ストーリー

中山佐知子 2015年6月28日

1506nakayama

シチリア島は一年365日

     ストーリー 中山佐知子
        出演 大川泰樹

シチリア島は一年365日のうち360日が晴天の島だが
オリーブの木はこんな乾いた気候と仲良しで
ところによっては千年も長生きをする。
千年も昔といえば、島はイスラムの領土だった。
当時のイスラムは世界の先進国で
新しい農業技術が持ち込まれ、ヨーロッパにない果物が実った。
政治はシンプルで、税金は公平だった。
いい時代に生まれたとオリーブの木は思っただろう。

それからバイキングの末裔がやってきてシチリア王国を築いた。
彼らは少なくとも文化や言語、宗教に関しては寛容だった。
彼らはフランス語をしゃべっていたが
ギリシャ語もアラビア語も国の言葉と認めた。
しかし100年もするとお家騒動が起こり
ドイツの皇帝がシチリア王になった。

13世紀にはフランスとスペイン、イタリアが
シチリアをめぐって争った。
問題は、たぶんここから先だ。
シチリアは、ピンボールのように争いのなかで転がりつづけ、
搾取された。

オリーブの木にとってご領主さまが誰でも関係なかったが
それはオリーブの世話をする村人にとっても同じことだった。
どのご領主さまも年貢には厳しかったし、
過酷な取り立て人がやってきては
払えないと木を伐られたり家畜を殺されたりもした。
しかし、その取り立て人が年貢のピンハネで財を蓄え、
村のボスにのし上がると、
こんどはご領主さまに逆らって実質的な権力を握った。
これがシチリアのマフィアのはじまりだそうだ。

19世紀の終わり頃、
シチリアはイタリアに併合されたが
貧しくて学校へ行けない子供らは
イタリア語をしゃべれず、読み書きもできず、
手っ取り早い出世を夢見てマフィアに身を投じた。

ゴッドファーザーⅡには
主人公が両親と兄を殺したシチリアのマフィアに
復讐をするシーンがあるが、
そのとき主人公の表向きの商売はオリーブオイルの輸入業者だった。

出演者情報:大川泰樹(フリー) http://yasuki.seesaa.net/

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直川隆久 2015年6月21日

1506naokawa

アレハンドロ

          ストーリー 直川隆久
             出演 遠藤守哉

なあ、エミリオ。
聞いたかよ。
アレハンドロのことさ。
アレハンドロの、オリーブオイルのことよ。
知らないか?

アレハンドロは毎日、きっかり40度にしたオリーブオイルで
バスタブを一杯にして、そこに浸かるんだとよ。
しかも、イタリアから直輸入のエキストラバージンだ。
一回使った油は、捨てちまうそうだ。

毎日、風呂桶いっぱいだぜ?
べらぼうなこった。

あ?
俺も最初に聞いたときは、冗談だと思ったさ。
イワシの缶詰か、ってよ。
はっは。
けど本当らしい。
だからだよ。
だからアレハンドロの肌はあんなにピカピカなんだ。

まったく、出世する奴は、考えることが違うもんだ。
なあ?
アレハンドロは親分のおぼえがめでたいから、
ずいぶんおいしい餌場を幾つも預かってる。
たいした野郎だよ。
チンピラ時分は、俺おまえの仲だったが。
今そんな呼び方したら、どえらいことになるな。
はっは。

いやあ、でも正直、オリーブオイルの件は、
ちっとばかしやりすぎかなとも
思うね。
俺やおまえたちが体張って守ってる商売のあがりを、
そんなことに使っていいもんかってね。
エミリオ。
このあいだ、ホセの店を襲ったとき、
アレハンドロはおまえにいくらよこしたよ。

…なんと。
少ねえな。
そりゃあ少ねえ。
おまえのあの働きにしちゃあ。
分かってねえよ、アレハンドロも。
おまえがいなけりゃあの仕事、
あそこまで上手く運んだはずがねえのに。

おっと。
俺みてえな三下が偉そうなこと言う資格はねえんだが。
おまえといると、ついついな。

何?
おまえもそう思う?
おい。
滅多なことを言うなよ。
アレハンドロは耳ざといんだ。
ガキの頃から、悪口には敏感でな。
…思い出すねえ。
ガキの頃、奴さんに、
“おまえのおふくろの歯茎はなんであんなに黒いんだ、
 靴墨でもパンに塗って食ってるのか”って言ってやったらよ、
泣いてこっちに殴りかかってきたことがあった。
はっは。

