2019 年 8 月 24 日 のアーカイブ

永久眞規 19年8月24日放送



武将と日本酒

戦国時代最強の武将とも言われる上杉謙信。
彼の死に際をご存知だろうか?

まだ寒さの残る天正6年3月。
49歳で帰らぬ人となった謙信。
その場所は戦場ではなく、春日山城内の厠だった。

死因の最有力説は、なんと酒ゆえの脳卒中。

なにを隠そう彼が治めていたのは越後、今でいう新潟。
謙信が大の酒好きだったのも頷ける。

しかも彼のもっぱらのつまみは、梅干しと塩。
大量のアルコールと塩分摂取で、
高血圧だったことは想像に難くない。

そして彼の辞世の句がこちら。

 四十九年一睡夢 一期栄華一盃酒

この句のように、
生涯も最後は酒でしめたのだろうか。

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村山覚 19年8月24日放送



日本酒の親戚

日本酒は、原料のお米を磨く割合によって
味と呼び名が変わってくる。
お米を50%以上磨いて、雑味やたんぱく質などを
減らしてつくった大吟醸は華やかな香りが特長。
今の季節、キリッと冷やして楽しんでいる方も多いだろう。

中には90%以上磨いたような日本酒もあるというが
磨きが少ないものにもお米の旨みやコクがあり、
好みは人それぞれ。

ところで、米を磨く工程でできるたくさん米の粉が
どう二次利用されているかというと‥‥
お煎餅やあられ、麺類に形を変えたり、
化粧水の原料になったり。
時には、横断歩道などの白い塗料に使われることも。

おいしい日本酒を飲んでほろ酔いの帰り道、
横断歩道を見かけたらご注目を。

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藤本宗将 19年8月24日放送


SV01改
日本酒の多様性

日本酒のラベルを見ると、
精米歩合という数字が書かれている。

精米とは、酒の雑味をなくすために米粒の周囲を削り、
中心部の心白だけになるまで磨くこと。
大吟醸ともなると50%以下になる。

ついには昨年「0%」の日本酒まで登場した。
正確には0.85% なのだが、
精米歩合は小数点以下を切り捨てるため、0%表記となる。
かかった精米時間は5,297時間34分。
じつに7ヶ月を経てたどりついた究極の大吟醸酒だ。

ところがその一方で、
「低精米酒」というトレンドも生まれている。
大吟醸とは真逆の試みだ。
こちらは精米歩合96%というものまで現れた。
ほぼ玄米に近いが、これもまた旨い。

精米歩合の数字を競う時代は終わった。
日本酒の世界も「多様性の時代」なのだ。

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福宿桃香 19年8月24日放送



ノンアルコールへの挑戦

日本酒のアルコール分は、ビールのおよそ3倍。
ゆえに、ノンアルコール日本酒の開発は他の酒類に比べ困難を極めた。

金沢の老舗酒蔵・福光屋も、
開発に乗りだしたひとりだった。
最大のハードルは、アルコール自体が持つ辛みの再現。
度数が高いお酒になればなるほど
それがそのまま味の特長となっているためだ。

何を入れれば日本酒の味に近づけられるのか。
何かを入れた時点で、あの味にはならないのではないか。
研究は、10年近くつづいた。

そしてついに、2012年。
日本酒と同じ米と米麹のみを原料に
麹菌、乳酸菌、酵母を使って3度異なる発酵をさせることで、
アルコールを入れたときに近い旨みやふくらみ、酸味などの
複合的な味わいを引き出すことに成功した。

どんな人にも、どんな時にも、日本酒を楽しんでもらいたい。
世の中のノンアルコール日本酒の数々は、
日本酒を愛した職人たちの情熱の証なのだ。

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仲澤南 19年8月24日放送


とみたや
松と日本酒

松の木が日本酒を飲む、
という話をご存じだろうか。

東京都葛飾区にある、柴又帝釈天。
ここでは毎年2月頃、
寒肥(かんごえ)という行事が行われる。
境内にそびえる瑞龍松(ずいりゅうまつ)の根元に、
寒い時期の特別な肥料として日本酒を与えるのだ。
一斉にまかれる日本酒に、
辺りにはそれだけで酔えそうなほどの香りが漂うという。

木にお酒とは意外な組み合わせに聞こえるが、
実は日本酒のアルコールと糖分は
松の根を温めるとともに、菌の働きを活発にしてくれるそうだ。
おかげで、瑞龍松は樹齢500年近いにもかかわらず
今でも青々とした葉を茂らせている。

人だけでなく木にとっても、
酒は百薬の長なのかもしれない。
もちろん、適切な量であれば。

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