神谷幸之助さんの秘密






神谷幸之助さんの「ラストフライト」にコメントをいただきました。
神谷さんはフライトエンジニアのストーリーを書いたのですが
コメントは本物の元フライトエンジニアからでした。

神谷さんに「コメントきてますよん」とメールを出したら
こんな返事が来ました。

あ、中山さんには言ってなかったけれど
神谷は大学でたあと一時、フライトエンジニアを目指し
JALのテストをうけたことがあるんです。
もちろん落ちた。だからこの話の前半は、僕の実話なんスよ。
本物から来たコメント、冷や汗もんです。


えええ〜〜っ、神谷さんがフライトエンジニア….

別に秘密にしていたわけではなさそうですし
敢えて私に隠そうとしていたわけではないと思うけれど
私はかなり驚きました。
びっくりして数分くらい言語能力がマヒしました。

ヒコーキが好きだったのか、計器類が好きだったのか
それとも空が好きだったのか
そのへんのところもおたずねしてみたいです。

コメントをご覧になりたいかたはこちら。
http://www.01-radio.com/tcs/archives/17931

そのかたはコックピットから見た風景を絵に描いておいでで
そちらのHPも楽しいです(なかやま)
http://cockpitart.com/

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神谷幸之助 2011年4月3日




ラストフライト

         ストーリー 神谷幸之助
            出演 遠藤守哉

むかしはよく空をみていた。

わたしは23歳の夏、旅客機の航空機関士/
フライトエンジニアという職種をめざしていた。
航空機関士は、機長/副機長につづく第三の機長。
飛行のための複雑で
おびただしい数の計器を監視しながら機長をサポートする仕事だ。

空を見ていたのは
それはあこがれなんかじゃなくて目の視力をあげるためだった。
特に夜空の星を見つめることで焦点距離を遠くにあわせるトレーニング。
歯もすべて直した。飛行中の歯痛で業務に支障をきたさないために。
東西南北の方向感覚も鍛えた。
たとえば機体がきりもみ状態になったとき
瞬時に機首がどっちを向いているかを判断するために。
性格の適性検査も念入りに試される。
同じテストを何度も行い
すべてのデータが一定であることが求められた。
どんなときでも、沈着冷静でいられるかどうかを調べるために。

テストに合格したあとも、夜空を見上げることは習慣になっていた。
ある夜、美しいものを一度だけ見たことがある。

それは白い一本の軌跡。

夜の飛行機雲だ。

飛行機雲は、ジェットエンジンから排出された水分が、
急速に冷えて雲になる。
だから上空が寒ければ、昼夜を問わず飛行機雲は出る。
でも星空にまぎれてみえづらいから、
見られることは、流れ星よりラッキーかもしれない。


NA:
「ここからふたつのエンディングをお楽しみください。
 まず、エンディング/タイプAをどうぞ」


しかし、航空機のコンピュータ化がすすみ
すべての計器をいつも監視する必要はなくなった。
ボーイング747クラシックの引退と同時に
航空機関士という職種は事実上、消え去った。
わたしの最後のフライトは、ホノルルー成田便。
成田に着く直前機長から機内放送のマイクを預けられ
「これが航空機関士最後のフライトです」という挨拶をすると
そのジャンボに乗った夏休みのハワイ帰りの乗客から
「おつかれさま」の拍手が起きた感動は、いまも忘れない。

そして、いま、わたしはまた夜空を見ている。
あの、まだ一度しか見たことがない夜の飛行機雲をさがして。

NA:
「次のエンディング/タイプBをお楽しみください。

おれはこの計器に囲まれた空間が、好きなんだ。
ボーイング747クラシックが、好きなんだ。
おれは、航空機関士だ。
定年まで、地上勤務なんてまっぴらだぜ。
この最後のフライトで、すべて終わりにしよう。
今頃エンジンからは、白い飛行機雲が見えるはずだ。
だけどそれは雲じゃない。おれが捨てた航空燃料だ。