なあ、でも、そいつが今オリーブオイルの風呂に入ってるんだ。

おまえたちが命がけで稼いだ金でだ。
なんだか、やりきれねえよ。

ところでおふくろさんの病気はどうだい。
そうか。
まだしばらく物入りだな。

何?
ああ。
確かにアレハンドロは、礼を言わねえ男だな。
あのときもそうだった。

労いの言葉、一言でいいんだが。
それが分からねえんだ。

俺がなんだって?
馬鹿野郎、俺は子分なんて持てるガラじゃねえ。
買いかぶるなよ。

まあ、飲め。

おっと、どこへ行くんだ。
アレハンドロの所?
馬鹿野郎。
待て。

…待つんだよ!

そんな、血走った目で行ってみろ。
返り討ちにしてくれと頼んでるようなもんだぜ。
おふくろさんの顔を思い出すんだ。

わかった。
こうしないか。
今度の件のおまえの取り分、もう少し増やせねえか、
アレハンドロのところに一緒に行って掛け合おうじゃないか。

おふくろさんには、今まで世話になったんだ。
それぐらいのことはさせてくれよ。

善は急げだ。
明日の朝11時にしないか。
よし。
忘れずにな。
くれぐれもはやまるなよ。

ああ。
先に帰るぜ。
カミさんにどやされる。
はっは。
おやすみ。

………

もしもし。
もしもし?
アレハンドロかい。

おれだよ。

エミリオを知ってるだろ?
そうだ。アマランタ婆さんの下の倅さ。

あいつは、ちと危ないな。

いや、ほんとの話さ。
おまえさんのこと、いろいろと言っていたよ。
ああ、面(つら)には出さないが、大分くすぶってる。
早いほうがいいな。

そう思ったんで、
明日、11時におまえさんとこに行くように話しておいたよ。
あとは任せる。
礼には及ばんぜ。
ま、おまえさんが礼を言うとも思えんがね。
へっへ。

あ、いや…待てよ。
貰いたいものがあるんだ。
え?
たいしたもんじゃない。

オリーブオイルを一本くれよ。
そう、オリーブオイルさ。
一本でいい。

…ヘンかね?
そんなことないだろう。

なに、うちのカミさん、最近肌の調子が悪くてな。
へっへへへ。

出演者情報:遠藤守哉 青二プロダクション http://www.aoni.co.jp/

 

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佐倉康彦 2015年6月14日

1506sakura

林を抜けて

       ストーリー 佐倉康彦
          出演 清水理沙

    橋の架かっていないところがいいと思いました。
    もちろんトンネルでつながってもいない。
    そんな島にすると決めていました。
    今のわたしには、
    本土から切り離された場所が必要でした。
    それほど気安く行き来のできない島。
    クルマでも自転車でも徒歩でも行けない、
    船でしか渡ることができない、ということが
    わたしの気持ちと立場を
    すこしだけ助けてくれるのではないかと
    勝手に思い込みながら。
    そして、
    そんな場所に向かうじぶんに軽く酔っていました。

    フェリーから見える瀬戸内の海は、
    少しも悲壮感がなくて
    穏やかで温かくて。
    擦り切れささくれ立ったわたしのなかのなにかを
    静かに撫でてくれているような、
    そっと手当をしてくれているような感じで…
    期待していた結界となるような強さも、拒絶もなく、
    どちらかと言えば
    曖昧に甘くひらけたやさしさばかりでした。

    同じフェリーに乗り込んだ観光客たちも
    一様に目を細め
    僅かに笑みを湛えながら、
    閉じた海を遠い目で眺めては、
    スマホの電子的なシャッター音を響かせ
    ときおり満足げに空などを
    見上げたりしていました。
    そんな風景の中にわたしも溶け込んでいるのかと思うと
    それも存外、悪くはないのかもしれないと考えました。

    乗船する前から、
    わたしの左手をギュッと強く握りしめたままの
    小さな右手は、
    少し汗ばみながら
    石塊のように硬く閉じられたままでした。
    その小さな手と同じように、
    かたくなに結ばれた口元は、
    唇が白くなるほど真一文字に閉ざされ
    一切の言葉も発することはありませんでした。
    そして、
    その小さなふたつの瞳は、
    海面が照り返すいくつもの光の粒を
    怒ったように凝視したまま
    けっしてわたしを見つめることは
    ありませんでした。
    もう一方の腕で抱きかかえられた
    手足の長い薄汚れたゴム人形の瞳だけが
    キラキラとわたしを見上げ、
    その口元は小さく微笑みを投げ掛けてくるのでした。

