勝浦雅彦のリメンバーカンヌ ⑨ もしもあなたが南仏の地で深く傷ついたなら

さて、今までカンヌの周辺情報や、
カテゴリーをピックアップしてコラムを書いてきましたが、
今回は「僕にとってのカンヌ2012」を書こうと思います。
ひとことで言うと、「失意のカンヌ」でした。
「カンヌは出品して行かなければ意味が無い」
たぶん、広告業界でカンヌを意識した事がある人なら、
かならずこのコトバに遭遇します。
日本の大手代理店やプロダクションは、
不景気といってもまだ余裕があるのか、
わりと若手でも「視察」「研修」の名のもとに社費でカンヌに行けたりします。
僕も初カンヌはそうでした。
出品しないで行くと、スクリーニングやセミナーに参加したり、
社外の人とふれあったりというのがメインになります。
前述しましたが、それも十分な意義がある行為です。
僕も初めての参加はそうでした。

ですが、やはり制作者である以上、
自分のつくったものが、諸外国人の目にさらされ、ジャッジされる、
という緊張感は何とも言えない経験であると思います。
そして、日本でウケているCMの多くが、まったく無反応であったり、
ブーイングの対象になっていることに愕然とするのです。
2012年、僕は「ぜに屋本店」というCMを出品しました。
あまり自分で言うのもいやらしいですが、
アドフェストでグランプリを穫ったので、
「もしかしたら学生の頃から憧れていたあのカンヌも・・・」
と思ってしまったのは、今思えばムリのないことでした。
自分が行く事は即決したのですが、
「こんなチャンスはもうないかも!」と、
若干テンションが暴走して、
監督の岸さん、プロデューサーの佐々木さん、
音楽監督の松尾さんたちを誘いまくって、
カンヌに呼んでしまいました。
アドフェスのときはまったく油断していて、
(正直、出品した事自体を忘れていた)
別件の撮影でトルコから帰った朝に受賞の知らせを聞いて、
その日の深夜便で羽田からタイに向かったので、
チームの誰も来れずに一人で登壇しました。


(質庫 ぜに屋本店CM・英訳版 

なので、今度こそいいことがあったら
チームで分かち合いたかったんです。
さらに、僕のハイテンションが伝染した営業が、
ぜに屋の社長さん夫妻をカンヌにアテンドすることになってしまいました。
ちょっと大事です。
カンヌの日程が進み、
結果を待つうちに、自分の感情はともかく、
色んな人を動かしてこれで何も残せなかったらどうしよう、
と、ソワソワしてかなり落ち着かないモードになりました。

(写真② フィルムの日本勢は惨敗)

そして発表。
結果は無情なものでした。
自分のCMはもとより、
日本勢はインターネットフィルム以外は、
ブロンズにすら一つも入らず。
フィルムクラフトも日本は全滅。
インタラクティブ系カテゴリーの華々しい成果と裏腹に、
日本のフィルムは厳しい評価を突きつけられたのでした。
リストを見ながら、ボーっと会場に座り込んでいたのを
よく覚えています。

(写真③ ボーっとしている自分)

アジアでグランプリを穫っても、
ヨーロッパでは相手にされないのか・・・、
などとひと昔前のサッカー日本代表のような無力感を
抱えて会場の階段で呆然としていると、
岸監督や佐々木Pが僕のもとにやってきて言いました。
「明日は、クールダウンのために会場を離れよう」
脱力をした僕をCMの最後のようにおんぶするイメージで、
仲間達は僕を救ってくれたのです。
翌日。
一行は街でレンタカーを借り、
カンヌ周辺へと小旅行に出かけました。
行った場所はこんな感じです。
○コートダジュールの海岸→とても美しく、走るだけで気持ちがよかった。

(写真④ コートダジュールの美しい海岸線)
(写真⑤ 思わず気取りたくなる空気感)

○グリマルディ城(ピカソ美術館)→お城が美術館になっています。
ピカソ好きは必見。

(写真⑥ 雰囲気のある古城)

(写真⑦ ピカソ翁が出迎えてくれます)

○エズ→かつての切り立った要塞に、街が出来ていて、レストランが多数存在。
夜はかなりロマンチック。別名「鷲の巣」。

(写真⑧ リアル「天空の城 ラピュタ」)