計器たちが、異常な動きをはじめた。
よし、もう大丈夫。

あとは、この一度も触ったことのない
スロットルに触るだけだ。

さらば、ボーイング747クラシック。
さらば、航空機関士。
さらば・・・


出演者情報:遠藤守哉 03-3479-1791 青二プロダクション


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神谷幸之助 2010年7月18日

hotaru.jpg

ぶ~ん


ストーリー 神谷幸之助
出演  坂東工


あー、ハエがうざい。

ここ、ニュージーランドでは
毎日、大量のハエとの闘いだ。
こっちのジョークに
「口を開けてるとハエが入るから、食事中は口を閉じなさい」
なんてのがあるくらい。

だからといっても
きょうは異常に多すぎる。
これも温暖化のせいなのかなあ。

ハエで思い出したけれど
きのう見た
「ヒカリキノコバエ」の赤ちゃん、きれいだったなあ。
ヒカリキノコバエの幼虫は真っ暗な洞窟の天井に住んでいる。

そして、カラダから粘液を出すんだ。
粘液は長いものでは30cm以上も、たらーりと下にたらす。
その粘液が暗闇で、ポアアって青白く光る。
それは洞窟の中に銀河ができたような、幻想的な宇宙。
この粘液の正体は、
日本の蛍の発光成分とおなじ。
日本人は、ヒカリキノコバエを通称「土ホタル」って呼ぶ。

だけどその美しい光は、おそろしい罠なんだ。

光にうっとりした虫をおびき寄せ、粘液でとらえ
身動きできなくして、ポリポリ食べるんだ。
成虫になるまで半年から一年もかかる。
そして、

成虫には、なんと「口」がない。

口そのものを持っていない。

ひたすら交尾をし、産卵を終え、
エネルギーを使い果たし、数日間の短い一生を終える。
ただ生まれて子孫を残すだけのシンプルな生きもの・・・。

あー、しかしこのハエの多さは気が狂いそうだ。
うわーって叫びたいけれど声が、・・出ない。

声が・・・出ない?
NA:
「ここからふたつのエンディングをお楽しみください。
 まず、エンディング/タイプAをどうぞ」

声が出ない?

そうか出せないはずだ。
このたくさんのハエは、
ぼくという「死体」に、たかっていたんだ。
ぼくはいつどうやって死んだんだろう。
ま、いまさらどうでもいいか。

そんなことより
あー、ハエがむかつく。
ぼくを食べるな。

NA:
「次のエンディング/タイプBをお楽しみください。」

声が出ない?

声がでなくてあたりまえ。
だって
ぼくはヒカリキノコバエの成虫。
もともと「口」というものがないんだ。
だいじょうぶ。
口がないから、人にはかみつけない。

そんなことより
交尾して一生を楽しまなくちゃ。

それ、交尾、交尾♪



出演者情報:坂東工 http://blog.livedoor.jp/bandomusha/

shoji.jpg  
動画制作:庄司輝秋



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神谷幸之助 2010年6月26日ライブ



渚にて。

        ストーリー 神谷幸之助
           出演 坂東工高田聖子


子犬に激しく吠えられて、ビックリして目が覚めた。
一緒に午睡をしていた彼女も悲鳴をあげた。
牧羊犬のボーダーコリーだ。
羊に吠えるように、僕らにまとわりつく。
誰のペットなんだよ。

地元の人が多いこの小さなビーチは、
昨日、都会から来た僕らに、冷たかった。
話しかけても誰も答えてくれない。
時々目が合って、愛想良く微笑んでも
すぐかわされた。

のどが乾いて
「すみません、ビールください」って、海の家でお願いしても
「なめんなよ!」って叫んでも。
全員に無視された。

ぼくらは、孤独だった。
閉鎖的なビーチ。

だから
僕は彼女とふたりで、
海で遊ぶしかなかった。

彼女は、泳ぎが得意ではなく、むしろ金槌だった。
水を怖がって、海には入ろうとしなかった。
それを無理矢理ゴムボートに乗せて沖に引っ張って行き
キャーキャー騒ぐ彼女と笑いあった。
ビーチのみんなに冷たくされても、
けっこう楽しかった。

