岩本幸子から「ひと言」


*上の写真は日本酒のお店情報をメモする岩本幸子さん

こんにちは、岩本幸子です。
佐倉康彦さんの作品『補色、不調和』を読ませていただきました。
Tokyo Copywriters’streetへの出演は3度目です。
改めまして、どうぞよろしくお願いします!

佐倉さんの作品は、読んでいて何やらエロチックな気分になります。
前回読ませていただいた時もそうでした。
佐倉さんとは普段はどんな方なのかと中山さんに伺ったところ
「ウィスキーを愛する夜行性の方」との事。

なるほどぉ、琥珀色の静寂の世界かぁ…。

妙に納得しちゃいました。
いつも赤提灯でワイワイ呑んでる自分にとっては、とてもスリリング!
ゾクゾクする世界です。

お酒といえば

ワタクシ最近になってやっと日本酒の美味しさに気が付きました。
収録したこの日も日本酒好きの森田さんに、
三軒茶屋にあるとっておきのお店を教えていただきました。
この春は三軒茶屋で舞台の公演があります。
うはぁー楽しみです!
あっ、もちろん、舞台が、ですよ。
日本酒は沢山がんばった最後に取っておく、格別なご褒美なのでございます。

では、その舞台の告知。

イキウメ『獣の柱~まとめ*図書館的人生(下)~』
[東京]5/10~6/2 シアタートラム
[北九州]6/9 北九州芸術劇場 中劇場
[大阪]6/14~6/16 ABCホール
イキウメHPhttp://www.ikiume.jp/index.html

北九州と大阪でもやります。
お時間ございましたら、是非。
(岩本幸子)


*写真は森田に日本酒の店を取材している岩本幸子さん

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佐倉康彦 2012年7月15日

ナイトゲーム

    ストーリー 佐倉康彦
       出演 岩本幸子

東京の夜は、
明け透けている。
遠慮がない。
水銀灯や
メタルハライドの光の束は、
見せなくてもいいものまで
見せつける。
そして、
見たくもないものを
目の当たりにして、
途方に暮れる。
自然光の下なら、
誰にも気づかれず
隠しおおせるはずの
わたしのそれも、
今夜、曝かれる。
それは、
あのひとのそれも
たぶん同時に
曝かれる、ということ。
約束の時間は、
もう、とうに過ぎていた。
久しぶりのスタジアム。
ゲートの入り口で
わたしはあのひとを
待っている。
切れかかった蛍光灯が、
気の早い秋の虫のように
耳障りな濁った音を立てながら
わたしの姿を不規則に、
冷たく、曖昧に、照らす。
国際Aマッチの
ホイッスルが鳴って
随分と経つ。
ほんの十数メートル先の
7万人近い大歓声が、
とても、とても遠い。
今、ピッチの選手たちを
照らしている
スタジアムの光線なら
わたしのそれも、
あのひとのそれも
隠せるのではないかと思った。
色も性質も違う
いくつかの光を
組み合わせた
カクテル光線のもとなら、
まだ、
あのひとといることが
できるかもしれないと、
思っていた。
顔を上気させた観客たちが
ゲートから吐き出されてくる。
そんな群れの流れに
わたしも紛れ込む。
あのひとは、来なかった。
試合の熱を、
そのまま帯びた観客たちの
人いきれに
猥雑に蹂躙されながら、
わたしは、
タイムパーキングに流れ着く。
そして、
クルマの中に怖ず怖ずと
逃げ込む。
こんな裏路地にある
パーキングを照らす
心許ない光にも
わたしのそれは
どうしようもなく
炙り出されてしまうから。
西に向かう
わたしのクルマは、
じきに、
東京を引き剥がすだろう。
長い長いトンネルの中で、
わたしは、
少しだけ安堵する。
あのひとに
曝かれずに済んだ
わたしのそれは、
トンネルの中に溢れる
ナトリウム灯の、
オレンジ色の光に
塗り込められて、
見ることはできない。
わたしの汚れきった
塵や芥を
浮かび上がらせることなく、
わたしの輪郭だけを
捉え続ける光。
人の目は、
こんな色を
強く感じるように
できているんだ。
強く、感じる。
それは、
何か他のものを排除する、
ということなのかもしれない。
あのひと、という
何か他のもの。
「トンネルの中のライトは、
紫外線波長が少ないから
虫も寄ってくることはないの」
少し前に、
そんなことを
あのひとから聞いたことを
思い出した。
きっとあのひとも、
わたしを
追ってくることはない。
あのひとと…
あの女とふたりで行った
湖の近くにある旧いホテルの
あのバーは、
まだ、開いているだろうか。
女同士の、
長いお別れには、
下品で甘ったるい
ライム・コーディアルで
つくったショートがいいと
思っている。_

