2014 年 10 月 5 日 のアーカイブ

佐藤理人 14年10月5日放送

141005-01

私の脚本術①「古沢良太」

映画は現実を変えない。
でも観た人の何かは変えられる。

脚本家古沢良太はその手応えを
映画「ALWAYS 三丁目の夕日」でつかんだ。
それ以来彼は常に、

これで世の中変えてやる

と原稿用紙に向かう。

彼はまずスタッフの想いを変える。
どんな理不尽な直しも喜んで受け入れる。
制約が増えるほど脳みその使ってない部分が、

もっと面白くしてやる

と燃えるのだそうだ。

作った人が納得できない作品に、
世の中が納得するはずがない。
スタッフが「自分の映画」だと思えて初めて、
観た人が「自分の映画」だと思ってくれる。

一人でも多くの人を前向きにすることで、
日本映画はまた一歩先に進める。
彼はそう信じている。

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佐藤理人 14年10月5日放送

141005-02
M.Christian
私の脚本術②「内田けんじ」

脚本はルービックキューブだ

映画「運命じゃない人」の脚本家
内田けんじは言う。

1面ずつ作ってたらいつまでも完成しない。
いいストーリーはすべての出来事が
6面同時に美しく収まる。

行き当たりばったりでは決してうまくいかない。
彼はまず登場人物と親友になることから始める。
どこで生まれ、何が好きで、どんな暮らしをしてるのか。

キャラクターが決まれば、行動が決まる。
行動が決まれば、物語が勝手に動き出す。

「ねえ、何か面白い話ない?」
彼は今日も親友に尋ねている。

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佐藤理人 14年10月5日放送

141005-03
JeffHBlum
私の脚本術③「三木聡」

脚本を書いてみたいが
何を書けばいいかわからない、
という人は意外と多い。

ドラマ「時効警察」などで知られる脚本家三木聡。
彼の発想法はそのタイトルと同じくらいユニークだ。

彼は心のオモチャ箱に1日1個ずつ
面白かった出来事をしまっていき、
ある程度溜まったらひっくり返す。

すると一見バラバラに見えた出来事に共通点が見つかる。
それこそ自分でも気づかなかった無意識のテーマ。

心の奥で自分が何を思っているのか。
映画を通じて発見できれば
それがベストの物語だ。

さて、あなたのオモチャ箱の底には
一体何が隠れているだろう。

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佐藤理人 14年10月5日放送

141005-04

私の脚本術④「横浜聡子」

すぐ理解できるものなんて最悪

映画「ウルトラミラクルラブストーリー」の
脚本家横浜聡子は理屈っぽいのが大嫌いだ。

観客の予想を徹底的に裏切るために、
テーマもあらすじも一切決めない。
結末を自分にもわからなくすることで、
脳みそで考えすぎる弊害を糾弾する。

彼女は世界に一発喰らわせたい。

頭、固くない?

と。

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佐藤理人 14年10月5日放送

141005-05
stevendepolo
私の脚本術⑤「筧昌也」

もしも人生にロスタイムがあったら?
しかもサッカーのように中継されたら?

もしも缶詰に人間が入ってたら?
しかも絶世の美女だったら?

ドラマ「ロス:タイム:ライフ」「美女缶」
で知られる筧昌也の脚本は、

「もしも」と「しかも」

でできている。

もしも設定が今までになく斬新だったら?
しかも遊び心がひとヒネリ加えられてたら?

彼の物語が色あせないのには
ちゃんと理由がある。

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佐藤理人 14年10月5日放送

141005-06
Infradept
私の脚本術⑥「園子温」

若い頃は食べるためにカルト教団や過激派に入った。
ハリウッドのプロデューサーに手ぶらで会いに行き、
口からでまかせで物語をでっち上げた。

「愛のむきだし」の脚本家園子温の人生は、
映画と同じく型破りだ。

「しちゃいかん」ということはない
と思うんですよ、映画に。

彼は人と同じであることを徹底的に拒否する。

コンビニに行って帰ってくるだけの生活をしてるから、
コンビニに行くだけの映画しか作れない。
日本は平和すぎるから、映画がどんどん大人しくなる。

恥や失敗こそ表現にとって最高の肥やし。
彼は映画という武器で戦う、
世界一平和なテロリストだ。

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佐藤理人 14年10月5日放送

141005-07
Neko1998
私の脚本術⑦「福田雄一」

リアリティって言葉が大嫌い

ドラマ「33分探偵」の脚本家福田雄一は言う。

起こるはずのない事件ばかり
ニュースや新聞を騒がす時代。

リアリティって一体何なんだ。

人間のさまざまな面を理解しなければ、
愛されるキャラクターは作れない。

完璧な人なんてどこにもいない。
カッコいいだけのヤツはカッコ悪い。

彼が描く登場人物たちは、
誰よりもリアリティに溢れている。

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佐藤理人 14年10月5日放送

141005-08
mhaithaca
私の脚本術⑧「行定勲」

いい脚本とは、ほどほどにダメな脚本のこと。

映画「世界の中心で、愛をさけぶ」の監督・脚本家、
行定勲は言う。

完璧な脚本からはそれ以上の映画は生まれない。
議論の余地を敢えて残すことで

自分がもっと面白くしてやる

とスタッフをヤル気にさせる。

岩井俊二という偉大な先輩の影に隠れ、
目立たなかったことが功を奏した。

今でも、

自分は何者でもない。
俺の映画なんか誰も何とも思ってない

と思う。だから決して偉ぶらないし、
自分の考えを押しつけない。

いつもの道がある日突然大きく逸れるように、
優秀な職人たちの手で物語を脱線させて欲しい。

彼の映画をいちばん楽しみにしてるのは、
きっと彼自身だ。

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