それはビーチに戻ってきて
雲に隠れていた
太陽の強烈な陽射しが戻ってきた時のことだった。

(女性)「ここからふたつのエンディングをお楽しみください。
    まず、エンディング/タイプAをどうぞ」

太陽の強烈な陽射しが戻ってきた時のことだった。

僕の彼女に影がないことに気がついたのは。

え、どういうこと?

そして、僕にも影はなかった。

体を動かしたり、手を振っても
影はない、てか、できなかった。

その瞬間すべてが瓦解し、すべてが理解できた。

思いだした。
昨日、僕と彼女はこのビーチで
彼女を沖につれだしたとき溺れ、
それを助けようとした僕も溺れたんだ。

ライフガードにビーチまで上げてもらったけど。
人工呼吸をしてくれたんだけれど。
だめだった。

僕と彼女は、死んだ。

ビーチのみんなが冷たかったのではない。
みんなに、僕らは見えなかった。

犬だけが、僕らのに気づいたんだ。
ぼくらの「存在」を知っているのは、キミだけだったんだね。
ありがとう。

(女性)「次のエンディング/タイプBをお楽しみください。」

太陽の強烈な陽射しが戻ってきた時のことだった。

影があるのは、僕と彼女だけ。

そのほかこのビーチにいる全員に影がないことに気がついた

あのおじさんも、あのビキニの娘にも、この小さな子にも。

そこは、死の国だったんだ。
死者たちの海水浴。

犬は、この死のビーチの番犬。
こう吠えていたんだ。

「こっちに来ては行けない。出て行け!」


*番組の音声はこちらでお聴きいただけます
http://www.01-radio.com/tcs/archives/12468

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神谷幸之助 2009年7月15日



渚にて。

                   
ストーリー 神谷幸之助
出演 地曳豪


子犬に激しく吠えられて、ビックリして目が覚めた。
一緒に午睡をしていた彼女も悲鳴をあげた。
牧羊犬のボーダーコリーだ。
羊に吠えるように、僕らにまとわりつく。
誰のペットなんだよ。

地元の人が多いこの小さなビーチは、
昨日、都会から来た僕らに、冷たかった。
話しかけても誰も答えてくれない。
時々目が合って、愛想良く微笑んでも
すぐかわされた。

のどが乾いて
「すみません、ビールください」って、海の家でお願いしても
「なめんなよ!」って叫んでも。
全員に無視された。

ぼくらは、孤独だった。
閉鎖的なビーチ。

だから
僕は彼女とふたりで、
海で遊ぶしかなかった。

彼女は、泳ぎが得意ではなく、むしろ金槌だった。
水を怖がって、海には入ろうとしなかった。
それを無理矢理ゴムボートに乗せて沖に引っ張って行き
キャーキャー騒ぐ彼女と笑いあった。
ビーチのみんなに冷たくされても、
けっこう楽しかった。

それはビーチに戻ってきて
雲に隠れていた
太陽の強烈な陽射しが戻ってきた時のことだった。

(女性)「ここからふたつのエンディングをお楽しみください。
    まず、エンディング/タイプAをどうぞ」

太陽の強烈な陽射しが戻ってきた時のことだった。

僕の彼女に影がないことに気がついたのは。

え、どういうこと?

