小さなハル

「ちいさなハル・盛岡」

      ストーリー 山中貴裕
         出演 岡田優

国の訛りが恥ずかしくて、
バイト先ではあまり話をしない。
もっとも、小さな中華レストランの
皿洗いの仕事だから、
口を開く機会はそもそも少ない。
ラストオーダーが11時で、
店が閉まるのが11時半。
そこから掃除と後始末を済ませて、
タイムカードを押して外へ出ると、
もう0時を過ぎている。
薄いダウンジャケットのポケットに
両手をつっこんで、
真っ暗な商店街を早足で歩いて帰る。
冬だと、息が白く凍る。

そんな時、いつも思い出すのは、
ふるさと盛岡の厳しい寒さと
飼い犬だったハルのことだ。
明治橋の下に捨てられていた
ハルを連れて帰った俺に、父はひとこと
「弟ができたな」と笑った。
くんくんと腕の中でさびしそうに鳴く、
ぬくぬくとあたたかく、やわらかい小さな命は、
その日から、俺のたった一人の兄弟になった。
薄茶色の背中に鼻をすりよせると、
ひだまりの匂いがした。

19の冬、夢を持ってふるさとを出た。
夢が俺を、ひとりぼっちにした。
アパートの鍵をあける時、いつも、
部屋の中にハルがいるような気がする。

・・・もうすぐ春。花も咲く。
東北へ、帰ろう。

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