柴田常文 2008年12月31日 大晦日スペシャル



複式呼吸                

ストーリー 柴田常文
出演 木野花

まず口を大きく開け、「ハー」と息を吐き、
続いて口をつぼめ「フッフッフッ」と息を吐き、
最後に、「フー」と、肺の中の空気を出し切ります。
お腹をへこませて、
できるだけゆっくりと、時間をかけながら
「ハー、フッフッフッ、フー」と息を吐いていきます。

次に、お腹を出しながら、鼻からゆっくり息を吸います。
“ゆっくり”を意識しながら、「吐く、吸うを、2:1」と考え、
6秒で吐き、3秒で吸うのがいいでしょう。
慣れたら、できるだけ長くできるようにしていきましょう。

特に「ゆっくり吐くこと」が重要です。
「悪いエネルギーを吐き出してから、
良いエネルギーを取り入れる!」
それをイメージして呼吸すると、更に効果的です。

みんな、ため息ばかりついている
ひどい世の中になっています。

どうせ息を吐くなら、
複式呼吸にしてみてください。
ス~ッと、リラックス出来ますよ!

出演者情報:木野花 03-6416-9903 吉住モータース 

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福里真一 2008年12月31日 大晦日スペシャル


お年玉

ストーリー 福里真一
出演 マギー

おかあさん、
あのお年玉、どこにいったんでしょうね。

「おかあさんが、ちゃんと貯めといてあげるわね」と言って、
あなたが持ち去ったまま、
二度と戻ってこなかった、
あのお年玉のことですよ。

こちらでは、何かと物入りで、
たとえば、2011年の7月24日までに、
地デジ対応テレビか、
少なくとも、地デジ対応チューナーを買わないといけないんです。

もちろん、あの頃のお年玉ぐらいじゃ、
いくら三十数年分の利子がついても、テレビは買えないけど、
リモコン代ぐらいにはなったかもしれませんよ。

おかあさん、
あのお年玉、ほんとにどこにいったんでしょうね。

ぼくの伊藤博文や、岩倉具視や、聖徳太子を、
あの頃、あなたは、何につかってしまったんでしょうね。

出演者情報:マギー 03-5423-5904 シスカンパニー

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小野田隆雄 2008年12月31日 大晦日スペシャル



二〇〇九年に贈る言葉

ストーリー 小野田隆雄
出演 木野花

もうすぐ、やってくる年にむかって、
来年こそ、わたしがいちばん、
しあわせになりたいと、多くのひとが
祈っているのかもしれません。
なぜなら、みんながいちばん、
ふしあわせになってしまったような時が
ずいぶん長く続きましたから。
いちばん、しあわせに、
なって欲しいひとたちに
詩人の西脇順三郎さんの言葉を
お贈りします。
「明日は恋なき者に恋あれ
明日は恋ある者にも恋あれ」

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麻生哲朗 2008年12月31日 大晦日スペシャル

2009年 わたしの言葉

ストーリー 麻生哲朗
出演 マギー

誰かの存在が身近になるほど
言葉は少なくなってしまう。
落ち葉は、落ちるまではまだ落ち葉じゃないとか
雨の後は必ず晴れるとか
「おはよう」とか
当たり前の出来事を
当たり前のように近くにいる人に
ちゃんとしゃべりたいと思う。
そういうことを
いつか思い出と呼べるような
そんな一年にしたい。

出演者情報:マギー 03-5423-5904 シスカンパニー

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中山佐知子 2008年12月31日 大晦日スペシャル



エデンから放たれた男と女は

                
ストーリー 中山佐知子
出演 大川泰樹

エデンから放たれた男と女は
すぐに一緒に暮らしはじめた。

女はまだ若くあどけなかったし
男も女よりひとつ年上なだけで
ふたりともエデンの外のことについては
何もわかっていなかった。

男には9号という認識番号があった。
女は15号だった。
エデンの外に暮らす人々は
この美しいふたりが自分の土地で暮らすことを喜び
ことあるごとにカメラを向けた。

ある日、黒い大きな翼を持った鳥が女を襲った。
女はやっと逃げたが
動くのが不自由になるほどの怪我をして
誰の目も届かない山のなかに隠れてしまった。

土地の人々は心配して女をさがしたが見つからず
やっと追いついた男を女は追い払った。
私のそばにいると一緒に食べられてしまう….

