一倉宏 2010年4月4日



どうぶつたちの学校

ストーリー 一倉宏
出演 西尾まり 

メダカの学校を そっとのぞいてみると
みんなで おゆうぎしている
だれが生徒で だれが先生か よくわからないけど
みんなで おゆうぎしている

ドジョウの学校は どろ遊びをしている
ドジョウのこどもは どろまみれになっても叱られない
ドジョウの校長先生は ヒゲが自慢で
酔っぱらうとかならず どじょうすくいを踊る

プレーリードッグの学校は 礼儀正しい
「起立」「礼」「起立」
全員 起立したまま授業を受ける
宿題を忘れた生徒は もちろん廊下に立たされる

アライグマの学校では みんな手をあらう
鉄棒をしてもあらい ドッチボールをしてもあらう
アライグマの学校では 学級閉鎖がほとんどない
おまけに 給食のパンまであらう

ビーバーの学校は ダムづくりの学校だ
もてるビーバーの条件は ただひとつ
シッポさばきが巧みで ダムづくりがうまいこと
ビーバーの住民投票は 「建設賛成」が絶対多数だ

オオカミの学校は …ない
オオカミは 集団行動が苦手だから
そのかわり 通信教育が発達している
オオカミの赤ペン先生は 容赦なく赤点をつける

クジラの学校は でかい
クジラの学校のプールは 琵琶湖ほどもある
教室は 東京ドームの約300倍
クジラの学校の遠足は 地球を半周する

ウナギの学校は 長いあいだ 見つからなかった
でも最近 マリアナ海域で発見されたらしい
ウナギの学校は その海の底に寄宿舎があるのだろう
みんな細長い ウナギのベッドで眠る

スズメの学校は かなり大きなマンモス校
給食の準備もたいへん 人気メニューはやっぱり ごはん

カナリヤの学校は 音楽ばかり
放課後の部活だって コーラス部

コウモリの学校は もちろん夜間学校
先生は 黒板の文字を逆さに書く

ナマケモノの学校は 週に1日だけ
それでも欠席者が多い 休講も多い 夏休みも長い

カブトムシの学校は 腕白ぞろいの 力くらべ
セミの学校は土の中 卒業式には大合唱

ネコの学校は 昼寝45分 授業15分 また昼寝
イヌの学校は まいにち体育 教室はいらない

さて 人間たちの学校はどうだろう
人間の こどもたちの学校は ちゃんと のびのび 
たのしいですか?


shoji.jpg  
動画制作:庄司輝秋・浜野隆幸


Tagged: , ,   |  コメントを書く ページトップへ

一倉宏 2010年2月20日ライブ



   夢を話せば
            ストーリー 一倉宏
               出演 坂東工西尾まり

<男>
君だって 夢みていただろう いつもいっていた
夢のない男はいやだ 夢をもてない男に興味はない

<女>
その夢から 何年が経ったと思う?
あなたは いまも夢の話ばかり いいえ 夢のような話ばかり

<男>
夢なんて 食べられないっていうんだろ
そのとおり 夢を食べられるのはバクだけだよな
飲みにいこうよ 「夢の扉」という あのBARへ
僕の夢をグラスに おかわり自由の夢を いくらでも

<女>
そうやってまた 夢の話をするんだ
私は あなたの夢に 酔いすぎていた
それ以上に あなたはあなたの夢に 酔いすぎてしまう

<男>
あの日 君に出会えたことは 夢のようだった
それでもいい足りない 夢の中でみる 夢のようだった

<女>
だとすれば この私は 夢の中の夢の女
あなたが話すことは いつも 夢のまた夢

<男>
夢から覚めても それでもまだ 夢があるから
そしてずっと 君は夢の女だ 僕にとって 

<女>
私の夢は あなたがもう 夢から覚めること
そうしてもういちど ふたりの夢をみること 

<男>
僕はみるべきだろうか 君のみる その夢を
夢を捨てる僕を 僕の夢を捨てて叶える 君の夢を

<女>
私は決して 夢のような日々を 夢みてはいない
夢ではない夢をみたい ただそれだけ
それでも夢だというの こんなにもささやかな夢を

<男>
僕の夢は 僕のみる夢を 君とみることだ
君のみる夢を 僕もみることだ
それが 僕らの夢だったじゃないか

<女>
あなたが夢をみているあいだに なんども朝がやってきた
あなたの夢を覚まさないよう いつもそっと出ていった
夢をみているあなたの寝顔が 私の幸せだったとしても