    わたしの手を
    痺れるほど強く握りしめ、
    怒気を孕んだ瞳で光の海を凝視する

    柔らかくて甘い匂いのする
    もうひとりの小さなわたし。
    この子は、
    今のじぶんの境遇を
    どう思っているのかということは、
    わたしの左手が痛いほど感じていました。

    あと数分で島に接岸するというときのことでした。
    フェリー乗り場の少し先に、
    山というよりは小高い丘のようなものが
    見えてきたときのことでした。
    固くにぎられた小さな掌から力がふっと抜けました。
    わたしは、
    そっとちいさな横顔をのぞき込みました。
    その丘の緑のせいなのか、
    ちいさなふたつの瞳にあった刺々しさが
    ほろほろと抜け落ちて行くようでした。
    わたしの瞳からも
    なにかが流れて落ちてゆきました。

    わたしは、
    あの丘の近くに部屋を借りようと思いました。
    丘に至るまでのあの林の道を抜けて
    この子と手をつないで
    ずっといっしょに昇っていこうと決めていました。

    その淡い淡いみどりいろのオリーブの林の先にある
    なにかを探しに。
                       了

出演者情報:清水理沙 アクセント所属:http://aksent.co.jp/blog/

 

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勝浦雅彦 2015年6月7日

1506katuura

オリーブ

      ストーリー 勝浦雅彦
         出演 長野里美

病室の扉をあけた私は、眠っている祖母を見て愕然とした。
髪は抜け、肌は黒ずみ、右頬に大きなしみができている。
体中に差し込まれた無数のチューブが、彼女をこの世に留めていた。

「もってあと数日です」、と担当医は母に言ったそうだ。
大学出たての若い女医にまるで「いい天気ですね」と言うような口調で
そう告げられ、母は戦う意思のようなものを失くしたのだという。

「最近よく言ってたんよ。貴美子の夢を見るって」
私は母の呟きに答えず、祖母の顔を見つめていた。

私が離婚して、別の人と一緒になる、と言ったとき、
緞帳が降りたように、さあっと変わった祖母の顔色を今も覚えている。

それが、世間で言うところのW不倫であり、
相手が15歳も年上であったことが、当然のごとく我が家の問題など
軽々と飛び越え小さな街の大事件になった。

彼は測量技師であり、街の再開発工事のために長期で滞在していた。
私は小さな工務店に勤めていて彼と出会った。型紙のようによくある話だ。

不思議なことに、私も彼もお互いの夫婦関係に問題はなかった。
どちらも子供はいなかったが、セックスレスでも、冷え切ってもいなかった。
ただ、そうあるべき相手に出会ったとき、
あらゆる事情を踏み越えて二人は共同して事にあたるべき、
という認識が瞬時に出来上がったのだ。

私は彼のことを「相棒」と呼んだ。
恋人とか夫婦とか、
ショウケースの中のハンバーグやケーキくらいわかりやすくて
確かなものに意味を失った私たちは、
自分たちにしかわからないルールを決めて一緒に守っていく、
というかたちでしかその関係を続けられなかったのだと思う。
私たちはあやふやなものなかにある確かなものを必死でたぐりよせようとした。
それがこんがらがった毛玉に二人して手をつっこむような
愚かな行為だったとしても、私たちは真剣だったのだ。

当時、祖母はとにかく泣いた。
離婚なんてとんでもない、我慢がたりないんじゃないの、
感謝が足りないんじゃないの、そんなことをして神様が許すと思うの、と。
祖父をはやくに亡くし、
小学校の教師をしながら母を育てた祖母は、敬虔なクリスチャンだった。
毎週末、必ずミサに参加していたし、
私も時どき連れて行かれた。
カトリックの教えでは離婚は禁じられていた。

私の離婚が成立すると、私と相棒は街を出た。
それ以来、私は祖母と一度もつながりをもっていない。

翌日の朝、母は着替えを取りに帰り、私は祖母と二人きりになった。
空の表情はすっかり機嫌を取り戻していたが、
病室の中には湿った空気があふれ鼻腔をついた。
それは紛れも無く、死の匂いだった。