男は女を守る手段をなにも授かっていなかったし
女もそれを承知で運命に従うしかなかった。

いままで自分たちを傷つけるものがいるなどと
考えたこともなかったが
このときはじめてふたりは
エデンの外で生きることの意味を知ったのだ。
そこでの自由は常に命の危険と引き換えだった。

男は女に追い払われても
木の枝に隠れるようにして近くに潜んでいたが
やがて冬の山の静寂の中で
女の骨が噛み砕かれる音を聞いた。

こうして、ニッポニア・ニッポン
この国で朱鷺と呼ばれる鳥がまた一羽死んだ。

その朱鷺の最後の写真は
捜索した人々がやっと見つけて撮影した
白い羽根と骨のカケラだった。

出演者情報:大川泰樹 http://yasuki.seesaa.net/ 03-3478-3780 MMP

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国井美果 2008年12月31日 大晦日スペシャル



「3分の1の写真」

                      
ストーリー 国井美果
出演    西尾まり

                  
そろそろだな。

そう思った瞬間、とつぜん空気がキュッと冴えてきた。
新宿から特急に乗って、甲府へ向かう途中。
この青い匂い。しん、と澄み渡る感じ。実家がぐっと近くなる。

甲府で生まれ、高校まで過ごした。
ひとりっこの私は、小さい頃はいつも、1つ年上の幼なじみにくっついて遊んでいた。
亜美ちゃんと、沙耶香(さやか)ちゃん。
亜美ちゃんは、双子の弟を持つお姉さん。しっかりもので、ちゃきちゃきと明るい。
沙耶香ちゃんは、私と同じく、ひとりっこ。
女の子らしくて、お人形をたくさんもっている。

だけど、3人でいると、1つ年下の私はどうしても、
2人にちょっとだけ追いつかない。
亜美ちゃんと沙耶香ちゃんと、そして私。
2人と1人。どうしてもそういう単位。
アネゴ肌の亜美ちゃんが好きだったから、
「沙耶香ちゃん、私も亜美ちゃんと遊びたい。」
心の中でそうつぶやいていた。2人に間に合わない自分が、もどかしかった。

そんな、幼いコドモなりの、心の葛藤の表れだったのだろう。
私は、ある時、写真に思いをぶつけた。
3人で並んで写っている、1枚の写真。
それを3分の1だけ切り離してしまったのだ。
私、亜美ちゃん。そして・・・・切り離された方に、沙耶香ちゃん。

なんとまあ・・・。やっぱりコドモのやることだなあ。
そんな、可笑しくも愚かで切ない出来事も、
実はもうすっかり忘れてしまっていて、
実家へ向かう匂いや気配の気まぐれで、たまたま思い出したのだった。

私は、あれから東京の大学に進み、商社に8年勤めたのち、
友人の小さな輸入食材店を手伝っている。
亜美ちゃんは、もう、この世にいない。15歳の夏、交通事故だった。
沙耶香ちゃんは・・・。

そこで電車が甲府に着いた。夕暮れの駅前ロータリーに降り立つと、
停まっていた赤いミニの窓が開いて、沙耶香ちゃんが顔をだした。
「おかえり。ラデュレのマカロン買ってきた?」

もちろんだよ、と言って、私は助手席に乗り込んだ。
「ごめんね、明日結婚する花嫁さんに迎えに来させちゃってさ。」
すると沙耶香ちゃんは、
「おお、バツイチの再婚につきそってくれる、貴重な幼なじみよ!」
と、はじけるように笑った。

あれから時がたち、いろいろあっても、
3分の1の沙耶香ちゃんと私は今、こうして会って笑っている。
そういうことが、いちばん強い。と、私は思う。

*出演者情報 西尾まり  03-5423-5904 シスカンパニー

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