2013 年 11 月 のアーカイブ

茂木彩海 13年11月17日放送



アーティストの話 紫舟

社会人3年目で、夢を追いかけることを決意した
書道家、紫舟。

筆を運んだ痕跡をそのまま鉄のオブジェにしてみたり、
3Dのデジタル処理をしてみたり。
書道家として新しい試みをし続ける彼女には、ある夢がある。

 100年後に見ても新しいと感じさせる何かを持った書を書きたい。

アーティストとしての決意を込め、今日も筆を運んでいる。

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小野麻利江 13年11月17日放送


Père Ubu
アーティストの話 ヤン・シュヴァンクマイエル

チェコのアニメーション作家、ヤン・シュヴァンクマイエル。
彼の創作の歴史は、色々なものへの、抵抗の歴史とも言える。

社会主義、全体主義、画一的な商業中心主義。
皆が一様に、思想そしてそれを体現した芸術に
侵食されていくことを嫌い、徹底的に抵抗する。

映像の中に登場する食べ物を、不味そうに描いたり。
動く肉片など、フェティシズムを全開にしたモチーフを多用したり。
人間の運命や行動が、何ものかに「不正操作」されている。
彼みずからが抱く、そんな強迫観念を投射した作品も、数多い。

アニメーションにとどまらず、
コラージュ、オブジェ、ドローイングなど
79歳になる現在も、作品を残し続けているシュヴァンクマイエル。
自らの肩書きを書くときに、彼は「アーティストと書く」と言う。

アーティストとしての、彼のプライド。
それは、こんな発言からも伝わってくる。

 世界を変えようとする気がないクリエイターは辞めたほうがいい。

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小野麻利江 13年11月17日放送



カメラの裏には ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ

「一番美しい絵」とは、どんな絵だろう。
そんな問いに、ゴッホはこう答えたという。

 一番美しい絵は、
 寝床のなかでパイプをくゆらしながら夢見て、
 決して実現しない絵だ。

わずか10年あまりの芸術家人生。
理想の絵を夢みながら、
ゴッホは時代を駆け抜けた。

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熊埜御堂由香 13年11月17日放送


godamariko
アーティストの話 川上弘美

作家、川上弘美。
普通の生活の中にある不思議を
きりとった小説を多く書いてきた。

大学の時に少し書いていたが
職業として小説を書きはじめたのは36歳の時。
それまで専業主婦をしていた。

ある日、朝からしゃべった言葉を思い返したら
スーパーのレジで「どうも」といった一言だけだった。
そのとき、また何か書いてみようかな、と思った。
けれど、書けない。
そのあと10年ほど書いては棄て、
書いては棄てを繰り返してきた。

では、なぜ書けるようになったか、
そう聞かれて彼女はこう答えた。

生活をしたからだと思う。

そう、どんな芸術も、
生きていくことからしか
生まれない。

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三國菜恵 13年11月16日放送


Phil and Pam
カメラの裏には 藤岡亜弥

写真家・藤岡亜弥。
彼女は20代のある日、旅に出た。
正確には、カメラを片手に、やっと外へ出た。

彼女は俗に言う、ひきこもりだった。
部屋にこもり、犬をかわいがるだけの生活をしていた。

けれどもある日、
彼女をずっと受け入れてくれていた犬がこの世を去る。
それを機に彼女の特異すぎる日常も終わり、
ようやく扉の外へと目を向けたのだった。

部屋を出て、国境を越えて、遠くエストニアの地に降り立つ。
片手にはカメラ。日本とちがう冬。
吐く息に彼女のめがねは曇り、こんなことを思ったという。

 世界はぼんやりとうつくしく見えた。
 はじめて、孤独の至福を味わった。

となりに誰もいなくても。
あたたかい犬がいなくても。
カメラという機械があれば、
人間は孤独を至福に変えることだってできるのだ。

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三島邦彦 13年11月16日放送


wwwuppertal
カメラの裏には 畠山直哉

ドイツのルール工業地帯の一角にアーレンという町がある。
産業の中心であった炭鉱が閉鎖して活気を失ったこの町で
炭鉱施設の一部取り壊しが決まった時、
一人の写真家が日本から呼ばれた。

