なにもない、秋田

「なにもない、秋田」

         文 阿部千里(東北芸術工科大学)
         声 大川泰樹

東北には何もない。
秋田県という土地にはなにもない。

高いビルもなければ、うるさい音もない。
満員の電車はほとんどなく、
二両編成の短いディーゼル車が一時間に一本、
だだっ広い田んぼや畑、
古い農家や流れる雲を車窓に映しながらゆっくり走っている。

自転車にのれば、
風に吹かれてぐしゃぐしゃになった髪の毛に
草のにおいが移る。
日照時間が少ない県だと言われるくせに、夏はかんかんに暑く、
逃げ水がそこここに現れる。

冬にはたくさんの雪が降り、辺り一面真っ白だ。
なにもかも雪で覆われると
何もない秋田がさらにまっさらになる。

秋田のことを聞かれると
「何もないところだよ。」と答えることにしている。
まわりの人には「そんなに謙遜するな」と言われるが、
そうではない。そうではないのだ。

ここには何もない。
高いビルも混み合う道路も満員電車もない。
うるさい音がない。せかせか歩く人もいない。
ここへ来る人は、そういうものをぜんぶ
どこかに置いてくるのだ。

だからここには何もない。

忙しさのすべてを捨てて
東北へ行こう

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夏のバラ



夏のバラ

         ストーリー 今野絵里菜(東北芸術工科大学)
            出演 長野里美

じりじりと太陽が照りつける夏。
秋田県には色とりどりのビーチパラソルが出没します。
そこは砂浜ではなく、車がたくさん通る国道です。
そのパラソルを見つけると車は速度をゆるめ、
近くにゆっくり停車します。

パラソルのなかには、
ほっかむりに長袖シャツの、
農家のようなかっこうをしたおばあさんがひとり座っています。
ほっかむりの落とす影から顔をうかがうと、
そこには秋田美人の面影があります。

おばあさんはゆっくり立ち上がり、
前に置いてあるドラム缶のふたをおもむろに開けます。
頬をなでる冷気に気を取られているあいだに、
あなたはふと目の前にバラの花が咲いているのに気づくでしょう。

それは甘くて冷たいバラの花。
秋田の人たちなら一度は食べたことのある、ババヘラアイスです。
金属のヘラを使い、おばあさんはコーンの上に
器用に黄色とピンクのシャーベット状のアイスをのせていきます。
それをバラの形にするのには、熟練した技術が必要なのです。

いつどこで会えるかわからない、夏限定のバラの花です。

● 秋田ファンドットコムhttp://www.akitafan.com/

● ババヘラアイス進藤冷菓http://www2.babahera.net/

● ババヘラアイス児玉冷菓http://www.kodama.in.arena.ne.jp/

● ババヘラアイス杉重冷菓http://www.namahage.ne.jp/~parasolice/


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