出演者情報:岩本幸子 劇団イキウメ http://www.ikiume.jp/index.html

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西島知宏 2011年11月13日



「あの日小さく燃えていたもの」

           ストーリー 西島知宏
             出演 遠藤守哉岩本幸子

女:私は、何も燃やしていなかった。
男:彼女は今日は、何を燃やしているんだろう。

(回想)
女:あれは確か、冬だった。初めてできた彼との想い出の品を、
  私は燃やしていた。
男:彼女と初めて会ったのは、冬。実家の2階から夜中に
  公園で焚き火をする少女を見つけた。

SE パチパチパチ(焚き火の音)

女:私は女子高生だった。
男:彼女はセーラー服だった。

女:しばらくして学ランを着た同世代らしき男の子が声をかけて来た。
男:夜中に公園で焚き火をする同世代の少女、心配になって声をかけた。

女「何を燃やしてるんですか?」(少し若く感じる声で)
男:確かそう声をかけた気がする。

女:振り向いた私は、泣いていて声が出せなかった。
男:振り向いた彼女は、泣いていた。

女:私の泣き顔を見た彼はそれ以上何も言わず、手紙や、想い出の写真が燃え終わるのを最後まで見ていた。
男:かける言葉が見つからず、ただ、声をかけた手前すぐに立ち去るのもどうか、と最後まで眺めていた。
女:燃え終わると私は何も言わずその場を立ち去った。
男:燃え終わると彼女は何も言わずに去って行った。

女:つぎ彼と会ったのは大学生の時だったろうか。
男:5年ぶりに見かけた彼女は少し大人っぽい化粧をしていた。
女:私はバイト先で知り合った彼の二股を知り、誰にも会わない隣町のあの公園で彼との想い出の品を燃やしていた。
男:彼女はまた、泣きながら色々なものを燃やしていた。

女:また失恋か、彼はそう思っていたのだろうか。
男:失恋の度にモノを燃やす子なのか、僕はそう思っていた。
女:彼は5年前と全く同じように、私の想い出が燃え終わるのを見ていた。
男:燃え終わるとまた、彼女は黙ってその場を後にした。
女:公園を出るとき一度振り返って彼を見た。
男:遠くで彼女が振り返った気がした。気のせいかもしれないけど。

女:そのつぎ彼と会ったのは私が最初の結婚に失敗した時だった。
男:彼女は手紙や写真と一緒に、高そうな毛皮を燃やしていた。
女:金持ちの男と結婚するのが幸せ、そう勘違いしてた。
男:彼女はお金持ちと結婚し、離婚したのだろうか。そう思っていた。
女:泣き虫なのは大人になっても変わらなかったな。
男:泣き顔は10代のあの時と同じだったな。
女:少し老けた彼は、あの時と同じように何も話さず私の隣にいてくれた。
男:それが僕たちのルールの様に感じられた。

女:それから何度か同じような事があった。
男:彼女とは一度も言葉を交わさなかった。
女:彼と会うのはいつも私の恋が終わった時。
男:彼女が公園に現れるのはいつも恋に破れた時。たぶん
女:あの人は誰なんだろう。
男:あの子は誰なんだろう。