写真家の名前は畠山直哉。

壊されてしまう前の姿を記録しておきたいという願いを受けた畠山。
未来の人々が懐かしむための写真を撮りながら、
彼の頭に一つの考えが浮かんだ。

 いっそ「記録」は過去ではなく、未来に属していると考えたらどうだろう。
 そう考えなければ、シャッターを切る指先に
 いつも希望が込められてしまうことの理由が分からなくなる。

そして私たちは
記録には未来の視点が必要なことに気づくのだ。

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三島邦彦 13年11月16日放送


poppet with a camera
カメラの裏には ロバート・キャパ

伝説の報道写真家、ロバート・キャパ。

23歳の秋にスペイン内戦の戦場で
民間兵が銃撃を受けて倒れる瞬間を撮影した一枚は、
「崩れ落ちる兵士」というタイトルで発表され、
戦争を象徴するイメージとして
ピカソの「ゲルニカ」と並び称された。

ある日、新聞記者がキャパに「崩れ落ちる兵士」を撮影した時のことを聞くと、
キャパはこう答えた。

 戦争なんて嫌だ。思い出すのも嫌だ。話をするのも嫌だ。

誰よりも戦争を嫌いながら、誰よりも戦場に足を向けたキャパ。
彼が残した写真は今も、彼の代わりに戦争を語り続けている。

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中村直史 13年11月16日放送


Dominic’s pics
カメラの裏には 山下祥一

セルフタイマーをセットする。
シャッターをおす。
カチ、
ピ、
ピ、
ピ、
ピ、
ピ、
パチリ。
そのピピピの時間に物語がある。
そう気づいた写真家がいる。
セルフタイマー写真家、山下祥一。
高い崖の上から川へダイブしている写真。
電車の中でコタツを囲んでいる写真。

切りとられた瞬間にいたるまでの10秒間を
私たちは想像してしまう。
ダイブの前はお祈りしたのだろう?
電車の乗客はびっくりしたのだろうか?

その写っていない映像に、見る者はまいってしまう。

セルフタイマーに魅せられた男。
つぎは、どんな物語を見せてくれるか。

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1歳7カ月の育児の話し。

1歳7カ月です。
歩いています。
しゃべっています。
できることも増えていますが、
やりたくないことも増えています。
自分なりの判断基準がどんどん増えています。

目に見える成長はうれしいものですが、
この好きだの嫌いだのが確立して、イヤイヤ期になるわけで。。。

うん、でもまあ、そこはあまり考えないようにしよう。
育児には、先を読むべき時と、今だけを楽しむ時があるのです。多分。

さて。
ちかごろのブームは、お風呂での水遊び(正しくはお湯遊び)。
いろいろなお風呂用おもちゃを買ってみましたが、
メガヒットは、やはり、ペットボトルです。
リーズナブル!

湯船に入れてぶくぶく泡を出してよし、
満たしたお湯をじゃばじゃば水面に注いでよし、
逆さに沈めて離せばロケットになってよし、
ただ浮かべるだけでも沈めるだけでもよし!
これほど長期に渡って夢中になるおもちゃ、他にありませんでしたよ!
それもどうかと思うけど。

そんなすーさんご愛用のペットボトルは炭酸水の入っていたものです。
一方で「親用」のペットボトルは某イロハスのものです。
前者は太めのフォルムでプラスチックも厚くしっかりしている。
後者は、わかりますかね、ちと薄くてぺこぺこするのです。
プラスチック材が薄いのはエコで良いことなのですが、
要するに、
ペットボトルを「あい!」と手渡してくれるすーさんの笑顔には
「ママにはべっこべこのボトルがお似合いだぜ!」という
熱い想いが込められているわけで。

ああ、成長してるなあー、と思います。

(写真は公園で遊具よりハトに夢中のすーさん。
 リーズナブルな1歳児です)

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佐藤理人 13年11月10日放送


jfravel
ナディア・コマネチ① 「希望」

1961年11月12日、
ルーマニアで一人の女の子が生まれた。

一週間ほどしたある夜のこと。
ひどい嵐で屋根がぶ厚い氷に覆われてしまった。

両親と祖父母が雨漏りを直す間、彼女は、
家の中でいちばん暖かい台所で寝かされていた。

祖父が通りすがりに彼女を抱きあげた次の瞬間、
屋根が崩れ落ちベッドは跡形もなく消え去った。

彼女の名前は、ナディア・エレナ・コマネチ。

ナディアはルーマニア語で

 希望

を意味する。

自分が体操と祖国の希望を救ったことを、
祖父はまだ知る由もなかった。

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