2020 年 2 月 9 日 のアーカイブ

佐藤日登美 20年2月9日放送



肉  魯山人のすき焼き

芸術家であり、美食家としても有名な北大路魯山人。
彼はすき焼きに並々ならぬこだわりを持っていた。

鉄鍋に牛脂をひき、霜降りの牛肉を入れたら
酒と醤油、ごくごく少量のみりんで味をつける。
いただくときは大根おろしを乗せて。
肉を食べ終えたら鍋に出汁を足し、野菜をほどよく煮る。
その繰り返し。

ねぎは一皮剥く、ほうれん草を用意する、など細かい作法が続くので
彼がすき焼きを食べるときには極意を心得た人が必要だった。

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佐藤日登美 20年2月9日放送



肉  池波正太郎のすき焼き

美食家としても知られる小説家、池波正太郎。
彼は肉の質によってすき焼きの調理法を変えていた。

うんといい牛肉が手に入ったら、
かつおぶし・醤油・みりんで作った割下を鍋に少し入れ、その中で肉にさっと火を通す。
まずは肉を楽しみ、よきときにぶつ切りのねぎを並べる。

牛肉とねぎだけ。
いい肉を味わうときはシンプルに。
そうでないときは砂糖を入れて甘辛く煮る。
「これはこれでいいもんだ」と池波は言う。

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蛭田瑞穂 20年2月9日放送


Ben Chen Photography
肉  A5ランク

高級牛肉の代名詞ともいえるA5ランクの牛肉。
ところで、A5とは何を指すのだろうか。

最初のアルファベットは「歩留まり等級」のこと。
食べられる部分の多さを示し、AからCの3ランクに分けられる。

次の数字は「肉質等級」。
これは霜降りの度合いや肉の色艶などの牛肉の見た目の基準で、
1から5の5ランクに分けられる。

そもそもこの等級分けは牛肉を市場で取り引きするためのもの。
牛肉のおいしさについての絶対的な基準ではない。

霜降りを好む人もいれば、赤みを好む人もいる。
好みは人それぞれ、ということ。

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蛭田瑞穂 20年2月9日放送



肉  シャトーブリアン

牛肉のシャトーブリアン。
ヒレ中央の肉質のよい部分の肉で
牛一頭から500グラム程度しか取れない希少な肉。
ところで、なぜこのような名称なのだろうか。

話は18世紀にさかのぼる。
フランスにフランソワ=ルネ・ド・シャトーブリアンという作家がいた。
初期ロマン主義を代表する作家で、政治家としても活躍した。

彼が考案したのがシャトーブリアンのみをつかったステーキ。
好んで食したことからその部位を
シャトーブリアンと呼ぶようになったという。

肉と文学の意外な関係がそこにある。

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星合摩美 20年2月9日放送



肉  串打ち三年焼き一生

やきとり職人は「串打ち三年焼き一生」と言われる。
ミシュラン一つ星獲得店「あやむ屋」の串打ちは、
細長い扇型が理想形。
串の一番下の肉は、上よりも小さい。
わずかに弱火になる焼き台手前に、火の通りの良いサイズを見極める。

焼きは炭火で素早く一気に。
肉表面の焼け具合と、
串のわずかな重さの変化を捉え、1、2回だけ裏返す。

こうして焼きあがったやきとりは、外はパリッと、中はジューシー。
まさに職人の「技あり一本」だ。

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星合摩美 20年2月9日放送


『肉食之説』(京都大学附属図書館所蔵)部分
肉  肉食のススメ

「肉食せざるべからず」
明治15年「肉を食べなさい」と説いた福沢諭吉。
日本で長くタブーとされてきた肉食を、
滋養のために取り入れるべき、と考えた。

諭吉の活動は、牛肉販売会社の宣伝本を書き、
慶應義塾の食堂に、肉食メニューを出すほど熱心だった。

その甲斐もあってか、
牛肉とネギを割り下で煮て食べる「牛鍋」が大流行。
わずか10年ほどで、数百件の店が誕生した。
私たちを楽しませている肉グルメの発祥は、
諭吉の「肉食のススメ」と言えるかもしれない。

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森由里佳 20年2月9日放送


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肉  生け捕りジビエ

鹿、兎、鴨、イノシシ…
これらの動物に共通点があるとすれば、
ジビエと呼ばれて美食家たちに愛されていることだろうか。

自然の命をいただくのだから、最もおいしい食材にしないと申し訳ない。

あるジビエハンターは、そういって、鉄砲ではなく手作りの罠にこだわる。
鉄砲で傷つけてしまうのではなく、素手で捕獲し、生け捕りにするのだ。
そうして捕獲から解体、調理までのすべてを行うのだという。

自分でやりきるから、余すことなくいただける。
「いただきます」の本来の姿を、突き付けられた気がした。

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森由里佳 20年2月9日放送



肉  ジビエと人びと

ジビエとは、狩猟によって捕獲された野生の鳥と獣の食肉のことだ。
実は、ジビエ流行の裏側には、
ジビエ、いや、野生の獣による農作物の被害という問題がある。

捕獲した獣たちを殺処分するのではなく、
ジビエとしてその命のありがたみをいただけないか―?
そう考えた自治体や地域団体が、
衛生的な処理とスピーディな流通を実現させようと挑戦を続けている。

美味しくて高級、貴重なジビエ。
ナイフを入れる時には、さまざまな人の熱意にも感謝しながらいただきたい。

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