2020 年 1 月 のアーカイブ

星合摩美 20年1月12日放送


Christian Kaden
和服  結ぶ

洋服が身体に合わせ立体的に裁断されるのに対し、
和服は平面的に仕立てられる。
言わば一枚の大きな布。
それらを何本もの紐で結ぶことで、着物となる。

浴衣のような単純な着物でも、
腰紐、伊達締め、帯の3種類の紐が必要だ。
一本一本紐を結んでいく動作は、身も心も引き締める。

結ぶという言葉には、互いの関係をつくるという意味もある。
縁を結ぶ。
契りを結ぶ。
ここにも身も心も引き締まるような瞬間がある。

今年も結びの国ニッポンのあちこちで、
たくさんのご縁が結ばれますように。

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星合摩美 20年1月12日放送


Snake Head 1995
和服  福助足袋

明治30年。
大阪堺市の足袋の店「福助」は、大阪市内への進出を目指した。
しかし、知名度が低かったために大苦戦。
起死回生の宣伝キャンペーンを行なった。
市内の家々に、片足だけの足袋を投げ込んだのだ。

すると、片足の足袋の代金だけを持って、客が店に押し寄せた。
これを機に、店の名も瞬く間に広まり、
売り上げも大幅にアップした。
実質半額で足袋が買える、投げ売りならぬ投げ込みキャンペーンだった。

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森由里佳 20年1月12日放送



和服  呉服

着物のことを和服というが、
呉服、というのも聞いたことがあるのではないだろうか。

諸説あるが、呉服の呉は、
三国志にも出てくるあの呉だと言われている。
それまで麻などが中心だった日本に、
呉の国からシルクという新しい生地がもたらされ、
それが着物のはじまりとなった、というわけだ。

現代でも、ときおり街中で見かける「呉服屋」さん。
今なおその屋号をかかげる裏には、
外国の高級な生地で仕立てた服を売るのだという、
誇りのようものがあるのかもしれない。

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森由里佳 20年1月12日放送



和服  呉服屋

三越が呉服屋から始まったというのは有名な話だが、
呉服を一般の人びとに広めたのも三越だ。

「店前現銀無掛値」(たなさきげんきんかけねなし)
これは三越が1683年に掲げたスローガン。
きちんと店頭で、定価で売りますよ、という意味だ。

当時、決まった値段は示されず、
裕福な人間しか購入できなかった呉服。
そんな中、三越は価格を抑え、定価の値札を提示することで、
呉服をふつうの人びとにも開放したのだ。

ちなみに、世界でこの販売方法が始まったのは
アメリカ・フィラデルフィア、1876年。
三越の、およそ200年も後のことである。

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佐藤理人 20年1月11日放送



シュリーマン  クリスマスプレゼント

1829年のクリスマス。7歳のハインリヒ・シュリーマンは、
父親から一冊の本をプレゼントされた。

 イリアス

ギリシャの詩人ホメロスが書いた世界最古にして最高の叙事詩。
挿絵には古代ギリシャ軍に滅ぼされるトロイの街が描かれていた。

絵を見た瞬間、ハインリヒ少年の胸にひとつの夢が生まれた。

いつかトロイの遺跡を見つけてやろう。
そしてこの話が真実であることを証明しよう。

考古学の歴史を書き換える壮大な冒険が始まった。

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佐藤理人 20年1月11日放送



シュリーマン  40年越しの夢

トロイの遺跡を発掘したドイツの考古学者、
ハインリヒ・シュリーマン。

彼が最初に選んだ仕事は貿易商だった。
多額の発掘費用を稼ぐため、武器の密輸にも手を染めた。

しかし片時もトロイのことが頭を離れることはなかった。
仕事の合間を縫って古代ギリシャ語を学び、大学に通い、
ギリシャ人女性と結婚した。

1870年、仕事を引退した彼は、
新婚の花嫁を連れてついに発掘へと旅立った。

このとき47歳。実に40年越しの夢だった。

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佐藤理人 20年1月11日放送



シュリーマン  ヒッサリクの城壁

トロイの遺跡を発掘したドイツの考古学者、
ハインリヒ・シュリーマン。

ホメロスの叙事詩「イリアス」に魅せられた彼は、
100人の人夫を連れ、トロイがあったと言われる伝説の場所、
トルコのヒッサリクの丘へ向かった。

発掘から3年後の1873年、高さ6mの城壁が見つかった。

イリアスの王子パリスに奪われた妻ヘレネーを取り戻すため、
メネラーオス率いるギリシャ軍が攻め寄せる。

城壁の上に立ったシュリーマンの目には、
幼い頃に見た「イリアス」の挿絵が映っていた。

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佐藤理人 20年1月11日放送


DieBuche
シュリーマン  遺跡の真実

1873年6月14日。トロイの遺跡を発掘したドイツの考古学者、
ハインリヒ・シュリーマンの前には、目もくらむ財宝が広がっていた。

8700点にのぼる装飾品の数々。中でももっとも素晴らしいのは、
1万6000個の純金を集めて作った、額から肩まで届く宝冠だった。

彼は泣きながら妻に冠をかぶせると、抱きしめて叫んだ。

 おまえはトロイのヘレネーの生まれ変わりだ!

しかし冠は紀元前2300年頃の、もっと古い時代のものだった。

彼は発掘に夢中になるあまり、
トロイの遺跡を掘り抜いてしまっていたのである。

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佐藤理人 20年1月11日放送



シュリーマン  夢への敬意

トロイの遺跡を発掘したドイツの考古学者、
ハインリヒ・シュリーマン。

彼が実際に見つけたのはトロイの遺跡の、
はるか下に埋まっていた青銅器時代の古代都市だった。

それでも考古学者たちは、彼にトロイ発見の名誉を与えた。

考古学がまだ学問として整備されておらず、
発掘技術にも限界があった時代に、
夢を追い続けた男に敬意を表した。

1881年、彼は改めて発掘したトロイの黄金を、
母国ドイツに寄贈し、ベルリンの名誉市民となった。

生涯、トロイの発掘を続けたという。

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大友美有紀 20年1月5日放送


Massimo Catarinella
シャンデリア 語源

シャンデリア。
照明器具の一つなのに、
豊かさと、豪華さを感じる言葉。
シャンデリアの語源は、
ラテン語のシャンデルと言われている。
輝く、明るくするという意味だ。
ローマ時代に
広い部屋をまんべんなく照らすため、
多数のロウソクやランプが灯せる燭台を、
天井から吊り下げた。
それが原型だという。

今のようにきらびやかな
照明器具になったのは、
ガラス工芸が発達したから。

さて、今年は、
明るく照らされる年になるだろうか。

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