2014 年 3 月 1 日 のアーカイブ

佐藤延夫 14年3月1日放送



ゴーストの役割 ダルトン・トランボ

アメリカの映画脚本家で、
ダルトン・トランボという男がいた。
第二次大戦後、政治思想による弾圧で禁固刑となり
映画界を追放されると、妻とともにメキシコに移り住んだ。

偽名を使ってハリウッド映画の脚本を書き、
知人の脚本家の名前を借りたこともあった。
そして、ロバート・リッチ名義で参加した「黒い牡牛」は
アカデミー原案賞を受賞。
かの有名な「ローマの休日」も、
トランボが執筆したことが彼の死後、明らかになった。

ゴーストライターだけが、真実を知っている。

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佐藤延夫 14年3月1日放送


gullevek
ゴーストの役割 重松清

「流星ワゴン」「ビタミンF」など
数々の作品で知られる小説家、重松清。

編集者からフリーライターに転身し、
作家として売れる前から、ペンネームを使って仕事をした。
その名前は、田村章。
雑誌の記事、映画のノベライズ、テレビドラマの脚本、
芸能人のエッセイの構成なども手がけ、
伝説のゴーストライターと言われた。

実のところ、田村章のほか、
岡田幸四郎など20以上の別名を持っているそうだ。

プロのゴーストライターは、自分のゴーストになっている。

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佐藤延夫 14年3月1日放送



ゴーストの役割 川端康成

日本で最も美しい文章を書いた作家と言われる
川端康成。
その素顔は無口で、何を考えているかわからない
一風変わった性格だったそうだ。
本業の小説でも、筆が遅かったため、
何人ものゴーストライターを抱えていたという。

たとえば「東京の人」という作品は梶山季之によるもの。
「乙女の港」は中里恒子、
「文章読本」は伊藤整の代筆と言われている。

さすがノーベル賞作家は、格が違う。

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佐藤延夫 14年3月1日放送



ゴーストの役割 ディック・フランシス

イギリスの小説家、ディック・フランシス。
競馬のジョッキーを引退したあと、新聞記者を経て文壇デビューを果たした。
ジャンルは、競馬ミステリー。
40冊以上の本を世に出し、日本にも根強いファンが多い。

しかし、最愛の妻メアリーを亡くしたときの
彼の告白が世間を驚かせた。

「作品を書かせてくれたのは妻だった。
 もう、手紙などのほかには何も書かないだろう。
 私の作品のほとんどは、彼女との仕事だった」

執筆の際に多大なる協力をしたメアリー夫人は、
著者のひとりとして本に名前が載ることを頑に拒んだという。
もちろん、この事実が明らかにされても、
ディック・フランシスの人気が衰えることはなかった。

美談になるか、後ろ指をさされるか。
それは、本人たちの心掛け次第なのかもしれない。

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