中村直史 2010年2月ライブ(ショート)



母音                       

            ストーリー 中村直史
               出演 坂東工        

友人のアナウンサーに聞いたのですが。
人に言葉をしっかり届けたいときは
まず母音だけで言ってみる。
それから、その言葉を発すると良いのだそうです

やってみます。

あいう あおいんえいあうあ
ライブ たのしんでいますか

いああえあ いうんえうあ
しあわせな きぶんですか

おうああんおうあういおいいあうあ おうおおういいえいあいお 
おおっあおえいあいあいああ
えおあいえお-おうおえおいい-いいおうあいああ 
いおえんあうああい
彼は坂東工といいますが 彼と食事してみたい 
と思った女性がいましたら
080-6501-16×× にお電話ください

ういあえいあう
くりかえします

うおえう
うそです

えあ あいおあえ あいう あおいんいっえうああい
では さいごまで ライブ たのしんでってください

出演者情報:坂東工

Tagged: , , ,   |  コメントを書く ページトップへ

張間純一 2010年2月20日ライブ(ショート)


「わかりにくい親切」
            
ストーリー 張間純一
出演 坂東工西尾まり

んさみな

んさみなの にかな

げなはが てびの るい とひが るい んせまれしもか

らかだ

したわは のこ うごんあの ばとこで てえしお すまい

のこ うごんあに がき たいつ とひは

んぶじごの なはを てっわさ げなはが てのび かいな てめかした いさだく

げはなが てびの るい とひは たなあ んせまれしもか

りなとの とひが なはを てっわさ らたっかない

のそ とひが げなはが てびの るい とひ んせまれしもか

<「わかりにくい親切」の同時通訳>

みなさん みなさんのなかに
鼻毛が伸びている人が いるかもしれません
だから
わたしは この暗号言葉で 教えています。
この暗号に気がついた人は
ご自分の鼻にさわって 鼻毛が伸びていないか 確かめていただきたく
鼻毛が伸びている人は あなたかもしれません。
となりの人が 鼻を さわっていなかったら
その人が 鼻毛が伸びている人かも しれません

出演者情報:坂東工西尾まり 03-5423-5904 シスカンパニー

Tagged: , , , ,   |  コメントを書く ページトップへ

張間純一 2010年2月20日ライブ(レギュラー)


「わかりにくい親切」
            
ストーリー 張間純一
出演 西尾まり坂東工

んさみな

んさみなの にかな

げなはが てびの るい とひが るい んせまれしもか

らかだ

したわは のこ うごんあの ばとこで てえしお すまい

のこ うごんあに がき たいつ とひは

んぶじごの なはを てっわさ げなはが てのび かいな てめかした いさだく

げはなが てびの るい とひは たなあ んせまれしもか

りなとの とひが なはを てっわさ らたっかない

のそ とひが げなはが てびの るい とひ んせまれしもか

<「わかりにくい親切」の同時通訳>

みなさん みなさんのなかに
鼻毛が伸びている人が いるかもしれません
だから
わたしは この暗号言葉で 教えています。
この暗号に気がついた人は
ご自分の鼻にさわって 鼻毛が伸びていないか 確かめていただきたく
鼻毛が伸びている人は あなたかもしれません。
となりの人が 鼻を さわっていなかったら
その人が 鼻毛が伸びている人かも しれません

