石橋涼子 15年11月8日放送

151108-03
matsukawa1971
夫婦のはなし 小津安二郎が描いた夫婦

小津安二郎の映画「お茶漬けの味」は
裕福だけれど、かみ合わない夫婦の物語だ。

真面目で努力家で無口な夫と
派手好きでお嬢様育ちの妻。
味噌汁かけごはんが好きな夫と
それを下品だと言って怒る妻。

育った環境も価値観もまるで違うふたりは、
話し合うことも歩み寄ることもせず
互いに距離を置く。
そんな夫婦の関係が変わるのが、
深夜にお茶漬けを食べる場面だ。

家事が苦手な妻と夫でたどたどしく準備をし、
ふたりで食卓につく。
夫が美味い。というと、
妻も美味しいわ。とつぶやく。
ひとりごとのような会話から、
わだかまりが溶け、ふたりの本音がこぼれ始める。

食卓を囲む風景が仲直りの象徴となるのは、
恋人ではなく、夫婦の物語ならではだ。

最後に夫がぽそりと言う。
これだよ、夫婦はお茶漬けの味なのさ

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