名雪祐平 13年7月28日放送



手紙 南極観測隊員の妻

寒い南極の、さらに冬。

1957年、日本初の南極観測隊が
南の果てに着く。

命がけで冬を越すまで
日本には帰れない。

モールス信号で
日本から届く電報が楽しみだった。

ある隊員に、妻から年賀電報が届いた。

そこにはたった三文字。こうあった。

 アナタ

愛情や淋しさや、
すべての感情があふれているような
胸つまる三文字。

夫だけでなく、
隊員たち全員で感動した。

ところが。

この「アナタ」は
そんな甘いラブレターではなかった。

夫の酒の飲み過ぎを注意するものだった。

注意にもかかわらず
後日、夫の酒のトラブルを伝え聞いた妻は
また電報を送ったらしい。

こんどは四文字で。

 プンプン

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