山汽車に乗って



出演者情報:清水理沙 アクセント所属:http://aksent.co.jp/blog/

山汽車に乗って

     ストーリー 宍戸葵(東北芸術工科大学)
        出演 清水理沙

私の故郷、岩手県一関市は、山汽車が走っている。

電車じゃない、気動車って言うらしい。
走るのは少し下手。
揺れるし、うるさいし、急に止まる。
ちなみに山汽車って言うのはあだ名。山の中を走るから山汽車。
田舎くさいし格好悪い。しかも一時間に一本あるかないか。
高校時代、ずっと東北本線に憧れていた。
だけど、だけどね。

私は山汽車の窓が好きだった。
木々の緑、田んぼの緑、草花の緑。
走っても、走っても、窓は緑に溢れている。
緑との距離は、気になるあの人よりずっと近かった。

田植え前の夕方に乗ると
水の張った田んぼに、夕空が映って、
上も下もオレンジとブルーのグラデーション。
一年で一番、山汽車に乗りたくなる時期だった。

高校受験へ向かったあの日。
発車めがけて、全力で走ったあの日。
まだ手を離したくなくて、
一本遅い電車で帰ると母にメールしたあの日。
私の青春は、全て山汽車に乗っている。

今日も山汽車は故郷を走る、二十歳になった私を乗せて。

東北へ行こう。

Eki-Mataki

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清水理沙から「ひと言」

清水理沙です。みなさんこんにちは、お久しぶりです。
今回は、東北へ行こうシリーズを二本読ませて頂きました。
伊藤恵さんの「奥入瀬ライトアップ」と、
中里智史さんの「星座をつくろう」です。
たまにはゆっくりと、どこかへ出かけてみたいものです。
ぜひ聴いてください。そして、ぜひ訪れてくださいね。

星座をつくろう:http://www.01-radio.com/tcs/archives/26347
奥入瀬ライトアップ:http://www.01-radio.com/tcs/archives/26340

さて、吉川純広さんもひと言のコラムで書かれていましたが、
収録後に吉川さんと話している内に、
お互い共通点があることに気づきました。
それは、仕事をする時には中山さんの顔が浮かぶ、ということ。
私のナレーションデビューは中山さんとのお仕事で、
こうやりなさいと言われたことはないのですが、
確実に中山さんに教わってきたし今も教わっている、
という感じなのです。

吹き替えやアニメ、ジャンルが違うときも、
中山さんの顔が浮かびます。
これは不思議な感覚です。ありがたい感覚です。
私は今年で26。初めてお仕事をした時から15年経ちました。
これからも、この感覚は持ち続けると思いますので、
まだまだよろしくお願いします。

清水 理沙
http://ashley-r-senzatempo.seesaa.net/

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星座をつくろう

「星座をつくろう」

     ストーリー 中里智史(さとし)
        出演 清水理沙

夜になると、私は星空を見に行く。

私の暮らす岩手県洋野(ひろの)町は、
本格的な天文台がある。
日本一の星空に選ばれたことをきっかけに
つくられた天文台だ。
「ひろのまきば天文台」という名前のとおり
牧場の高台にあって、まわりには牛がいる。
当然だが、まわりにはネオンがない。空気も澄んでいる。
星がよく見える。
美しい星空は、この町の数少ない自慢のひとつなのだ。

だけど私が星空を見に行くのは、
手を伸ばせば届くくらいに輝く星たちを
ただ眺めに行くわけではない。
私だけの星座をつくるためだ。

その昔インカの人々は、夜空に見える星が多すぎるため
ひとつ、ひとつ星を結んで星座をつくるのではなく、
星のない隙間の形を様々な動物に見立てて
星座をつくっていたらしい。

私もインカの人々にならい、星空の暗闇を見つけていく。
雲の形を何かに例えるように、
輝く星たちの隙間を私は何に例えよう。
さあ、今日はどんな星座が生まれるだろう。

東北へ行こう。


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奥入瀬ライトアップ

「奥入瀬ライトアップ」

     ストーリー 伊藤恵
        出演 清水理沙

今年の夏休みは、奥入瀬渓流のライトアップをご覧になりませんか?

