Author Archives: tcs_saito2022

酒の肴メニュー


つくりかたをきかれることがときどきあるので
こちらにひっそりと書いておくことにしました。

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kon
kobu
waribosi

「東北へ行こう」について

「東北へ行こう」は
山形の東北芸術工科大学の授業がきっかけで
はじまりました。
東北の良さをひとりでも多くの人に
知ってもらいたい。
そしてたくさんの人に東北を旅してもらいたい。
そんな願いで出発した企画です。

CMもエッセイも紀行文もお知らせも
音声のあるものもないものも、東北をここにまとめています。

最新版から見る:http://www.01-radio.com/tcs/columnindex/tohoku

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東北へ行こう2018:http://www.01-radio.com/tcs/archives/30174
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東北へ行こう2015:http://www.01-radio.com/tcs/archives/26848
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東北へ行こう2011:http://www.01-radio.com/tcs/archives/19200
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田中真輝 2026年3月29日「桜と鉄パイプ」

「桜と鉄パイプ」 

   ストーリー 田中真輝
      出演 大川泰樹

桜、と聞くと、思い出す情景がある。
満開の桜の下、ひらひら舞い落ちる花びらの中に、
中学生の男の子が立っているワンカットの映像。
やたらと太いズボンに、異常に短い学ラン。
当時、ボンタンに短ラン、と呼ばれていた、いわゆる変形制服セットアップ。
浅黒い肌に、ツンツンに尖らせた短髪が天を衝いている。
どこを見ているのかわからない、眠たそうな目をいつもしていた。
男の子、と今なら言えるけど、当時は界隈で最も恐れられていた男だった。
今ではあまり聞かなくなったが、
不良品の品をとって、不良、と呼ばれるカテゴリーに属していた。

あだ名は「オクゲ」。
本名が「おくした」だったような気もするが、
とにかく「オクゲ」という名前は
彼自身が発する不吉な雰囲気と相まってわたしたちが住む盆地一体に
どんよりと広がっていた。
そのオクゲが、花散る木の下に立っている。
右手に長さ30センチぐらいの鉄パイプを持って。

オクゲは、わたしと同級生で、わたしと同じくバスケ部に所属していた。
元々はおとなしいやつだったのだが、1年の冬ごろから急速に荒れ始め、
そのうちまったく部活に来なくなった。
どうも顧問の先生とひと悶着あったらしい。
それが原因なのか、わたしたちバスケ部員は、登下校時や部活中、
なにかといちゃもんをつけて絡まれたり、追いかけられたりした。
なんでとばっちりを食わなきゃならないんだ、と、
わたしたちはそのたびに嘆いた。
そうこうしているうちに、オクゲの行状は悪化の一途をたどり、
授業中、とんでもない音を立てるスクーターで校庭を走り回ったり、
誰かの歌みたいに学校中の窓ガラスを割って回ったりするようになった。
近くの公園で他校の不良と喧嘩になり、持っていた鉄パイプで誰かを衝いて、
肺に穴が開いた、などという物騒な噂も広がっていた。
鉄パイプで衝かれて肺に穴が開く、という絶妙に怖いリアリティに、
いわれなく追いかけまわされるバスケ部の面々は深いため息をついた。

夏休みのある日、隣の中学まで練習試合に出かけたその帰り、
わたしたちは、ばったりオクゲに出会ってしまった。
今でも鮮明にその時のことを覚えているが、
草ぼうぼうの斜面の上から、
わたしたちを見下ろすそのシルエットを捉えた誰かが
「あっ」と言った瞬間、顧問の先生が「逃げろ!」と叫んだのだ。
言うに事欠いて「逃げろ」かよ、と今となっては思うが、
そのときはみんな反射的に必死で走り出していた。
そして、逃げるわたしたちを見て、オクゲは斜面を駆け下りてきた。
そのあとのことは、よく覚えていない。
ただ、順番的には「先生の逃げろ」のあとに「追うオクゲ」だったことは
間違いないと思う。

そんなことが日常になっていた中学生活も、いつかは終わる。
たいした成績も残せないまま中学を卒業するバスケ部のメンバーは、
なんとなく、まあ記念写真でも撮っておくか、という話になり、
卒業証書の入った筒を片手に、
体育館前の桜の木の下にゆるゆると移動していた。
その、桜の木の下に、オクゲがいた。
ささくれだった短ランにボンタン。ガムテープで補修されたスリッパ。
焦点を結ばない目は、どこを見ているのかわからない。
そして、その右手に、鉄パイプが握られているのを見たとき、
わたしたちはうんざりしながらも踵を返し、三々五々、逃げ出した。

あれからオクゲには会っていないし、部活の仲間と会うことも
ほとんどなくなってしまった。
でも、桜を見ると、桜の下にいたオクゲを思い出すことがある。
そして、最近、ふと思うのだ。
もしかしたら、あいつが右手に持っていたのは、鉄パイプじゃなくて
卒業証書だったんじゃないか、と。

出演者情報:大川泰樹 03-3478-3780 MMP所属

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