部屋の外窓にはいくつかの大ぶりの鉢植えが置かれていた。
珍しいことにオリーブの木があった。
濃い緑が、日の光に揺れている。

祖母からよく聞かされた、「ノアの方舟」を私は思い出した。
世界を覆う大洪水から逃れるために、
ノア一家と動物たちは男女のつがいになり方舟に乗り込む。
そのノアたちに新世界の到来を告げたのが、
オリーブの葉をくわえた鳩だった。
話を聞きながら、私はいつも疑問に思ったものだ。
その乗り込んだつがいの、
組み合わせが間違っていたらどうするの・・・。

「・・・さん、・・・さん」
振り向くと祖母の口がひらき、微かな声が漏れている。
慌ててベッドに駆け寄った。
「おばあちゃん、私よ。どうしたの、苦しいの?先生?」
次の瞬間、祖母の唇が動き、名前がこぼれた。
私は、たしかにそれを聞いた。

次の日、付き添いの母が眠りに引きずり込まれている間に、
祖母はこの世を去った。一瞬の悲しみのあとに、
手続きの嵐がやってきた。
母は速記官のように書類を記入し、判断をくだしていった。

病室の片づけを終え外庭に出ると、視界がぼやけた。
そこには東京にいるはずの「相棒」がいた。
ベンチに座り、シャツの裾をまくって鳩に餌をやっている。
どうして偶然のように、この人はいつも私の側にいるのだろう。
今、私はこのさえない年上の男を愛おしくただ会いたい、
と願っていたのだ。

「おばあさん」と彼は言った。
「うん、今しがた」
そう、と餌をやる手を止め、彼は深く溜息をついた。
「ひと目、と思っていたけどね。入る勇気なかった」
「うん」

私は、ポケットに手を突っ込み、
さっきまで一つの命を抱えていた白い病棟を見上げた。

最後に祖母が口にした名前。それは、祖父のものではなかった。
知らない名前だった。
私は別れの一歩手前で、はじめて祖母のことを理解したような気がした。
祖母は、誰と方舟に乗ったのだろうか。
それがあるべき「つがい」であることを私は祈った。

病棟から出てきた母が相棒をみとめ、会釈をした。
慌てて頭を下げた相棒の手から残りの餌がこぼれ落ちると、
鳩が一斉に飛び立った。

出演者情報:長野里美 株式会社 融合事務所所属:http://www.yougooffice.com/

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中山佐知子 2015年5月31日

1505nakayama2

クチベニが死んだ

     ストーリー 中山佐知子
        出演 大川泰樹

クチベニが死んだ。
死んだ仲間は
たいがいこのあたりの浜辺に打ち上げられるが
クチベニは小さいし、目立たないから
誰も気づいてやれないかもしれない。

クチベニは外から見ると
爪の先くらいの白いちっぽけな貝だった。
固くて分厚い殻に閉じこもっていた。
艶も模様もない、ただ白いだけの制服を着て
しっかり口を閉じて生きてきたのだと思う。

クチベニを見ていると
僕は修道院のシスターを思い出すことがあった。
人生に多くを望まず
海の底で生きるために食べ、食べるために生きていたに違いない。
誰かにかまわれることがほとんどなかったし
たぶん死ぬときもひとりで死んだのだろう。

死んだクチベニの残した貝殻は
ぐるぐると波に遊ばれ、砂浜に運ばれる。
そして、それを拾った人が気づくのは
貝の内側にすっと引かれた赤い紅の色だ。

生きているときは決して見せなかった口紅の色。
表からは決して見えなかった色。

女は自分にしか見えない
もうひとつの顔を持っていると気づいたのは
その赤い色を見つけたときだったが、
赤という色の鮮やかさを知ったのも同じときだった。

 
出演者情報:大川泰樹(フリー) http://yasuki.seesaa.net/

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中川英明 2015年5月24日

1505nakagawa

     ストーリー 中川英明
        出演 地曵豪

ヤア、オ待タセ! 待ッタカイ。
会社ヲ出ル直前ニ、上司ニ捕マッテシマッテネ。
折角ノデートナノニ、遅レテ御免ネ。

トコロデ、ハイ! コレ、プレゼント。
キティチャンノ、ヌイグルミ。
前二君ガ好キダッテ言ッテタカラサ。
タマタマ通リガカッタ、店デ見カケテネ。
コンナニ大キイノハ、珍シイカラ、君ガ喜ブト思ッテ。

トコロデ、アノ話、考エテクレタカナ?
ウン、ソウ。僕ト、オ付キ合イシテ欲シイッテ話。

エ? ダメ? オ付キ合イハ無理? 出来ナイッテ?
ド、ドウシテ?