そして、僕にも影はなかった。

体を動かしたり、手を振っても
影はない、てか、できなかった。

その瞬間すべてが瓦解し、すべてが理解できた。

思いだした。
昨日、僕と彼女はこのビーチで
彼女を沖につれだしたとき溺れ、
それを助けようとした僕も溺れたんだ。

ライフガードにビーチまで上げてもらったけど。
人工呼吸をしてくれたんだけれど。
だめだった。

僕と彼女は、死んだ。

ビーチのみんなが冷たかったのではない。
みんなに、僕らは見えなかった。

犬だけが、僕らのに気づいたんだ。
ぼくらの「存在」を知っているのは、キミだけだったんだね。
ありがとう。

(女性)「次のエンディング/タイプBをお楽しみください。」

太陽の強烈な陽射しが戻ってきた時のことだった。

影があるのは、僕と彼女だけ。

そのほかこのビーチにいる全員に影がないことに気がついた。

あのおじさんも、あのビキニの娘にも、この小さな子にも。

そこは、死の国だったんだ。
死者たちの海水浴。

犬は、この死のビーチの番犬。
こう吠えていたんだ。

「こっちに来ては行けない。出て行け!」



*出演者情報:地曳豪

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神谷幸之助 2008年6月



老人と雨

                     
ストーリー 神谷幸之助
出演 竹下明子


「あなた、いい天気ですねえ。
わたしたちの結婚式の日みたいですねえ。
わたしは雨が好きだから、雨が降ったってよろこんでいたら
みんな変な顔してましたよね。

ふたりで傘をさして庭で結婚写真を撮りたいって言ったとき
みんなびっくりしていたけれど、
撮ってよかった。
白無垢と紋付袴の相合い傘の結婚写真って、いまでも大好き。
こんな結婚写真、誰も持ってないもの」

「いい雨。
どしゃぶりは気持ちいい。
一番好きな曲は「雨の日と月曜日は」
そう、カーペンターズ。
「雨に唄えば」は、能天気すぎて好きじゃなかった

子どもが生まれたときも幸せな日だったけれど
おもえば、結婚式の日が一番うれしい日だったなあ。

いろんな反対があった。
何度もいろんな人にアタマを下げて
嫌な思いも山のようにして、
やっと結婚できたからね。
あれから50年。あっという間だったわね。

あなた、あなた・・・
もう、
すっかり物忘れが進行しているのね。

あなた聞いてるの?
え、
『きょうの晩ごはんは、鮎が食べたい』ですって?」

    アナウンサー:
    「ここからふたつのエンディングをお楽しみください。
     まず、エンディング/タイプAをどうぞ」

「『きょうの晩ごはんは、鮎が食べたい』ですって?

ふー。(ため息)
しっかりしてください・・

わたしは、この世にはもういないのよ。
2年前にお陀仏したの。忘れたの?

わたしもあなたと
夕ご飯もう一回一緒に食べたいけれど、
もう叶わないのよ。

私が死んだ事も、忘れちゃったのね。
ああ、もうそろそろ行かなくっちゃ。
あの世からこの世には、一度しか来れないんです。

『生まれ変わったら、もう一回あなたと結婚したい』
って、最期にいいそびれたから・・
それを言いに来たの。

雨が降ったら、わたしのこと思い出してね。
それじゃあ、元気でね。ばいばい」

    男性:次のエンディング/タイプBをお楽しみください。

「『きょうの晩ごはんは、鮎が食べたい』ですって?

ふー。(ため息)
馬鹿も休み休み言いなさい・・ははは

わたしは、この世にはもういないのよ。
あなたが殺したんじゃない!
あなたが保険金欲しさに、手をかけたんじゃない!

私を殺したことも、忘れちゃったのね。
今日は、あなたが死刑になる日と聞いて
そのもがき苦しんで死ぬ姿を
よーく見物しようとあの世から来たのよ。
裁判の日から今日まで待った、待った。

ほらほら、始まったよ。
そうそうそのわっかに首を入れるのよ・・・。

この世で死刑になったら、
あの世でもう一度殺してあげる。

生まれ変わったらもう一回結婚して
もう一回殺してあげる。

むこうで待ってるからね。
それじゃあ、元気でね。ばいばい」



出演者情報:竹下明子 03-5481-5801 アクトレインクラブ

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