2013 年 10 月 19 日 のアーカイブ

三島邦彦 13年10月19日放送



おいしい料理をつくるひと

滋賀県の比良山(ひらさん)。
京都と若狭をむすぶこの山に、
「比良山荘(ひらさんそう)」という料理宿がある。

名物は「月鍋」。

雪と花の間の時期に食べることから、
雪月花の真ん中の月を取って名付けられたというこの鍋には、
比良山の猟師が仕留めた新鮮な熊の肉がたっぷりと入っている。

比良山荘の主人、伊藤剛治は
熊への思いをこう語る。

 僕自身、熊の味がとてもすきで、
 死ぬときになにを食べたいかいうたら、
 やっぱり熊やと思うんです。

山の精霊である熊を、猟師が命がけで仕留め、伊藤が魂をこめて料理する。
熊も、猟師も、伊藤も、同じ山で生まれ育った仲間たち。
だからこそ、伊藤が作る月鍋には純粋な、山の恵みの滋味がある。

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三島邦彦 13年10月19日放送



おいしい料理をつくるひと

金沢の寿司の名店、小松弥助。
店主の森田一夫が軽妙に寿司を繰り出すその様は
「弥助劇場」と呼ばれ、多くの食通の心をつかんで離さない。

66歳の時、森田は一度店を閉めたことがある。
金沢を離れ、京都での隠遁生活。
余生をゆっくりと過ごすはずだった。
しかし、ふた月も経つとすぐにカラダがうずきはじめた。
森田は言う。

 魚屋の魚が私を呼んでいるように見えました。
 買うて、買うて言いよるんです。

  
寿司を握ることは己の天命。
それを知っているから、
82歳を超えた今日も、森田の「弥助劇場」の幕が開く。

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中村直史 13年10月19日放送



おいしい料理をつくるひと

史上最高のフランス料理人
ともいわれるフェルナン・ボワン。

彼の料理は世界中で称賛されたが、
彼自身、世界を驚かせようとは思っていなかった。

地元の食材をつかって、地元の人々のために、おいしい料理をつくる。
地元が、自分を育ててくれたのだから、
自分が学んだことは地元にかえしたい。それだけ。

ボワンはこんな言葉を残していている。

 若者よ、故郷に帰れ。
その町の市場へ行き、その町の人のために料理を作りなさい。

ボワンにとっての恩返しは、料理だった。
あなたが故郷にできることは何ですか?

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中村直史 13年10月19日放送



おいしい料理をつくるひと

料理人は、料理のおいしさで、腕前をアピールする。

けれど、そのシェフにとって、
料理のおいしさでアピールしたいのは
その食材を生んだ土地や人。

上柿元勝(かみかきもと まさる)。
日本のフランス料理界を牽引してきたグラン・シェフ。

彼の料理から伝わるのは、食材のすばらしさ。
その食材を生みだした土地と人間のすばらしさ。
言ってみれば、この世界のすばらしさ、である。

そんな上柿本の口癖は、

 素材に感謝、自然に感謝、生産者に感謝、
 食材業者に感謝、お客様に感謝、スタッフに感謝。

世界に感謝して、料理は生まれる。

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