝沢村。
盛岡市の北西にへばりつくように隣接し、
新幹線の停まる盛岡駅からわずか5キロの村だった。
2014年1月1日。
それまで「人口日本一の村」だったこの村は
地図上からその名を消す。
滝沢村から、滝沢市に昇格したためだ。

「ご注意ください。道路標識の変更は1万か所を超えています」
「お間違えなく。郵便番号は5種類から139種類に増えました」
しかし、そんな呼びかけも馬耳東風、
馬の耳に念仏とばかり聞き流す市民もいる。
いや、正しくは市民ではない。馬だ。

代々、馬と人々がともに生活してきた滝沢。
なにもかもが変わったが、変わらず続く行事もある。
「チャグチャグ馬コ(うまっこ)」という祭りだ。

毎年6月の第2土曜日、蒼前(そうぜん)神社から盛岡八幡宮まで、
100頭を超える馬が、13キロの道のりを4時間かけて行進する。
馬たちは色とりどりの装束とたくさんの鈴で飾り付けられ、
歩くたびにその鈴が「チャグ、チャグ、チャグ」と音を立てる。

今年のチャグチャグ馬コは、6月14日。
練り歩く道路では、標識がいたる所で変更されている。
人々にとっては大きな変化だったが、
馬たちの目にはちょっと新しい景色に映るぐらいで、
いつものようにのんびり道を行くことだろう。

晴れれば祭り見物には半袖が気持ちいい。
村から市へその名を変えても
人と馬が変わらず寄り添い続けるこの地に、
もうすぐ夏がやってくる。

東北へ行こう。

 

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盛岡タウン情報http://www.morioka.ne.jp/index.htm

盛岡観光情報http://www.odette.or.jp/

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