2015 年 6 月 14 日 のアーカイブ

坂本弥光 15年6月14日放送

150614-01
Creativity103
「デザインエンジニア」山中俊治 楕円

椅子、携帯電話、ロボットなど
様々なものを世に生み出す
デザインエンジニア、山中俊治。

それらは、みな、
一枚の紙を楕円で埋め尽くす準備運動から生まれた。

普通、円を描こうとすると、
つなぎ目がいびつになってしまう。

そこでまず山中は、ペンを空中に少し浮かせたまま
一定のスピードで円運動させる。
軌道が安定してきたところで紙に着地させ、
一周以上走らせてからそっと離す。

円運動の一部として、美しい楕円を描きつけるのだ。

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坂本弥光 15年6月14日放送

150614-02
Dick Thomas Johnson
「デザインエンジニア」山中俊治 Suica自動改札機

Suicaの自動改札機。
これも、デザインエンジニア 山中俊治のデザインによるものだ。

いまでは当たり前にある自動改札。
しかし開発段階では、うまく通れない人がほとんどだった。
カードを縦に当てたり、激しく振ったり。
人にするようにカードを機械に見せて通ろうとしたり。
改札はたちまち大渋滞となった。

そんなとき、山中がデザインしたのが「角度」だった。
手を正しく読み取り面に誘導し、立ち止まらせることなく、
でも、通り過ぎてしまわないように。
ICカードを読み込ませる一瞬の「間」をつくらせたのは、
手前側にちょっと起き上がった、傾斜面だった。

13.5度。その絶妙な角度が、
今日も大勢の人々をスムーズに街へと送り出している。

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坂本弥光 15年6月14日放送

150614-03
hayano
「デザインエンジニア」山中俊治 大根おろし

デザインエンジニア 山中俊治。
彼の代表作に「大根おろし」がある。

工場でつくられた大根おろしは
歯が規則的に並んでいる。
そのため、同じ向きで使っていると、
歯が溝をなぞるだけでおろせなくなってしまう。

昔、職人が銅板を叩いて作っていたものは
歯やその並びが微妙に乱れていたために、
そういうことは起こらなかったという。

だから山中は、あえて
歯の高さを2種類にしてランダムに並べ、
驚くほどおろしやすい「大根おろし」をつくりあげた。

彼は、職人技と生産性の両立をデザインしたのだ。

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坂本弥光 15年6月14日放送

150614-04
Jim Thurston
「デザインエンジニア」山中俊治 義足ランナーとの出会い

オスカー・ピストリウス。
この男も、デザインエンジニア 山中俊治に
大きな影響を与えたひとりである。

両足を膝下から切断した、義足のランナー ピストリウス。
美しく超人的な走りで、大会に出る度に記録を更新し、
パラリンピストの中では敵無しの選手であった。
しかし、世界陸上競技連盟は
そのカーボン製の義足が競技規定に反しているとし、
健常者と競う一般競技への参加を一切認めなかった。

2008年、スポーツ裁判所がその判断を覆す。
ロンドンではオリンピック、パラリンピックの両方に出場をし、
全世界の話題の人となった。

山中も、そんな彼の走りに魅せられた1人であった。
北京パラリンピックではじめてピストリウスを見たときのことを、こう語っている。

 こんなにも人体と一体になっていて、
 それでいながら、見た目はくっきりと人工物。
 しかもそれがとても美しかった。

その後、彼はデザイナーとしてはじめて、アスリート義足界の門を叩くことになる。
機能美を操るプロとして、コンマ1秒を競う新たな領域への挑戦。
日本人パラリンピストたちの、美しく速い走りを、支えている。

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