「田舎すぎて」(東北へ行こう2017)

「田舎すぎて」

      ストーリー 新井田瞳子(東北芸術工科大学)
         出演 清水理沙

うちの地元は田舎だ。
家の前には山、後ろには川がある。
桃太郎の世界となんら変わらない。

そんな田舎に大雪が降った。
近年稀に見る記録的な大雪だった。

こりゃ大変だ、なんて思っていたら雪崩で電線が切れた。
限界集落は、数日間電気がつかなかった。

こりゃ本当に大変だ、と困っていたら
大きなカメラを持った人たちが取材にきた。

「今の世の中はなにもかにも電気ですから。」
こんな言葉で、祖父は全国デビューを果たした。

ある日、地元が映画のロケ地に選ばれた。
田舎が舞台の映画だった。

こんなこともあるんだねぇ、なんて話してたら
祖父が村の住人役で映画デビューを果たした。

「じいちゃん、ちゃん映ってたぞ。」
そう言う祖父の顔は、三船敏郎だった。

このままいけば世界デビューも夢じゃない、と孫は思った。

ここは田舎。「ど」がつくほどのど田舎。
田舎すぎて変なエピソードがいっぱいできた。

なんかちょっと笑える話。間抜けな話。
ここでしか作れない話。

大好きな田舎の話。

東北へいこう。


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「東北が笑う」(東北へ行こう2017)

「東北が笑う」

     ストーリー 高橋莉子(東北芸術工科大学)
        出演 大川泰樹

山が笑う。
隣のばあちゃんも笑う。
つくしの間から顔を出した猫も、帰ってきたツバメも笑っている。

もう、6年生。
ランドセルを揺らして、あの子も走りだしました。

春です。
東北の春です。
寒くて厳しい冬を越えて、東北に、あたたかい春がやってきます。

雪を乗せていた北風はやがて静かに眠りにつき、
優しい風が東北中の笑い声を連れて、
降り積もった雪たちを溶かしてゆきます。
喜びに満ちた花びらを落としながら、新幹線は北へ、北へと進みます。

東北に春一番は吹きません。だから、あなたが春を連れてきてください。

東北があなたを呼んでいます。
そろそろ出発の時間です。

東北へ行こう。


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初転勤先は東北(東北へ行こう2017)

初転勤先は東北

   ストーリー 大坪悠高(東北芸術工科大学)
      出演 遠藤守哉

報道局に配属されて初めての転勤が東北だったよ。
新米の時は毎日のようにカメラを持って取材先へ。
そこで学んだ経験といえば、TVに対して人がとる行動は同じ、
ということかな。
撮影している自分らを遠巻きに眺める。
インタビューしようとすれば手早く断る。
ひどい時だとの報道の文句を言い始める。
もちろん東北も例外じゃなかったが、今思えばちょっと違うところがあった。

とある祭りを取材した時の話だ。
祭りの名物を撮影してたんだが、いきなり「兄ちゃん!」と声をかけられた。
驚いてそっちを見たら、オバちゃんがお椀と箸を僕に渡すんだ。
最初は取材中だからと言って断ったんだけど
「っけ!っけ!」って押しつけてくるかた、しょうがなく頂いた。
もうびっくりしたよ。
だって今までの取材じゃそんな経験は一度もなかったからね。
他にもお土産をもらったりした取材もあった。

こういうのをなんて言えばいいのかな…。
よく言えばフレンドリー、悪く言えば馴れ馴れしい?
とにかくコレが僕が東北に来ての率直な感想だね。
今でも結構そうなんじゃないかな?
居心地いいよ、うん。

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「おかえりが待っている東北」(東北へ行こう2017)

「おかえりが待っている東北」

     ストーリー 宇野美優(東北芸術工科大学)
        出演 大川泰樹

ぶらりと乗り込んだ電車のドアは
ボタンを押さないと開かなかった
こりゃ驚いた

ホームに降りると改札口がなかった
ただただどこまでも銀世界が広がっていた

悲しいくらいキレイだった

雪を踏みしめて歩くと、キリキリ音がする
雪ってこんな音がするんだ
夢中になってキリキリする

ぽつりぽつりと人とすれ違う、
そのたびに「おかえり」と声をかけられる
ここではみんなが家族のようだ
僕は「こんばんは」と返事をした

民宿についてすぐ銭湯に行った
真っ黒に日焼けしたじっちゃんに
「おめどっがらきだ?」ときかれた
「東京です」って答えると
「物好きだなあ」とケラケラ笑いながら
お気に入りの場所を教えてくれた

民宿につくとまた「おかえり」と言われて
ほかほかのご飯が出た
「何もないけど」と言いながら
食べきれないほどのお菜を並べてくれた

なんだかこの町は
無条件でずっと居てもいいよって言われているみたいで
なんだかとてもくすぐったくて幸せだ

東北へ行こう


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田舎者の勝ち(東北へ行こう2017)

「田舎者の勝ち」

     ストーリー 庄司結衣(東北芸術工科大学)
        出演 藤谷みき

最近、都会の子と喋った。
その子は、石に石で絵が描けること、
帽子がないどんぐりがハゲ頭みたいなことを、知らなかった。
小さい頃見ていたアニメや漫画、雑誌、
遊んできたゲームやスポーツはほとんど一緒なのに、
たった一つ、『外での遊びかた』だけが違った。
その子が知らないことを私は知っていた。

道端に生えている草の名前や遊びかた、
秘密基地の作りかた、
田んぼの脇の、透き通った冷い水も、都会の子は知らない。

田舎は何もない。でも自慢できることはたくさんある。
都会のお店は田舎にも立てられるけど、田舎の遊びは都会ではできない。
都会にいたら、知ることもできない。本には載っていないから。

田舎の勝ちだね。

このまま田舎に負けるくらいなら、まず田舎を知ってみませんか。

東北へ行こう


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「ポン」(東北へ行こう2017)

「ポン」
      ストーリー 日野裕介(東北芸術工科大学)
         出演 地曵豪

午後は吹雪の日だった。
僕は午前中に山にいった祖父の安否を気にしていた。
夕方近くになって祖父は、雪まみれで帰ってきた。
傍らには見た事の無い犬を連れていた。拾ってきた、と言っていた。
祖父は笑って言った、こいつはポンだ、飼うからな。
祖母は、またいい加減な事を言い出したよ、というような顔で見ていた。
父も母も、呆れはしても、止めようとする事は無かった。

けど僕は反対だった。犬は山で暮らしていたかったはずだ、
鎖でつないでおくなんて可哀想だ。
だから僕は、誰も家にいない日を見計らって、こっそり鎖を外してやった。
外した瞬間に、ポンは、だーっと畑の方に走っていった。
けれど、すぐに戻ってきた。
逃げなきゃダメじゃないか、と何度もしっしっと追い払ったが、
その度に戻ってくる。そうか、帰り道が分からないんだ。
そう思った僕は、祖父が拾ったという山の近くまでポンを連れて行き
そこに置いて帰ってきた。
これでもう、あいつは自由だ。怒られると思っていたけど、
それでも祖父は笑っていた。

数日経った寒い朝、凍り付いた玄関を開けると、ポンがいた。
ポンが帰ってきた。
ここがいいんだ、ここがポンの帰る場所になっていたんだ。
祖父はやっぱり笑っていた。

東北へ行こう。


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