これはとても楽しい旅でした。
結果発表まで張りつめていた緊張感がゆるんだ
こともありましたが、みんなつとめて明るく振る舞ってくれて、
本当に助かりました。
旅の最後の方でちょっとしたトラブルに巻き込まれ、
けっこうヒヤヒヤしましたが、
みんなそれなりに英語がしゃべれたので何とか切り抜けて帰還。
そしてカンヌに戻った翌日、営業から電話が入り、
ぜに屋の社長さんが夕食のお誘いがあるとのこと。
バツが悪いですが、監督共々ご一緒にすることになりました。
お店は「ムーラン・ド・ムージャン」というカンヌ近郊の
村にある高級レストランでした。

(写真⑨ た、高そうなレストランや・・・)

「入賞できずにすいません」
と平謝りする僕に、
「今まであれだけ結果を出してくれて、
ここまで連れてきてくれたんだから感謝していますよ」
と逆にお礼を言われてしまいました。
やはり、社長とは器の大きな人がなる職業なのだな、と
あらためて感じました。

(写真⑩ 社長夫妻を囲んでの会食)

かくして、僕のカンヌの狂想曲は終わり、
国内外で11の賞を穫ったCMが唯一逃したのが、
カンヌという結果となりました。
「近づけば遠のく、離れようとすると近づいてくる、それがカンヌだ」
かつて誰かから聞いた言葉が、いつまでも耳の奥に響いていました。
前のコラムで書いた、
おすすめしない「エスケープカンヌ」を実行してしまったわけですが、
あまりに、カンヌで辛い事があったら、憤ることがあったら、
一日くらい気分転換することをお勧めします。

「PKを外す事ができるのは、PKを蹴る勇気を持ったものだけだ」
という言葉があるように、
出品した人間にしか得られない悔しさや喜びがカンヌには、
あると思います。
僕はまだカンヌの喜びを知りませんが、
「失意のカンヌ」を糧として、
いつかそこにたどり着けるまでコツコツ頑張ろうと思います。
次回は最終回です。

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2013年6月7日 TCC総会 & パーティ写真-2


写真はクリックすると大きくなります。
ドラッグ&ドロップでデスクトップに保存できます。
写っているかた、どうぞお持ち帰りください。
なお、このパーティ写真の最初の13枚はこちらにあります。
http://nknk.exblog.jp/19768557/
そして、この続き(二次会)の写真はこちらです。
http://www.01-radio.com/archives/17560

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勝浦雅彦のリメンバーカンヌ ⑧ それが、カンヌの答えだ!

みなさんこんにちは。
あれ、何だかお久しぶりな気がしますが、
気のせい、気のせい。
気がつけば、時は2013年6月。
そう、もうすぐあのカンヌライオンズがやってきます。
地中海よりも深く、セーヌ川よりも話せば長くなる事情がありまして、
ストップしていたこのコラムですが帳尻をあわせるように、
あと3回最後まで走り抜かせていただきます。
去年のおさらいのような気持ちで、
読んでいただければ幸いです。

今回はカンヌライオンズの華、フィルム部門のお話。
そもそも、このカンヌはフィルムの祭典であり、
スタート当初から存在するこの部門は、
コミニケーションのありかたが変わっても
いまだにメインイベントとして存在しています。
やはり、他の部門が応募作を見るのに、
いちいち会場に置いてあるPCやモバイルからアクセスしたり、
長々と「仕組みビデオ」を見なければならないものであることに比べて、
大シアターでドカッと腰をおろして見られるフィルムはやっぱり、
気楽で楽しいんでしょうね。
もちろん、つまらない長尺シリーズが、
何本もあった日には指笛(ブーイングの意)の嵐ですが。

今回、なるほどーと思ったのは、やはりGPは別格である、ということ。
カンヌを何年かに渡って見ると、
何となく「カンヌ文法」みたいなものがあることに気づきます。
その一つが「不可思議なシチュエーションを描いて、タグラインで落とす」
お作法です。
2012年で言えば、
ゴールドを穫った、CANAL+「BEAR」

なぜか映画監督をしている熊。しかも、何かペラペラしてる。
→実はかつてリビングの置物で、映画を観まくってハマってそうなった。

ブロンズの「ガンジーブックストア」

シリアスなシチュエーションに急に、日常的な邪魔が入る。
→本を読むってこういうことですよね。読み続けましょう。

あるいは、とにかくひとつのタグラインに向かって
スケール感と徹底的なつくりこみで圧倒的な作品をつくる。
ゴールドの「P&G」

The hardest job in the world,
is the best job in the world.
(世界でいちばん大変な仕事は、世界でいちばんステキな仕事です)