それは早朝、日が昇ると同時にスタートします。
日本一のブナ林と清流が織りなす朝日のライトアップです。

まわりの木々を従えるひときわ大きなブナは、
樹齢400年、幹回りが6メートルの巨木。
三本に分れた木には神が宿るという言い伝えによって
「森の神」と呼ばれています。

その「森の神」が見守るブナ林は、
川の流れが緑に染まり、そこに朝日が降り注ぐと、
渓流がライトアップされているようにキラキラと輝きだすのです。

見どころは、つぎつぎと移り変わる輝きの色。
陽が昇るにつれて青みがかった緑だった輝きは、
どんどん鮮やかになっていきます。
朝日が昇り切るころには、渓流全体が
まばゆいエメラルドグリーンの輝きに満ち溢れるでしょう。

夏休み、たまには早起きもいいものです。
川の水で顔を洗えば、毛穴が引き締まるほどの冷たさで、
眠気もきっと吹き飛びます。

皆様のお越しをお待ちしております。

東北にいこう。


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冬のあたたかい思い出

「冬のあたたかい思い出」

          ストーリー 鈴木萌水(東北芸術工科大学)
             出演 清水理沙

雪がしんしん積もる中、
お父さんの大きくて暖かい手を握りながら、
ざくざく音を立てて、寒くて暗い道をかきわけて歩いた。
次第にざわざわ声が聞こえて来て、
オレンジ色のやわらかい光が見えて来る。

鳥居をくぐるとおばちゃんたちから甘酒を貰った。
ぎゅっと握りしめて持つと、
冷えていた手がじんじんとあたたまってくる。
匂いのする水蒸気を吸い込んで、甘酒を、ごくり。
つぶつぶとした食感を感じながら、
少しやけどしてしまった舌をもごもごさせる。
小さい頃は大人の飲み物であるお酒を飲めるのが嬉しかった。

身体が胃の中からぽかぽかしてきて、
おばちゃんたちから貰ったみかんを食べる。
冬の空気でひんやりしているみかんは、
甘酒でほてった私にちょうどいい。
食べ終わった頃に、持ってきたお正月のお札を
ごうごうと燃えている火の中へ投げ入れる。
どさっと落ちる音がしてしばらく見ていると
端の方からじわじわ燃えていった。
燃えている火をずっと見ていると顔だけがほてってくる。

ぼおっとしてるとお父さんが言った
「お賽銭をしたら帰ろう。」
私はお賽銭をするのが好きだった。
まるで縁日の輪投げみたいにちょっと遠くから、
ずんとくすんだ5円玉を狙って投げ入れるのだ。
ちゃりん、ごとん、がらんがらん。
あの頃の私は願い事をするためではなく、
年に数回しかないちょっとしたアトラクションみたいに楽しんでいた。
「帰ろうか。」お父さんの大きな手を握って、
ざくざく道を進んでいった。
雪はまだ降っていたけど、もう寒くなかった。
次のお正月には帰れるから、
また、一緒に手を繋いでどんと祭にいこう。お父さん。

「東北へ行こう」


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かみのやま温泉http://kaminoyama-spa.com/

旅*東北http://www.tohokukanko.jp/







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時速320kmのはらこ飯

『時速320kmのはらこ飯』

         ストーリー 細田佳宏
            出演 清水理沙

「いってきます」
買ったばかりのキャリーケースを持って車を降りた私に、
お母さんは「新幹線で食べらい」と言って
小さな紙袋を渡してくれた。

小走りに仙台駅の改札を抜け、
ホームに止まっていた緑色の新幹線に乗りこむと、
やがて短い発車メロディの後、
新幹線はゆっくりとホームを滑りだす。
乗客はまばらだ。お昼時で駅弁を広げている人もいる。

紙袋のことを思い出し、中に入っていた包みをほどくと、
すこし茶色がかったご飯の上にピンク色の鮭の切り身と
つやつやのいくらが見えた。

はらこ飯だった。

はらこ飯というのは、簡単に言えば鮭の親子丼だ。
鮭の煮汁で炊きあげたご飯の上に、
脂ののった鮭の身とたっぷりのいくら、
つまり、「はらこ」をのせた亘理町の郷土料理。
阿武隈川で鮭がとれる9月から12月頃にしか食べられない
この季節だけの味だ。

最近は有名になって
亘理のお店や駅弁でも食べられるけれど
本当は同じ亘理の中でも
家によって炊き方や味付けが少しずつ違う。
はらこ飯はお姑さんからお嫁さんに伝えられる家庭料理なので、
私が小さいころから食べてきた
このはらこ飯もウチだけの味だ。

すごい勢いで流れていく景色を眺めながら、はらこ飯を頬張る。
そのうちに新幹線はぐんぐん速度をあげ、
仙台の街を置き去りにしていく。
今年初めての、そしてきっと最後のはらこ飯。
東京ではどんなに上等の鮭といくらが手に入っても
このはらこ飯は食べられない。

参ったなあ。ちゃんと教えてもらっておけば良かった。

東北へ行こう。

亘理町観光協会http://www.datenawatari.jp/

亘理のはらこ飯http://www.town.watari.miyagi.jp/index.cfm/8,8292,54,html

駅弁100選はらこ飯http://select100.pdc-web.jp/ekiben2013/detail/12

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