
つくりかたをきかれることがときどきあるので
こちらにひっそりと書いておくことにしました。
全部読むときはこのまま下へスクロール。
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下の写真をクリックしてください。
下に準備中とあるものは非表示になっています(中山佐知子)

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「東北へ行こう」は
山形の東北芸術工科大学の授業がきっかけで
はじまりました。
東北の良さをひとりでも多くの人に
知ってもらいたい。
そしてたくさんの人に東北を旅してもらいたい。
そんな願いで出発した企画です。
CMもエッセイも紀行文もお知らせも
音声のあるものもないものも、東北をここにまとめています。
最新版から見る:http://www.01-radio.com/tcs/columnindex/tohoku
年代別にみる:
東北へ行こう2018:http://www.01-radio.com/tcs/archives/30174
東北へ行こう2017:http://www.01-radio.com/tcs/archives/29069
東北へ行こう2016:http://www.01-radio.com/tcs/archives/27999
東北へ行こう2015:http://www.01-radio.com/tcs/archives/26848
東北へ行こう2014:http://www.01-radio.com/tcs/archives/25897
東北へ行こう2013:http://www.01-radio.com/tcs/archives/24314
東北へ行こう2012:http://www.01-radio.com/tcs/archives/21722
東北へ行こう2011:http://www.01-radio.com/tcs/archives/19200
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イスタンブールの孤独
トルコのイスタンブールにいる。
時刻は25時。
場所はブルーモスクと呼ばれているスルタンアフメトモスク前の広場。
さっきまで観光客で賑わっていたのが嘘みたいに誰もいない。
18歳。1人旅。
なにも怖いものがなかった。
好奇心しかなかった。
それがいけなかった。
東京からイスタンブールに到着して、
5時間で10万円を失った。
イスタンブールをスタート地点に
1ヶ月かけて中東をまわる予定だった。
残り9万円。
ギリいけるのか。いけないのか。
クレジットカードは持っていない。
スマホも持っていない。日本へ連絡手段もない。
手持ちのお金だけで生き抜かなければならない。
何がいけなかったのか。
足りない頭で考える。
いくつか分岐点があった気がする。
20時。ブルーモスク前の広場で
1人イスタンブール名物のサバサンドを食べていた。
そこにキプロス人の2人組がやってきた。
「一緒にケバブを食わないか?」
焼いたサバだけだと味気がないと思っていたので、
一緒にケバブを食べにいくことにした。
まずここが1つ目の分岐点だった。
知らないキプロス人2人組についていってはいけない。
北海道の母にも上京するときに、
知らない人についていってはいけないと言われていた。
きっと僕の性格を理解したうえで言ってくれていたのだ。
忘れていた。
イスタンブール市街の飲食店でケバブを食べ終わったときだった。
またキプロス人の2人組は言う。
「ケバブも食べたし、一緒に踊らないか?」
食後の運動がダンス。
オシャレだなと思った。
悪くない。一緒に踊ることにした。
たぶんここが2つ目の分岐点だった。
まだ引き返すことができた。
「ダンスフロアが近くにある」と、
キプロス人2人組がいうのでついていく。
路地をどんどん薄暗いほうへ進んでいく。
街灯などない。キプロス人は笑う。
暗闇のなか白い歯だけがやけに目につく。
「ここだ」と連れてこられたお店のなかに入る。
お客さんはいない。代わりにボブサップのような男が5人くらいいる。
もしかしたらこれが最後の分岐点だったかもしれない。
走って逃げればよかった。
入店してしまった。
「ここに座れ」と言われ、席につく。
テーブルにはシャンパンやビールの空いた瓶やグラスが置いてある。
「これはお前が飲んだ」と言われる。
いやいやいや、飲んでいないのだけど、と答える。
というか帰らせてもらいます、と立ち上がる。
そんなかたいこと言わずに踊ろうぜ、と
キプロス人2人組とボブサップ5人に囲まれる。
身体をまさぐられる。
身ぐるみをはがされる。
財布を奪われる。
そこには1ヶ月の全予算19万円が入っている。
キプロス人がその19万円を掴む。
これがなくなったら全てが終わる。
僕もつかみかかる。
19万円が空中に舞う。
スローモーションに見える。
ダンスフロアに舞い散る19万円。
それに群がるキプロス人2人とボブサップ5人。
そして自分。
どうにか拾い集めた9万円を握りしめ、店を飛び出す。
深夜のイスタンブールの街を駆け抜ける。
どうやって帰ったかもわからない。
入国してからここまで数時間。
スタート地点のブルーモスクに戻ってきた。
そういう競技があればオリンピックに出られるくらいの
スピードでお金を失った。
ケバブを経て、
ダンスを経たという芸術点も加点対象になるかもしれない。
モスクから点数の書かれたフリップを持った審査員たちが出てくる。
10点、10点、10点、10点。ワールドレコードです。
ブルーモスクから特大の花火が打ち上がる。
なんてことは、もちろんない。逃避するのをやめた。
気づくとまばらだが人が歩き始めている。
街中に礼拝時間の呼びかけであるアザーンが大きな音で流れ、
モスクで礼拝がはじまった。
夜明け前のやわらかい光に包まれたブルーモスクと
礼拝をする人を眺めていたら、
もう少し旅をしていたい気持ちにもなってきた。
あれだけ痛い目にあったのにすぐに忘れる。
たぶんこんなんだから何度も痛い目を見るのだろう。
1ヶ月後、エジプトのカイロでアラブの春という革命に巻き込まれて、
パスポートも全て盗まれて帰国できなくなることを
僕はまだ知らない。
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出演者情報:地曵豪 http://www.gojibiki.jp/profile.html
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