出演者情報:坂東工西尾まり 03-5423-5904 シスカンパニー

Tagged: , , , ,   |  コメントを書く ページトップへ

小野田隆雄 2010年2月11日



イースター島の風
            

ストーリー 小野田隆雄
出演  坂東工          

タヒチのパペーテから
東へ約四〇〇〇キロ、
チリーのサンチアゴから
西へ約三七〇〇キロ。
イースター島は南太平洋に
ぽつんと浮かぶ絶海の孤島である。
はるか五世紀の昔、
インドシナ半島から南太平洋を東へ、
長い長い航海のすえに、
大きなヤシの木におおわれた
この島を発見した人々がいた。
彼らはこの島をラパヌイと呼び、
定住するようになった。
ラパヌイとは、
「広い大地」という意味である。
やがて、彼らは大きな石像をつくり、
自分たちの神様にするようになった。
その石像(せきぞう)はモアイと呼ばれた。
彼らはモアイに祈り、タロイモを栽培し、
魚を捕って、平和な日々を重ねた。
しかし、生き変り、死に変り、長い歳月が
流れた頃、この島は環境破壊に襲われた。
ヤシの森は、乱伐で消え、豊かな土地は
海に流され、島はやせ衰えた。
そこへ、西洋人の船がやってきた。
一七二二年のイースター、
復活祭の日だった。そしてその日から
彼らはラパヌイの島をイースター島と名づけた。
やがて、島の人々を奴隷として売り払った。
十九世紀末、この島が
チリー領となった時、島民の数は
二〇〇名を割っていた。

さらに時が流れて、一九六七年
イースター島に旅客機が
着陸するようになった。少しずつ
観光客が増え始めたこの島に、
私たちが訪れたのは一九七八年だった。
「ホテルが一軒、民宿が十五、六軒。
 人口は、チリー政府の役人と軍人
 そして、住民をあわせて約七〇〇名。
 野生の馬が八〇〇頭。教会がひとつ」
あの当時、この島の現実について
知っていた知識は、それだけだった。
小さな空港には、強い風が吹いていた。
夜店(よみせ)の屋台(やたい)のような、トタン屋根の
吹きさらしの税関でチェックを受け、
古いジープのタクシーで民宿に向かう。
砂利(じゃり)道(みち)が、起伏のある草原の中に
続いている。草原は丈高い草ばかりで
樹木の姿は見えなかった。
民宿の灯(ともしび)は、ほの暗く、簡易ベッドに
入って眼を閉じる。窓ガラスに風の音。
その音に雨の音が混じり始める。
「ふけゆく秋の夜、旅の空の」
そんな歌を思い出しながら、眠りについた。

翌朝、雨は止んでいた。風の中を
ひとり、村はずれの海岸にある
モアイまで歩いた。五メートルほどの高さの、
少し岩が崩れかけた、薄墨(うすずみ)色(いろ)のモアイ。
巨大な顔、高い鼻。しゃくれたあご。
空を見あげる大きな眼。その眼のくぼみに
昨夜の雨が、涙のように光っていた。
風が止むこともなく、吹いている。
ずっと南から吹いてくる。
イースター島の南には、
南極大陸まで、ひとつの島もない。
あるのは海と空だけである。
ふと、思った。
この島には季節風は吹いてこない。
いつも風は南極から吹くのだと。
この島をラパヌイと呼んだ人々も
イースター島と名づけた人々も
すでにいない。モアイだけが
南の風を受け続けてきたのだ。
季節は十月、この島は春だった。

二十一世紀の今日(きょう)、イースター島は
樹木の緑も復活し、明るい現代の
観光施設もととのっている。
けれど、モアイに当たる風の匂いは
きっと変っていないのだと思う。