<男>
君の横顔は 夢のように美しい いまも

<女>
涙がでてきた 
涙で曇って もうみえない 夢は

<男>
今夜は帰ろう 僕の夢の中へ

<女>
夢なら覚めて おねがい この夢は長すぎる

<男>
帰ろう 夢の中へ

<女>
こうして いつまでも私は 夢みつづけていくのか
この長すぎる夢から 覚める朝を

<男>
信じないのか 僕らの夢を

<女>
信じてる 夢ではない あなたなら 

出演者情報:坂東工西尾まり

Tagged: , , , ,   |  コメントを書く ページトップへ

小野田隆雄 2010年2月ライブ



雪の絵日記

           ストーリー 小野田隆雄
              出演 西尾まり     

絵日記の白いページに、
黄色い色が、あちらこちら、
こちょこちょと塗ってあるのは、
雪をかぶって咲き残る菊の花。

絵日記の白いページに、
緑色の、ほそ長い雲みたいな形が
互いちがいに書いてあるのは
雪の山のヒマラヤ杉。

絵日記の白いページに、
うすい灰色の足跡が、
消えそうに書いてあるのは、
出ていったまま、帰ってこない
忘れっぽい男の、長靴のあと。

この絵日記を、船に乗って南の島へ
行ったあなたに、船便で送ります。
もしも、受け取って返送しても、
絵日記は、私の所へは戻らない。
あなたは、わからないでしょうけど、
番地がちょっと違っているのです。
受け取って、読んでくださったら、
細かく切って、海にバラバラと
まいてください。
南の魚たちが、たわむれに
つまんで食べて、北国の風邪でも
ひいてくれないかな、と思っています。

絵日記の白いページに
ふんわりと水色の煙が書いてあるのは、
ふたりで飲んだ、マツリカ茶の湯気。
あの時は、
カップの中に、ふたりとも
マツリカの花がひらいたのにね。

絵日記の白いページのまんなかに、
赤い丸が書いてあるのは、
わたしの心。
ずいぶん恋もしてきたし、
だまされたり、だましたり、
もう慣れっこになっているから、
センチメンタル・ジャーニーなんて
ワインに酔った、そのときだけの、
つかのまの気まぐれ、それだけのこと。
私は、しっかり、生きていきます。
では、あなた、さようなら。
外では、雪もやみました。
凍りつくような、星空になりました。
さようなら。

出演者情報:西尾まり 03-5423-5904 シスカンパニー所属

Tagged: , , ,   |  コメントを書く ページトップへ

中村直史 2010年2月20日ライブ(レギュラー)



母音                       

            ストーリー 中村直史
               出演 西尾まり        

友人のアナウンサーに聞いたのですが。
人に言葉をしっかり届けたいときは
まず母音だけで言ってみる。
それから、その言葉を発すると良いのだそうです

やってみます。

あいう あおいんえいあうあ
ライブ たのしんでいますか

いああえあ いうんえうあ
しあわせな きぶんですか

おうああんおうあういおいいあうあ おうおおういいえいあいお 
おおっあおえいあいあいああ
えおあいえお-おうおえおいい-いいおうあいああ 
いおえんあうああい
彼は坂東工といいますが 彼と食事してみたい 
と思った女性がいましたら
080-6501-16×× にお電話ください

ういあえいあう
くりかえします

うおえう
うそです

えあ あいおあえ あいう あおいんいっえうああい
では さいごまで ライブ たのしんでってください

出演者情報:西尾まり 03-5423-5904 シスカンパニー所属

Tagged: , , ,   |  コメントを書く ページトップへ

細田高広 2010年2月20日ライブ



ラッキー                  

         ストーリー 細田高広
            出演 西尾まり  

ベルギーの空港で、
荷物をぜんぶ
盗まれたことがある。

待合室で男が落とした小銭。
それを拾い、振り返ったら、
男も荷物も消えていたのだ。

泣き顔でいきさつを話すと、
担当の女性警官は笑顔で言った。

You are lucky!
私が担当で、ツイてたわ。

パスポートも航空券も持たず
飛行機に乗れたのは、
彼女がつくった山ほどの書類と
直筆の手紙のお陰。

不運も幸運も、人の姿でやってくる。

以来、面倒を頼まれるたび、
あの女性警官を思い出す。

そして、ひきつる顔の裏、
必死に唱えるのだ。
You are lucky… You are lucky…

出演者情報:西尾まり 03-5423-5904 シスカンパニー

Tagged: , , ,   |  コメントを書く ページトップへ

国井美果 2010年2月20日ライブ



さよなら公園            

       ストーリー 国井美果
           出演 西尾まり
       

マイケル・ジャクソンの THIS IS IT を観た帰り道、
ムーンウォークでもやってみようと、公園に向かった。

夜の9時を過ぎた人気のない公園では
高校生らしき恋人たちが、今宵の別れを惜しんでいた。

「じゃーね、また明日」
「うん、じゃあね、メールする」
「うん。・・・あ、いっこ言い忘れたんだけど、」

じゃあ何の為にメールするのだ、と思うのは野暮ってもんだ。
名残惜しさの中ふたりのサヨナラが重なる。

しかし、サヨナラサヨナラって言いながらなかなか終わらない、
まるで歌舞伎座のさよなら公演だ。

みんな、本当はサヨナラが好きなんだよね。
切ないけど、その瞬間、生きてるって感じがするからかな。

と、公園に入れなかった私は
つまんないことを考えながらその場を後にした。

出演者情報:西尾まり 03-5423-5904 シスカンパニー

Tagged: , , ,   |  コメントを書く ページトップへ