2013 年 4 月 21 日 のアーカイブ

薄 景子 13年4月21日放送



出会いのはなし アルプスの少女ハイジより

「アルプスの少女ハイジ」の中で
夕焼けがなぜ美しいかをきかれたおじいさんは
こう答えた。

 人間であろうと、何であろうと、お別れする時が一番美しいんだ。
 いま、太陽がね、地球からお別れをしているから、
 こんなにも、人の心を打つんだよ。

別れの季節の美しさは、
新しい出会いを輝かせる。
この春、きっとあなたのまわりでも。

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小野麻利江 13年4月21日放送



出会いのはなし 梅原真とカツオ漁師

日本唯一の飛び地村でとれた、
「じゃばら」というみかんの果汁。
牛肉のかわりに海に豊富にあるさざえを入れた
「島じゃ常識 さざえカレー」。

日本各地で獲れたモノたちに、
まっすぐで、風圧の強いデザインを加える男がいる。
それが、デザイナーの梅原真(うめはらしん)。

そのきっかけは、
土佐のカツオの1本釣り漁師との出会い。
このままでは舟がつぶれる。
そう言う漁師の話を聞くうちに、

 カツオにデザインをかけあわせれば、
 きっと新しい価値が生まれる。

そう確信し、
商品化とパッケージを請け負った
「カツオのたたき」は、
やがて年商20億円の産業となった。

一次産業とデザインが出会えば、
日本の風景は残せる。
そう考える梅原は今日も、
日本各地に眠る資源たちとの、
出会いを重ねている。

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熊埜御堂 由香 13年4月21日放送



出会いのはなし  12代目市川團十郎と母千代

今年2月に亡くなった歌舞伎役者12代目市川團十郎。
彼の母、千代さんをモデルにした小説がある。
作家の宮尾登美子が1988年から新聞に連載した『きのね』。

「花の海老様」といわれた9代目海老蔵。
その正妻となった千代さんのあまりに地味な姿を
不思議に感じ、宮尾は小説化を思い立った。

小説では、使用人だった女性がトイレでひとり子を産みおとし
それがのちの12代目團十郎となる。
センセーショナルな内容で、
どこまでが実話なのかとつい気になるが
そんな邪推をふきとばすエピソードがある。

宮尾は、この作品を書くためにずいぶん取材をし、
12代目團十郎のへその緒を切った
当時90歳のお産婆さんにも話をきいた。
出産直後にかけつけると、千代さんは正座し、
横には座布団の上にきれいにぬぐわれた赤子がいたという。
その姿をみてこう思った。

 ああ、聖母子のようだ。

世に生をうけ、
子が母に抱かれる。
その出会いの奇跡が
未来をつくっていく。

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小野麻利江 13年4月21日放送


tomato umlaut
出会いのはなし ソニア・パークとお買い物

どうして人間って
買い物するのだろう?
スタイリストのソニア・パークは、
そう考えたことがあるそうだ。

少し考えて、彼女が出した答えはこうだ。

 そこにものがあるから。
 そして、それを買うことができるから。

みずからのショッピングフリークぶりを
「一向に治らない買い物癖」と称する
彼女ならではの答えである。

人とモノとの出会いの連続、ショッピング。
あなたはこの春、どんなものと出会いましたか?

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石橋涼子 13年4月21日放送



出会いのはなし ロダンと花子

66歳のオーギュスト・ロダンは、
マルセイユの博覧会で
花子という日本人女優に出会った。
彼女の苦しみや怒りの演技に衝撃を受け、
楽屋に押し掛けてモデルになるよう頼んだという。

一方の花子はというと、
日本で二度の結婚に失敗し、頼る家もお金もなく
34歳、単身死ぬ気で海を超えた。
必死に芝居を続けたある日、
有名な芸術家が自分を求めて現れたのだった。

多くの評論家が運命の出会いと語るこの瞬間、
彼女はこう思ったという。

 なんだか汚いじいさまだな。

思い出は見る角度によって違うけれど、
どんな出会いも限りない可能性を秘めている。

花子はモデルの依頼を引きうけ、
ロダンから家族同様に愛された。
ロダンは、毎日のように花子を招き、
58点もの作品をつくりつづけた。

この春、あなたにいい出会いがありますように。

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薄 景子 13年4月21日放送



出会いのはなし ジョンとポール

ジョン・レノンとポール・マッカートニーが
はじめて出会ったのは、10代半ばのとき。
教会のお祭りで、バンド演奏を終えたジョンのところに
ポールが近寄り、すごいテクニックでギターを弾いてみせた。

その運命的な出会いの前後、ふたりは最愛の母を亡くす。
荒れ狂うほどギターにのめりこみ、音楽の絆を深めていった。

 僕らふたりは同じような心の痛手を受け、
 それを克服しなければならなかった。

後にジョンは「マザー」で、ポールは「レット・イット・ビー」で
亡き母を歌った。

何かを乗り越える力が出会う時、奇跡は生まれる。

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茂木彩海 13年4月21日放送


MShades
出会いのはなし 出会いの極意

出会いの瞬間は、
できれば相手の記憶に残るようなものにしたい。

 虹も15分と出ていると、だれも眺めない。

とは、ゲーテの言葉。

不意に出会う虹のように、一瞬のインパクトで。
毎回そんな出会いにできればいいのだけれど。

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茂木彩海 13年4月21日放送



出会いのはなし ロバート・キャパをつくった2人

人生を変える出会い、というものがある。

20世紀を代表する戦場カメラマン、ロバート・キャパ。
この名前が、実は偽名だったということはあまり知られていない。
ロバート・キャパ。本名を、アンドレ・フリードマンという。

ロバート・キャパという架空の名前をアンドレに付け、
「アメリカの有名なカメラマン」として売り込むことを提案したのが、
パリで出会った女性、ゲルダ・タロー。

売れないカメラマンだったアンドレは
彼女との出会いによってキャパとして生まれ変わり、
やがて誰もが知る戦場カメラマンとなっていった。

アンドレはのちに、後輩のカメラマンにこんな助言をしている。

 きみの写真が傑作にならないのは、
 あと一歩、被写体に近づいていないからだ。

可能性があると感じたら、一歩近づいてその出会いに懸ける。
写真の話だけに留まらないこの哲学こそ、キャパとして生きた彼の強さなのかもしれない。

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