出演者情報:坂東工 http://blog.livedoor.jp/bandomusha/

shoji.jpg  
動画制作:庄司輝秋・浜野隆幸


Tagged: , ,   |  コメントを書く ページトップへ

一倉宏 2010年1月7日



夢を話せば
             
ストーリー 一倉宏
出演 坂東工 & 西尾まり 

<男>
君だって 夢みていただろう いつもいっていた
夢のない男はいやだ 夢をもてない男に興味はない
<女>
その夢から 何年が経ったと思う?
あなたは いまも夢の話ばかり いいえ 夢のような話ばかり
<男>
夢なんて 食べられないっていうんだろ
そのとおり 夢を食べられるのはバクだけだよな
飲みにいこうよ 「夢の扉」という あのBARへ
僕の夢をグラスに おかわり自由の夢を いくらでも
<女>
そうやってまた 夢の話をするんだ
私は あなたの夢に 酔いすぎていた
それ以上に あなたはあなたの夢に 酔いすぎてしまう
<男>
あの日 君に出会えたことは 夢のようだった
それでもいい足りない 夢の中でみる 夢のようだった
<女>
だとすれば この私は 夢の中の夢の女
あなたが話すことは いつも 夢のまた夢
<男>
夢から覚めても それでもまだ 夢があるから
そしてずっと 君は夢の女だ 僕にとって 
<女>
私の夢は あなたがもう 夢から覚めること
そうしてもういちど ふたりの夢をみること 
<男>
僕はみるべきだろうか 君のみる その夢を
夢を捨てる僕を 僕の夢を捨てて叶える 君の夢を
<女>
私は決して 夢のような日々を 夢みてはいない
夢ではない夢をみたい ただそれだけ
それでも夢だというの こんなにもささやかな夢を
<男>
僕の夢は 僕のみる夢を 君とみることだ
君のみる夢を 僕もみることだ
それが 僕らの夢だったじゃないか
<女>
あなたが夢をみているあいだに なんども朝がやってきた
あなたの夢を覚まさないよう いつもそっと出ていった
夢をみているあなたの寝顔が 私の幸せだったとしても
<男>
君の横顔は 夢のように美しい いまも
<女>
涙がでてきた 
涙で曇って もうみえない 夢は
<男>
今夜は帰ろう 僕の夢の中へ
<女>
夢なら覚めて おねがい この夢は長すぎる
<男>
帰ろう 夢の中へ
<女>
こうして いつまでも私は 夢みつづけていくのか
この長すぎる夢から 覚める朝を
<男>
信じないのか 僕らの夢を
<女>
信じてる 夢ではない あなたなら

 
出演者情報: 坂東工  西尾まり 03-5423-5904 シスカンパニー

shoji.jpg  
動画制作:庄司輝秋・浜野隆幸


Tagged: , , ,   |  コメントを書く ページトップへ

一倉宏 2009年12月3日



流星になれたら
             
ストーリー 一倉宏
出演 坂東工

いつかこの世に さよならをする日が来たら
すでに用を終えた肉体は ただ 灰になるだけ
それを 残さなくていい

できれば 硬い金属の 小さなカプセルに詰めて
宙(そら)高く 打ち上げてくれ
高く 高く 高く
そうして 地上100kmを越えて 宇宙空間へ
最後に 青い地球を眺めた後は…

生前は 大変お世話になりました
本日夜 故人の希望どおり 遺灰を詰めたカプセルが
大気圏に 再突入する予定です

予定時刻は 午後10時10分前後
方角は オリオン座 あるいは牡牛座のあたり
気象条件がよければ 一筋の流れ星となって
みなさまと 最後のお別れができるかと存じます
これをもって 故人を偲ぶセレモニーとさせていただきます
その他 一切のお心遣いは 不要でございます
どうぞ みなさま 冬の夜のひととき
オリオンを目印に 流れ星をお探しくださいませ

…なんて 考える
最後は 流星になれたらいいのに
ひとは亡くなって 星になるともいうけれど
ふるさとの地球 太陽系と 遠く遠く離れたところで
星になっても なんだかさびしいから
母なる地球の 引力と大気で 燃え尽きる
流星になれたら と思う

地球が誕生して 生命がうまれ 人間たちが闊歩するまで
あるいはもっと 宇宙が誕生してから いまのいままで
その 百億 何十億年という時間に比べたら
僕らの一生なんて ほんとうに一瞬の 
流星のようなものに違いない

僕らはもう 宇宙の歴史も 果てしなさも知っている
どう威張っても 僕らの存在は 短い 
そして 小さい

だけど
だからいっそう 切なくも 愛おしいのだけれど
その流星の 一瞬のきらめきが

そして その一瞬のきらめきのうちにも
精一杯の 願いごとを詰め込んで

僕たちは 生きている

おやすみなさい
またあしたも 元気に 会いましょう

出演者情報:坂東工 http://blog.livedoor.jp/bandomusha/

shoji.jpg  
動画制作:庄司輝秋・浜野隆幸


Tagged: , ,   |  コメントを書く ページトップへ