2010 年 12 月 3 日 のアーカイブ

佐藤延夫 10年12月04日放送


ピーナッツの話/チャールズ・シュルツ

スヌーピーとチャーリー・ブラウンの生みの親、
チャールズ・シュルツ。

自分の描いた絵が初めて褒められたのは、
幼稚園の初日のことだった。
白い紙と黒いクレヨンを渡されたので、
雪かきをしている男の絵を描いた。
ただ、思うままに。

みんなの絵を見て回っていた先生が、
彼の前で止まり、こう言った。

チャールズ、あなたはきっと絵描きさんになるわ

この優しい予言は、少年の心に永遠に残る。


ピーナッツの話/ルール

チャールズ・シュルツの漫画「ピーナッツ」には、
ひとつのルールがある。

スヌーピー、チャーリー・ブラウン、ルーシー、ウッドストックなど
登場人物は多いが、作品の中に大人を出すことは一度も無かった。
その理由は、いたって単純だ。

場所がないから。

子供の視線で描かれた子供サイズの構図に、
大人が入りこむ隙はない。

読者は知らず知らずのうち、
子供のひとりとして漫画に参加している。

ここでは、子供になることがルールだ。


ピーナッツの話/犬

漫画「ピーナッツ」の作者、チャールズ・シュルツは、
幼いときに犬を買っていた。

名前は、スパイク。

漫画にもスパイクという犬が登場する。
スヌーピーの兄という設定で。

雑種で気性が荒かった本物のスパイク。
漫画の中ではビーグル犬になり、
孤独を愛し、砂漠で穏やかに暮らしている。

漫画家は、うらやましい。
自分の思い出に、命を吹き込むことができるんだから。


ピーナッツの話/チャーリー・ブラウン

作者曰く、普通の人の代表。
これが、ピーナッツに登場する丸顔の少年、チャーリー・ブラウンだ。

好きな女の子の顔も見られないシャイな性格だけど、
ときどき、ものごとの核心を突く。
たとえば「安心」という意味について聞かれたとき。

安心感ってのは、車の後ろの席で眠ることだよ。
前の席にはパパとママがいて、心配事はぜんぶ引き受けてくれる。

そしてチャーリー・ブラウンは興奮して続ける。

でも、それはいつまでも続かない!
あるとき突然、きみはおとなになって、
もう二度と同じ気持ちは味わえないんだ!

私たち読者は、なるほど、と感心する。
でも、そういった言葉の多くは、ガールフレンドに軽々と切り返されてしまう。

  女の子って、男の子に哲学的な話をされるのは好きじゃないのよ。

私たち読者は再び思う。なるほど。


ピーナッツの話/スヌーピー1

1960年代初頭に始まった、アメリカのアポロ宇宙計画。
数年後、そのキャラクターに任命されたのが、スヌーピーだった。

アポロ10号の月面着陸船の名前は、「スヌーピー」。
司令船は、「チャーリー・ブラウン」と名付けられた。

もちろん当時の漫画にも、宇宙服を着たスヌーピーが登場する。

  ここは月。
  やった!月に立った最初のビーグル犬だ!
  ロシアに勝ったぞ・・・
  みんなに勝ったぞ・・・
  隣に住んでる馬鹿な猫にも勝った!

スヌーピーは、アメリカの象徴。
この小さな犬には、世の中の全てを巻き込むほどの力があった。


ピーナッツの話/スヌーピー2

スヌーピーは、よく寝ている。
犬小屋の上で。
テントの上で。
ときには岩を枕にして。
そうかと思えば、タイプライターで何かを打ち込んでいる。

あるとき、犬小屋から落ちたあと
スヌーピーは呟いた。

世の中、厳しい現実に満ちている。

スヌーピーは、哲学者なのだ。


ピーナッツの話/声

チャーリー・ブラウンは独り言を言う。
  精神科医によれば、ピーナッツバターサンドイッチを食べる人は孤独なんだって。
  その通りだと思うよ。

スヌーピーは呟く。
  先生にあてられて「ミシシッピー」のスペルを聞かれたら、困ったことになるな。

リランは、ぼやく。
  初日から「戦争と平和」を読まされるんじゃないだろうね。

ペパーミント・パティは愚痴をこぼす。
  わたしは、人生の歩道の敷石の間から
  必死で伸び上がろうとしている、みじめな、みにくい雑草なの!

シュローダーは、ピアノを弾きながら叫ぶ。
  お金なんて関係ない!これは芸術なんだ。

ルーシーは、小言を言う。
  世界が抱える様々な問題を知ったら、そんな嬉しそうな顔はしていられないわよ!

大人でもドキッとするような言葉は、
漫画「ピーナッツ」の中で、財宝のようにきらきら輝いている。

このめまぐるしく美しい台詞を訳しているのは、谷川俊太郎さんだ。

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フカフカくん

ご近所には珍しい長毛な猫。
しかも白地に茶虎。
カメラを持って近づくと案の定逃げたが
なにかに気を取られて逃げるのを忘れたところを
一枚撮らせていただいた。

猫は忘れっぽい。
あれ、いま俺はなにをしてたんだっけ??
ということがよくある。

うちの愚猫はドタドタと走って来たくせに
目的地に到着したときには
目的そのものを忘れ果てて「あれ?」という顔をすることが多い。
どうして猫ってそうなのだろう(玉子)

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