女:ある時から30年程、私は公園に行かなくなった。
男:いつからか彼女を公園で見かける事はなくなった。
女:2度目の結婚で、私はさらに遠い所へ引っ越した。
男:その後、僕は結婚し、相変わらず公園の脇の家で家族と暮らしていた。

女:65歳の誕生日の3日前、私は2番目の夫を病気で亡くした。
男:65回目の冬、僕は25年近く連れそった妻を亡くした。

女:ある日ふと、彼を想い出した。
男:一人になってから窓の外を眺める事が多くなった。
女:泣く時にだけ行った公園。
男:泣き顔しか知らない彼女。
女:私は久しぶりにあの公園に行ってみたくなった。
男:彼女は今頃何をしてるんだろう。

女:失恋する度に来ていた公園。まだ残っていた。
男:ある夜、僕は老眼鏡越しに懐かしいものを目にした。

SE パチパチパチ(焚き火の音)

女:何も燃やしてはいなかった。こうやってるとまた横に来て、
  そっと佇んでくれる気がした。
男:後ろ姿の彼女。あの頃のように泣いているんだろうか。
女:ただ、黙ってそばにいてくれた彼。私は火の暖みに紛れ、
  彼の優しさを見つけられなかったのかもしれない。
男:思い切ってあの日と同じ言葉をかけてみた。

男「何を、燃やしているんですか?」
女「!」
男:肩の動きでハッと驚きを表した彼女が振り向いた。
  初めて涙のない彼女だった。
女「え?」
男「お久しぶりですね」
女「・・はい。その節はどうも」
男「それ、何燃やしてるんですか?」
女「あ、これ。・・何も」
男「何も(笑)?」
女「はい」
男「・・・」
女「あ、いや。燃やしてます。・・恋心?」
男「ふふふ。何ですかそれ(笑)」
女「あ、いや・・」
男「あったかいですね」
女「え」
男「あったかいですね、これ」
(少し間があって)
女「はい、とっても(噛み締めるように)」

SE:パチパチパチ(焚き火の日の音が少し大きくなる)

出演者情報:遠藤守哉 青二プロダクション http://www.aoni.co.jp/
      岩本幸子 劇団イキウメ http://www.ikiume.jp/index.html

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岩本幸子から「ひと言」

岩本幸子です。初めまして。
津軽鉄道
あの日小さく燃えていたもの(西島知宏・11月13日公開)」
に出演させていただきました。

11月に入り、いよいよ寒くなってきました。
毎年の事なのに、冷え症の私は少々動揺します。

すると

温泉に行くんだ!もちろん大切なあの人と!

というような、尊いトキメキが胸に起こります。
これは本当に尊いです。それだけで、元気がでます。

はい!
今回読んだ作品は、正にトキメキでした。
しっぽり、旅に行きたくなりました。
青森に行きたいけれど、やっぱり近場の箱根かな~。

岩本幸子http://www.ikiume.jp/ikiumen_iwamoto.html

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津軽鉄道

津軽鉄道

           ストーリー 葛西洋介
              出演 岩本幸子

津軽平野の真ん中を走る、
津軽鉄道に乗りました。

2両編成の電車に、2名のガイドさんが乗り込み
停車する各駅や風景について
津軽訛りでていねいに解説してくれます。

「あ、虹が出ていますよ。」
という、ガイドさんの声にも、乗客は珍しげに反応します。
私もつい、写真をとってしまいました。
旅先では、虹も特別なものに見えます。

冬は「ストーブ列車」が走る津軽鉄道ですが、
今年の春は合格列車、夏は七夕列車に風鈴列車が走りました。
そして秋には
駅員さんが毎年孵化させている鈴虫を乗せた
「鈴虫列車」が走りました。

来年はどんなアイデアで楽しませてくれるのか。
地元の人も、遠くから来る人も
みんなで楽しみにしています。

津軽鉄道HPhttp://tsutetsu.web.infoseek.co.jp/

津鉄沿線散策マップhttp://feeler.jp/tsutetsu-ensen-map/

津軽鉄道Twitterhttp://twitter.com/#!/tsutetsu

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