2011 年 9 月 24 日 のアーカイブ

小宮由美子 11年9月24日放送



テニスから生まれたストーリー1 伊達公子

プロテニスプレーヤーとして
再びコートに立ち、世界へ挑み続けている伊達公子。
その理由のひとつは、「テニス界への感謝」。
2つ目は、「世界のトップで戦える日本人プレーヤーに
早く育ってもらいたい」という願い。
そして3つ目は、「チャレンジすることが好き」だから。
 
「現役時代は無我夢中で
自分自身のことだけで必死でした」
と告白する伊達。
でも、今の彼女のイメージの中には、彼女以外の、
若手選手や、子どもたちや、世界中のたくさんの存在がある。
 
「過去の世界ランキング4位までいった伊達公子としてではなく、
 新たなる挑戦(者)としてコートに立ちたい」
 
そんな伊達公子の姿に励まされるのは、
テニス好きだけではないはずだ。



テニスから生まれたストーリー2  クリス・エバート

「チャンピオンなら、心の底から
チャンピオンじゃなきゃだめなのよ」

 
70年、80年代を代表するテニス・プレーヤー。
ナブラチロワとの名勝負で、女子テニスの人気を盛り上げた
クリス・エバートの言葉。
 
世界最高のコーチを雇ったり、最高の道具を揃えたり、
試合に出るというだけなら誰にでもできる。
でも、心がチャンピオンにふさわしくなければ、
チャンピオンにはなれない。
 
テニスの四大大会で通算18勝を上げた彼女は、
同時にこうも言っている。
 
「反対に、何ひとつ持たない代わりに
 その気持ちと根性だけでやり抜く自信があるなら、
 チャンピオンになれるわよ」



テニスから生まれたストーリー3 ロジャー・フェデラー

1996年9月。
ひとりのスポーツジャーナリストが、
生涯忘れることのできない出会いを経験した。
観客もいない、ボールパーソンもいない。
場末のコートで盛り上がることもなく始まった試合で
彼の目を釘付けにしたのは、15歳の少年。
 
完璧すぎるほどのボールコントロール。
すさまじい集中力。
何より注意を引いたのが、少年の狂気のような叫び声。
試合中に、大声で絶え間なく独り言をつぶやき、
自分自身に向かって、激しい罵りの言葉を繰り返す。
 
ジャーナリストの身体に衝撃が走った。
「才能の原石を見つけた」と思った、と後に語っている。
 
エキセントリックな15歳の少年の名は
ロジャー・フェデラー。
 
今や、ポーカーフェイスともとれる涼しい表情と
スマートで華麗なプレースタイルが印象深いフェデラーだが、
その内面には、気性烈しく、勝利への執念に満ちた
野性的なあの少年が、かくれている。



テニスから生まれたストーリー4 ラファエル・ナダル

テニス・プレーヤー、ラファエル・ナダル。
彼のまわりには、どこに行っても人が集まる。
たくさんの視線が、彼の一挙手一投足に注がれる。
 
だから、ファンは知っている。
試合中に、長めの髪を耳にかけるしぐさ。
ミネラルウォーターのペットボトルを、神経質に並べる動作。
そして、コート上で、頻繁に下着を直す癖。
 
指摘されて、ナダルは言った。
「あの癖は直らないね。見てる人をイライラさせそうで
申し訳ないけど無理だよ、癖なんだから」
 
観客を熱狂させ、圧倒するスター選手の、人間味を感じる一面。
これからも世界中の多くのファンが、魅力あふれる彼の姿を追い続ける。



テニスから生まれるストーリー5 ジュスティーヌ・エナン

「結婚は全仏(大会の)優勝なんかよりずっと素晴らしい。
グランドスラム優勝は、ほんの一瞬の喜び。でも結婚式の日は
これからの私の人生の中で永遠に最高の日であり続けるわ」

 
ベルギーのプロテニスプレーヤー、ジュスティーヌ・エナンは
ストレスの大きいプロテニスプレーヤーの生活の中での
家族のありがたさをこう語った。
支えてくれる人がいるなら、
勝ち負けなんて、大して重要なことじゃない、と。
 
そんな満ち足りた新婚生活を送りながら、
2003年の全豪オープン、全仏オープン、そして
全米オープン優勝を果たしたエナン。
 
これ以上の幸せの両立、イメージできるだろうか。



テニスから生まれるストーリー6 ビヨン・ボルグ

「僕の最強のポイントは、しつこいところ」
 
男子テニスの元世界王者、ビヨン・ボルグはそう言った。
 
試合では絶対にあきらめない。
どんなに負けが見えていても、最後のボールまで戦い抜く。
その結果、不利な状況から逆転勝ちしたゲームが山ほどあった。
 
ボルグの「しつこさ」は、
全仏オープンでの4連覇を含む6勝、ウィンブルドン5連覇など
テニス史に黄金時代を築いた。
 
強い者ほど、あきらめが悪い。



テニスから生まれたストーリー7 マルティナ・ヒンギス

天才少女とうたわれて、あまりにも早く世界の頂点を極めた
テニス・プレーヤー、マルティナ・ヒンギス。
 
彼女は現役時代、大会で優勝した3日後には
ハードなトレーニングを再開していた。
それも、軽い内容ではなく、ハードなメニューを。
攻撃的に、情熱の炎を焚きつけるように、
右に、左に、ボールを追いかけ、力いっぱい打ち返す。
そのうちに、雑念のようなものはスッと消えてなくなった。
 
当時、なぜそんなに練習が好きなのか、
と問われたヒンギスの答え。
「2日もテニスをしていないと、
身体が寂しさを覚えてしまうのよ」

 
プレーヤーにしか知り得ない孤独がある。
プレーヤーにしか知り得ない喜びも、またある。

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