ゴールドの「THE GUARDIAN」

THE WHOLE PICTURE.
(全貌)
こういったものが、CM上のカンヌ文法と言われ、
あとは表現にすさまじいお金と時間を注入し、
圧倒的なスケールで、
文化の違いがあろうがなかろうが首根っこ引っ掴んで、感動させる、
というのが欧米的なカンヌフィルムの真骨頂であると思います。
文化の違い、ということでいうと、
「ノンバーバル」という要素も見逃せません。
あまり、セリフやナレーションでくどくど説明するものは、
賞の上位にいかない、というのはもはや定説です。
日本向けは1億2000万人、
しかし、グローバル対象のフィルムならば10億、20億人向けが当たり前、
自ずとかける予算・パワーが違うというのが正直なところでしょう。
で、2012年のグランプリですが、これでした。
chipotle「Back to the start」

最初にこれを授賞式で見た時は、「ポカーン」でした。
恥ずかしながら、
「あ、インタラクティブフィルムにもGPがあるんだな」
とか、勝手に解釈してしまったくらいです。
このアメリカの外食チェーンが、
自分たちが使う食材の生産方法に対して、
「最初に戻ろう」とメッセージしたCMは、直前のCLIOでもGPを獲得しており、
前評判は高かったわけですが、きわめて真面目なアプローチ、
映像にもあまり驚きはありませんでした。
ただ、このCM楽曲をダウンロードすると、
そのお金が食材を育てる施設に「投資」されるなど、
安全で美味しいものをみんなでつくっていく、
という文脈も含めて評価されたとのこと。

GPの決選投票は「真面目、ジャーナリスティック系」のchipotleと、
「エンタメ系」のCANAL+の争いだったようです。
最終的には審査委員長の、
「世の中をいい方向へ導いたのはどちらか」という判断基準で、GPは決定。
ここらへんは、毎年の審査の軸を決定する審査委員長の哲学が、
かなり影響することになります。
他の広告賞とは違う、「カンヌの答え」というものをどう出すのか。
それが明確になるのが、GP。
審査員もかなりのプレッシャーの中で、
何千ものフィルムを審査していくわけですから、
想像以上に、ハードなんだそうです。
いつかやってみたいものです。

さて、今年のカンヌは、アドフェスト2013を制した、
オーストラリアの「Dumb Ways To Die」が圧倒的な下馬評のようです。

どちらかといえば、メッセージは「良識・真面目」系ですが、
表現はエンタメ系がまぶしてあって、バイラルしやすい、
パクリムービーがつくられやすい構成になっています。
分析すればするほど、GPをとりやすいフィルムですが、
そこはへそ曲がりなカンヌ審査員。
あまりに前評判が高くなると、
「それは、カンヌの答えではない」とバッサリ、
ニューカマーに軍配をあげることも。
繰り返しますが、やはりカンヌのフィルムは楽しいですね。

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ACCラジオ部門出品用CDの焼きかた

さて、今年はやっとCDでの出品がが正式に認められました。
いままではCDでも受け付けてくれましたが
正式にはMOだったわけです。

「CDでもいい」というのと「正式にCD」では
出品するときの気分が違うと思いますし、
ありがたいことにCDは簡単に自分で焼けます。
今年も出品用のCDの焼きかたを復習したいと思います。

自分で焼けばCDのメディア代だけですみますから、ぜひ覚えてください。

まず、iTunesの環境設定をひらいて「詳細」を開きます。
そして「読み込み」の「読み込み方法」を
「AIFFエンコーダ」にします。
ACCの応募要項には.wavとか書いてありますが
.aifのオーディオCDで大丈夫です。心配いりません。

それから「設定」を「カスタム」にします。
「カスタム」が開いたら
「サンプルレート」を「44.100KHz」に
「サンプルサイズ」を「16ビット」に
「チャンネル」を「ステレオ」に。