……エ? 
ダッテ、アナタ、本当ハロボットデショウッテ?

ハハハ、一体何ヲ言ッテルンダイ。
コノ僕ガ? ロボット? 

ソンナ訳ナイジャナイカ。
僕ハ、レッキトシタ人間ダヨ。

ウン? マズ、シャベリ方ガオカシイ? ソウカナ。
言ワナカッタッケ、僕、帰国子女ナンダヨ。
海外生活ガ長カッタカラ、日本語ガ片言ナンダ。
エ、片言ノ意味ガ違ウ?
ソウ言ウテイストノ片言ジャナイッテ?

ソレニ、動キガ、ギクシャクシテル?
アト、歩クタビニ
体内カラ、モーター音ガ響イテ、
ウィンウィン、ウルサイッテ? 
ハハハ、ソレハモータージャナクテ、キット筋肉ノ音サ。
ン? 普通ノ人間ハ、筋肉ノ音モ、体内カラハ響カナイ?
アレ? 人間ッテ、ソウダッタッケ?

ソレニ、コノ前、僕ガ
深夜ノガソリンスタンドデ、
1人デ、コッソリ、ガソリンヲ飲ンデイタッテ?
口ニ、ノズルヲ差シ込ンデ、燃料ヲ給油シテイタダロウッテ?
シカモ、ソレガ、ハイオクダッタッテ?

フーン、ソウカ。ソンナコト、アッタカナア。
チナミニ、アクマデ、参考マデニ聞クンダケド、
今ノ話ッテ、
ハイオクナノガ問題ニナッテルワケジャナイヨネ?
軽油ダッタラ許サレルッテ話? …ジャナイ、ヨネ。ヤッパリ。
イヤ、一応聞イタダケ。

マア、トモアレ、
ソノ、ガソリンスタンドデ君ガ見タッテ人ハ、
キット他人ノ空似ジャナイカナ。

ダッテ、知ッテルカイ?
人間ニハ、自分ト全ク同ジ顔ヲシタ人ガ
コノ世界ニ、アト2人ハ、イルンダッテサ。

ダケド、考エテミルト、変ダヨネ。
ドノ人ニモ、自分ト同ジ顔ヲシタ人ガ、
アト2人イルワケデショ。

ト、言ウコトハダヨ、
モシ今、地球ノ人口ガ、全部デ72億人イルトスルト、
人ノ数ハ72億デモ、顔ノ数ハ、全部デ24億種類シカナインダ。
コレッテ何ダカ変ダヨネ。ハハハ。
人数ノ割ニ、顔ノラインナップガ、不足シテルヨネ。

エッ、顔ト言エバ、
何ヨリ、僕ノ顔ガ一番嫌?
ソノ妙ニ人間ニソックリナトコロガ、見テイテ気持チガ悪イッテ?
ソックリモ何モ、人間ダカラネエ。

ヘエ、ソウ言ウノヲ「不気味ノ谷」ッテ言ウンダ?
フムフム…
ロボットノ顔ガ、人間ノソレニダンダン近ヅイテ行クトキ、
最初ノウチハ、似テクルホドニ、親近感ガ増スガ、
アル一点ヲ超エルト
急ニソレガ、不気味ナモノニ感ジラレルヨウニナル。
ヘエー、ソウ言ウ現象ガアルンダネ。

デ、僕ノ顔デ、ソノ「不気味ノ谷」現象ガ発生シテルッテコト?
ソリャ心外ダナア。

ダカラ、オ付キ合イハ無理? 気持チ悪イッテ?
チョット待ッテヨ。ウーム。

……分カッタ。
君ガナゼ、僕ヲ、ロボットト思ッテルカハ解セナイケド
愛スル君ノタメダ。
少シ待ッテテネ。チョット今、トイレニ行ッテクルカラ。

…………。

ヤア、オ待タセ!
ドウカナ。トリアエズ、今マデノ顔ヲ、丸ゴト首カラ外シテ、
サッキノ、キティチャンノ顔ヲ、代ワリニ乗セテミタンダケド。

エ? 人間ハ、顔ヲ取リ換エタリ出来ナイッテ? 
ア、 ソウダッタッケ。ジャア嘘、嘘。今ノ無シ。忘レテ。
メモリーノ消去…モ、人間ッテ出来ナインダッタッケ?

出演者情報:地曵豪 http://www.gojibiki.jp/profile.html

 

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