すると、スタジオで焼いたCDとほぼ同じ音質で読み込みます。
あとは「作成」を「オーディオCD」に設定して焼くだけです。
シリーズの場合は作品と作品の間の空白が1秒必要ですが
それもiTuneで焼くときに指定できます。

mp3やAACで焼かないように気をつけてください。

ACC出品用のCDの規定はここにあります。
http://www.acc-cm.or.jp/festival/2013fes/entry/radio.php#01

上記の応募要項を読んで悩むのは
自分でCDを焼くと音声クレジットが入れられない、とか
クレジットと作品の間の「空白」がつくれない、
シグナルが入れられない、などどなどのことだと思います。

これはもうしかたのないことです。
まず、クレジットに関してはなくても大丈夫です。
ただし、CDのジャケットをつくってください。
ジャケットにクレジットを正しく文字で書いてください。
作品の順番も間違えないように。
それができていれば大丈夫です。受け付けてくれます。
私は長年これで出品していますので間違いありません。

クレジットと作品間の空白に関しては「3秒」と書いてありますが
そもクレジットがなければ空白もいらないわけですし
クレジットつきで出す場合も「3秒」である必要はありません。

「シグナル」もいりません。

要するに、自分のできる範囲でCDを焼いて
気軽に応募すれば大丈夫なのです。
これが基本です。

自分で焼いたCDを聴いてみて
スタートボタンを押したとたんに作品が流れはじめる、
ちょっとくらいインターバルが欲しいんだけど、という人は
私が5秒の無音データを持っていますから差し上げます。
メールをください。
ACCの要項には「3秒」と書いてありますが、
なに、かまやしません。5秒で大丈夫です。
ここから ダウンロードできる人はしてください。
http://random-radio.up.seesaa.net/image/silent205E7A792.aif
Safariだとコントロールキーを押しながら上記をクリックすると
ダウンロードの指令が下せる小窓が開きます。

これをアタマにつけておけば5秒のインターバルができます。

中山佐知子

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ACCの出品は本日(2013年6月3日)から受付です

【エントリー/素材受付】
(テレビ/ラジオ/マーケティング・エフェクティブネス)
2013年6月3日(月)~2013年7月1日(月) 
・最終日は15時まで

【参加資格】
・テレビ
対象CMは2012年7月1日~2013年6月30日の間に
日本民間放送連盟に加入している放送局において初放送されたCM。

・ラジオ
対象CMは2012年7月1日~2013年6月30日の間に
日本民間放送連盟に加入している放送局において初放送されたCM。
また、本年度もコミュニティFMで放送された作品の応募を受け付けます。

・マーケティング・エフェクティブネス
キャンペーン期間中に、日本民間放送連盟に加入している放送局で
CMが放送されていること。
2013年6月30日以前に終了したキャンペーンはエントリーできません。
  
※テレビ・ラジオともに、マーケティング・エフェクティブネス部門への
 重複エントリーは可能です。

※テレビ・ラジオともに、CM部門と地域CM部門への重複エントリーは
 できません。

※テレビ・ラジオともに、シリーズの中の作品を、別途単品として
 エントリーすることは可能です。(シリーズ内の何本でも)

※テレビ・ラジオともに、マーケティング・エフェクティブネス部門への
 重複エントリーは可能です。

※テレビ・ラジオともに、CM部門と地域CM部門への重複エントリーは
 できません。

※テレビ・ラジオともに、シリーズの中の作品を、別途単品として
 エントリーすることは可能です。(シリーズ内の何本でも)

詳細はこちらへ:http://www.acc-cm.or.jp/festival/2013fes/

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「オセロ」がそろそろはじまります

チケットぴあで見てみると
日によってはすでに売り切れのようですね。
でも補助席も売り出しているようですし
まだ何とかなるのではないでしょうか。

6月9日初日の世田谷パブリックシアター「オセロ」です。
オセロ:仲村トオル、デズデモーナ:山田優までは判明しているのですが
あとは誰が何でしたっけか。
加藤和樹:キャシオーでしたっけ。
高田聖子ちゃんは誰かの妻といってましたが
イアーゴーの妻かしら。シリアスな役ですね。
いや、オセロ自体がコンプレックスのカタマリのような人ですが
それを仲村トオルさんですから、一筋縄ではいかないオセロでしょうね。
演出は白井晃さんです。
チケットまだの人はそろそろ取った方がいいと思いますよ。

詳細はこちら:http://setagaya-pt.jp/theater_info/2013/06/post_313.html

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